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2023年11月10日

共感とネガティブ・ケイパビリティ

共感とネガティブ・ケイパビリティ


 共感という言葉は、多くのところで耳にします。SNSの時代になり、「いいね」などの反応も共感の度合いを示す指標として、一喜一憂してしまう・・・という人も多いのではないでしょうか。

 共感という言葉には、SympathyとEmpathyの二つの意味があるとされています。

 Sympathyは、他人と同じ感情・気持ちになるという意味で使われます。相手の感情を理解して自分も同じ気持ちになる。言い換えると「あなたの気持ちや考え方はわかる、私も同じ・・・」という感覚で使うことが多く、同調という意味合いが強いとされています。

 いっぽう、Empathyは自分とは異なる価値観や考え方を持つ他人に自己を投影し、相手が何を考えているのか、どう感じているのかを想像する力のことと言われ、自分自身が同じ価値観や考え方であるかは別として、「あなたの気持ちや考え方はわかる・・・」というように自己の価値観を変えるというのではなく、自己の価値観にプラスアルファの広がりをもたらす多様性にも通じるものがあるような気がします。
 
 もともと、同調圧力が強いと言われる日本人社会では、「共感」という言葉にたいしてSympathy的な要素を求めすぎるために、同調性が感じられないコミュニケーションなどについて、「わかってくれない・・・」とか「あの人はおかしい・・・」というような感情に引き込まれがちであることも事実です。

 多くの人は、何故「共感」を求めるのでしょうか・・・?
 SNSの時代と言われるなか、承認欲求のためだけなのでしょうか・・・?

 私たちの脳は、「分かりたがる」性質があるとされています。その「分かるため・・・」に「意味づけ」をするように出来ているそうです。これは、意味が分からないままだと、精神的に安定しない為に、人は不可解なものに対して、何とか意味づけというものをしてしまうというのです。

 この意味づけの際によく起こるのが、希望の付加です。中立ではなく、平常性バイアスと呼ばれる希望的観測に偏った意味づけになってしまうのです。
事故や災害も、「あれは偶然なのだから、まさか自分が被害にあうことは無いだろう・・・」、という希望的な意味づけをします。このように、私たちの脳は生来的に、物事をポジティブに考えるようにできているのです。

 だからこそ、「誰かが、わかってくれている・・・」安心感は、必要不可欠なのかもしれません。

 「立て板に水・・・」という表現がありますが、流暢に次から次へと論ずることに対して、良くない印象を受けることはないでしょうか・・・?

 特に、自身の悩みなどに対しての相談事では、そのように感じることも多いかと思います。このような場合の多くは、単純に答えが欲しかったのではなく、相手に、自分が抱く疑問や不安に対して、一緒に考えてみる姿勢を期待したのにも関わらず、その期待がはずれてしまったからなのだと思います。

 「人に見ていてもらえる・・・」ことは、共感につながるとともに「やり続けるチカラ」であり、「諦めずに、やり遂げるチカラ・・・」にも通じると感じる方も多いと思います。
 モヤモヤ力とも呼ばれる、ネガティブ・ケイパビリティも共感してくれる存在がなければ、ただの「モヤモヤ」になってしまい、チカラとしての能力にはつながらないのかもしれません。
 
 人は、誰も見ていないと感じたり、誰ともつながっていないと感じた時には、苦しみに耐えられないとされています。その一方で、誰かがちゃんと見守ってくれてることで耐えられるものなのだとも言います。

 世の中には、すぐに解決できない問題の方が多いにもかかわらず、教育現場も含め問題解決能力が求められがちです。

 そのような状況の中、一見消極的に見えるかもしれませんが、「解決しなくても・・・」「訳が分からなくても・・・」何とか持ちこたえていく・・・このような姿勢には大きなチカラの源泉になる事が多いと言います。

 モヤモヤが晴れるまで立ち止まることも、モヤモヤが晴れなくても・・・立ち止まらずに進み続けることも双方大切です。

 そうして、持ちこたえていくうちに、落ち着くところに落ち着き解決していく・・・。
「考え続ける・・・」ことは底知れぬ知恵への道標のようなものです。だからこそ、すぐに解決できなくても何とか持ちこたえていくことそのものが、実は能力の一つであるという認識は多くの人にとって必要なのです。

 現代社会において、ネガティブ・ケイパビリティと言われる能力を発揮し続けるには、「他の誰かが、自分のことを想ってくれている・・・」かが解っているかどうかは大きな違いになると同時に、その共感のチカラこそが、耐え続け・・・やり遂げるチカラにつながってくるのかもしれません。





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Posted by toyohiko at 15:58│Comments(0)社会を考える
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