身体のチカラ › 社会を考える › 地球を考える › 身近なマイクロプラスチック問題を考える

2023年07月07日

身近なマイクロプラスチック問題を考える

身近なマイクロプラスチック問題を考える


 環境中のマイクロプラスチックに関しては、海洋生物に関するセンセーショナルな映像を含め、海洋生物に対する生態系への脅威となる環境問題という認識の方が多いのではないでしょうか。

 しかし、このマイクロプラスチックに関しては海洋中というものだけではなく、意外に身近な問題であり、生態系に関する限定的な問題から、人体の健康に関する問題である・・・ということに変化しつつあるようです。

 例えば、あなたが料理をするときに使用するまな板の素材を想い浮かべてください。

 今では多くの家庭で、ポリエチレンやポリプロピレンなどで出来ている、いわゆるプラスチック製のまな板が利用されているのではないでしょうか。

 このプラスチック製のまな板は、軽くて使いやすい・・・ということもあり世界中で利用されています。
しかしながら、最近の研究ではプラスチック製のまな板を使用することで、大量のマイクロプラスチックが発生してしまう可能性があることが判明したというのです。

 皆さんもご存知の通り、まな板は刃物を使用するときに使いますので、よくよく考えれば・・・ということもありますが、実際にデータとして提示されると捉え方も異なってくるという事例の一つ、とも言えます。

 実験は、5名のボランティアがスチール製の包丁で人参を切り、あらかじめプラスチック粒子が含まれていないことを確認した水で、包丁とまな板を洗浄した水にどのくらい含まれるか・・・という方法で、アメリカ・ノースダコタ州立大学を中心とした研究チームによって行われました。

 その結果、100マイクロメートル未満の球状のマイクロプラスチックが、年間にポリプロピレン製のまな板で調理すると7,940万個、ポリエチレン製まな板では1,450万~7,190万個のマイクロプラスチックが発生するとの推定結果が示されました。

 この量のマイクロプラスチックを重さに換算すると、ポリプロピレン製まな板からは年間49.5gのプラスチック粒子が、ポリエチレン製のまな板からは年間7.4~50.7gのプラスチック粒子が発生していることになると報告されています。

 この研究結果からもわかるように、マイクロプラスチックの発生の原因は、日常の化学繊維製品の洗濯による流出も含めて、意外に身近なところにある・・・という認識が改めて必要であるということです。

 また、マイクロプラスチックと言えば「海洋中・・・」といったイメージが強いために、海洋も含めて、水環境の問題という認識の方も多いのかもしれませんが、大気中にも多くのマイクロプラスチックが飛散しているという報告もあり、2023年5月に発表された試算では、都市に降下するプラスチックは1日当たり数十kgにも及ぶとも言われています。

 さらに、2022年に初めて、人の気道の奥でマイクロプラスチックが見つかったことで、呼吸器系への重大な健康被害が危惧されるようにもなりました。

 「この気道の奥・・・」ということからしても、有毒な汚染物質や化学物質を含む可能性が考えられるマイクロプラスチックを吸い込んだ場合の、深刻な健康被害を想定した、呼吸器疾患の予防や治療の懸念も出てきています。
そのために、上気道におけるマイクロプラスチックの移動や沈着に関わる流体力学を応用したシュミレーションモデルまでも、既に開発されているそうです。

 この研究を行いました、ニューサウスウェールズ大学シドニー校のモハマド・S・イスラム氏は「何百万トンものマイクロプラスチック粒子が、水や空気、土壌で見つかっています。世界で生産されるマイクロプラスチックの量は急増しており、空気中のマイクロプラスチックの密度も著しく増加しています。さらに、2022年に初めて、人の気道の奥でマイクロプラスチックが見つかったことで、呼吸器系への重大な健康被害が危惧されるようになりました。」と述べています。

 これらのことからも判りますように、マイクロプラスチックについての課題は、海で起こっている海洋生物を中心とした生態系への影響という話ではなく、既に大気中や土壌にも当たり前のように存在し、人体の健康被害に直接つながっている可能性のある身近な課題であるとともに、「多くの方が、日常生活の中ですぐにでも取り組めることが沢山ある問題である・・・」という認識が必要なのかもしれません。






同じカテゴリー(社会を考える)の記事画像
心理的安全性の落とし穴
笑顔と創造性を考える
「頑張る」と「頑張れ」を考える(Ⅱ)
土があるのは地球だけ・・・
花粉症のリスクをあらためて考える
睡眠のリスクをあらためて考える
同じカテゴリー(社会を考える)の記事
 心理的安全性の落とし穴 (2024-04-26 08:52)
 笑顔と創造性を考える (2024-04-12 09:05)
 「頑張る」と「頑張れ」を考える(Ⅱ) (2024-03-23 09:48)
 土があるのは地球だけ・・・ (2024-03-16 09:23)
 花粉症のリスクをあらためて考える (2024-03-07 15:20)
 睡眠のリスクをあらためて考える (2024-03-01 13:22)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。