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2023年06月17日

ストレスと食欲の関係を考える

ストレスと食欲の関係を考える


 「美味しいものを食べたり、美味しいお酒を飲むことで、ストレスを解消する・・・」というかたは多いと思いますが、ストレスを飲食で緩和できるのか・・・?ストレスがかかることによって食欲が増進したり、お酒を飲みたくなるのか・・・?という、卵が先か、ニワトリが先か・・・?というような議論にも実は身体のメカニズムが大きく関わっていることが解ってきたようです。

 ストレスを感じた時に、甘いものが食べたくなったり、高カロリーで糖分や塩分、脂肪分が多い食べ物が欲しくなる人もいれば、逆に食欲が減る人もいます。そのいっぽうで、ストレスが食欲にまったく影響しないという人もいるのが現状です。

 精神医学と行動科学の専門家でもあり、食の行動について研究をしている米ジョンズ・ホプキンス大学医学部のキンバリー・スミス助教授によれば、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの様々な機能のなかに、空腹を感じたり、脂肪を蓄積したり、食欲を調節する脳の領域への血流が減ったりするというような作用があり、コルチゾールの分泌量が増えることで、食欲が湧いてくると同時に糖分や脂肪分の多いものが欲しくなるということがあるそうです。

 とはいえ、このような反応は、行動や環境、遺伝的要因に至るまで非常に複雑なメカニズムによってなりたっていますので、人によって異なった結果になるというのが現実のようです。

 例えば、減量のために厳しく食事を制限していると、逆にストレス過食に陥りやすくなることもあり、そういう人は、ストレスを受けると食事制限などどうでもよくなって、つい食べ過ぎてしまうということもあるそうです。

 自分自身に対して、ストレスを感じやすいと思ったり、ネガティブ思考に陥り易いと思っている方もいるかもしれませんが、そのような傾向は、必ずしも性格や、思考の癖・・・という要因だけではなく、脳が疲れてしまうことで、脳の偏桃体が興奮状態になり、危険を察知しようとして「これはヤバイ」「もうダメだ」といったネガティブな思考回路が猛烈に加速してしまうという状態に陥るというのです。

 ストレスを感じやすい・・・、ネガティブ思考だ・・・と思っている人は、脳疲労の状態であることを疑うことも必要です。そして、そうならないためにも普段から休息や睡眠をきちんととることを大切にして、リラックスすることを心掛けることが重要だそうです。

 ストレスと食欲の関係は複雑であるということですが、急性的なストレスと慢性的なストレスがそれぞれ食欲に与える影響には、はっきりとした違いがあるのだそうです。

 例えば、人前でスピーチするというような急性的なストレスの場合においては、食欲は減退する傾向にあるのが一般的だとされています。その一方で、家庭や職場などの人間関係による慢性的なストレスのケースでは、空腹感を引き起こすホルモンであるグレリンが上昇した状態が維持されてしまうことにより、食べる量が増えてしまう傾向にあるそうです。

 ストレスによって引き起こされる食欲への影響は様々であるということになりますが、ストレスなどのネガティブな感情による「感情的摂食」が習慣化することの健康への悪影響は見逃せない・・・との指摘があります。
 
 その影響の一つが、感情的摂食が習慣化することで、脂肪分や糖分が多い食べ物を食べたときの報酬感が薄れ、そうした食べ物をますます求めるようになるという過食の悪循環に陥ることです。

 また、甘い物や脂肪分が多い食べ物を食べることによって脳の報酬系を刺激することで、そのストレスをリリースするというような行為そのものを脳が学習することで習慣化し、無意識にその食べものを欲するようになるということにもつながるのだそうです。

 このメカニズムについては、臨床心理士で米ニューヨーク大学グロスマン医学部精神科のレイチェル・ゴールドマン助教によれば、甘いものやでんぷん質のものを食べると、脳内の神経伝達物質のうち、精神の安定に関わるセロトニンや期待感を高めるドーパミンの量が増えます。
つまり、感情的摂食は、すぐに脳内の報酬中枢が活性化されて自身の気分が良くなる・・・という意味でも非常に高い効果があるからこそ、習慣化し依存的になる可能性があると説明しています。

 このように、ストレスによる感情的摂食は必ずしも良いことではなさそうですが、そのストレスの原因である「自身の今抱えている問題から、気をそらす・・・」という意味で考えれば、一定の効果があると考えることも出来ます。

 とはいえ、ストレスの対処法が感情的摂食という方法しかないということで、さらなる不安や、健康上の問題が引き起こされたりしてしまっては元も子もありません

 ストレスと食欲という二つの関係性については、多くの方がお悩みのことと思いますが、自身に「食」以外にストレスリリースの具体的な対処法がないのかどうか・・・?ということに着目し、何か集中できることを探してみるなど、有効な手立てもあるのではないでしょうか。

 「食べてしまう・・・」ことに対する罪悪感も、新たなるストレスとして感情的摂食につながるというようなこともあるようで、「このようなことは、多くの人が同じような経験をしている当たり前のことなんだ・・・」と思えることで良い結果につながる事例もあるそうです。





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