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2023年06月09日

あらためて人工甘味料について考える

あらためて人工甘味料について考える


 人工甘味料については、「カロリー控えめ」「カロリーゼロ」などのキャッチフレーズで多くの食品に使用されており、ポジティブなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

 その一方で、分子構造なども含めた科学的知見において健康リスクに関する報告があることも事実です。

 そのような中、WHOが人工甘味料の使用によって「フリーシュガーをノンシュガー甘味料に入れ替えても、長期的な体重コントロールの助けにはならない」とWHOの専門家は解説し、「短期的には体重が多少減少するが、その状態は維持できない」というような「人工甘味料」など砂糖代替品に警告を発するガイドラインが発表されました。

 そのガイドライン作成については、いくつか注意しておくような内容もあるそうで、糖尿病の基礎疾患のある人に関しては、検証対象とした研究論文には、糖尿病を持つ人が調査対象に含まれていなかったために対象外としているとのことです。

 さらに、今回の勧告について、「安全性に関するコメントを意味するものではない」ということと同時に、甘味料の使用によって肥満や体重をコントロールする効果や、非伝染性疾患のリスクを低減させる効果は科学的に立証することはできないという内容である、ということについても理解を求めているようです。

 そもそも、人工甘味料のメリットは少量で砂糖などの従来の甘さを再現できるために、使用料を抑えることでカロリーを少なくしたり、血糖値の上昇を抑えたりすることが出来るのですが、その一方で、食後の血糖値の上昇が起こりにくいために、脳の満足度が低下し、食欲増加に繋がったり、甘味に関する感覚が鈍ってくるというような指摘もあります。

 米国の公認管理栄養士でもあるブルック・アルパートは、著書「The Sugar Detox: Lose Weight, Feel Great, and Look Years Younger」の中で、人工甘味料は味覚に対しての影響について、「自然な甘さが楽しめなくなり、ものすごく甘いものを食べないと味蕾を満足させることができなくなります」。その結果、フルーツのように自然な甘さを持つ食べものが魅力的に思えなくなり、野菜のように甘くない食べものが受け入れ難くなってくるとの指摘もしています。

 また、米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所のクリスティーナ・ローサー博士は、人工甘味料のもっとも厄介な作用の1つは、一部の腸内細菌の成長を阻害してしまうことだそうです。
 イスラエルで行われたマウスによる研究によれば、マウスに人工甘味料を投与することで、腸内細菌叢の変化がおこり、食物の量が変化しないのにも関わらず体重が増えやすくなったというのです。
 これは、人工甘味料が食物のエネルギーを脂肪に変換するような特性をもつ腸内細菌の増加を促しているということが原因であると報告しています。
 
 ローサ―博士の行った別の研究に於いては、人工甘味料の入った炭酸飲料を多飲傾向にある母親の母乳から人工甘味料が検出されたというような報告もあります。

 さらに、人工甘味料の摂取によって、体内のインスリン濃度が20%高くなっているという報告もあります。
このことは、「血糖値の上昇が抑えられて良いのでは・・・」と思う方もいると思いますが、脂肪が細胞に溜まり易くなるために燃焼率が低下し、通常と比較して空腹を感じやすくなることにつながってしまいます。
 この状態を放置することで、インスリン抵抗性が高くなり、メタボリックシンドロームやⅡ型糖尿病の引き金になるとも考えられています。

 今回のWHOの勧告は、「人工甘味料の使用によって肥満や体重をコントロールする効果や、非伝染性疾患のリスクを低減させる効果は科学的に立証することはできない」という内容のようですが、公的機関が世界中でこれだけ流通している食品成分に対して踏み込んだ見解を示した・・・ということに対して、私たちが考えていかなければいけないことは多くあるような気がします。

 人工甘味料の大きな影響の一つに、「低カロリー・・・、だから食べても大丈夫。」という気持ちのブレーキが効かなくなることで、過剰に食べることと共に、人工甘味料そのものの存在を正当化してしまうことだとも言われています。

 今回の勧告が、この「気持ち・・・」に対して、どのように動くかを考えてみる必要もありそうですね。

 




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