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2025年05月02日
環境の変化と自律神経との関係を考える

毎年のことになるかと思いますが、春先から初夏にかけての気候は、三寒四温と呼ばれるように、寒暖差が激しく、体調が崩れやすい方も多いのではないでしょうか。
この気温の変化は、人間にとっても直接的かつ大きなストレスになってきます。
人間も動物である以上、気温、気圧に加え、生活環境というものが、対人関係以上に大きなストレス要因となります。
また、この季節の寒暖差によって大きな影響を受けるのが自律神経です。自律神経は、呼吸のコントロールをはじめ、心拍、血圧、排泄を含めた消化器官の運動など、様々な役割があるとされていますが、その中でも大きなものが体温調整機能とされています。
恒温動物であるヒトは、体温を一定に保つことで代謝機能の効率を最大限に引き上げ、生命維持に必要な反応を促進するための仕組があるのですが、その機能を担っているのが自律神経です。
しかしながら、外界の温度が安定せずに乱高下するという状態は、エアコンであれば、一日の中で頻繁に冷房と暖房が切り替わり、負荷が掛かりっぱなし、というようなものです。
このような使い方をすればエアコンが、壊れやすくなるのは言うまでもないかと思いますが、この状態は、人間でいえば、「自律神経の乱れ」という状態に陥り易くなります。
また、「新生活の季節」である春先は、生活環境が大きく変わる方も多いかと思います。
脳は、「わからないことが苦手」という性質があります。それゆえに、「新しい環境」に対する期待と同時に不安も大きくなることで、交感神経が優位な状態が多くなるために、そのようなストレスから自律神経に負荷が掛かりやすくなります。
また、自律神経の乱れによって大きな影響を受けるのが「睡眠」です。自律神経の乱れは、寝つきの悪さ、中途覚醒、眠りが浅いなどの睡眠障害を引き起こすことがあるとも言われています。これは、自律神経のバランスが乱れることによって交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまい、夜になっても交感神経が優位になり、リラックスして眠りにつくことが難しくなるためと考えられています。
特に、ゴールデンウイークなどの休日が長く続いたり、いつもの生活のサイクルと違うようなパターンになるときには、生活のリズムが崩れることで、自律神経の乱れにつながるともされていますので、いわゆる「寝だめ」などを考えずに、いつもの起床時間をキープすることも大切です。
また、腸を中心とした消化器官と自律神経とは非常に密接な関係にあるとされています。
腸の働きは自律神経によってコントロールされており、副交感神経が優位になることで腸の蠕動運動が活発になり、腸内環境を整えることにつながることが知られています。
逆に、ストレスや生活習慣の乱れで自律神経のバランスが崩れると、腸の動きが悪くなり、便秘や下痢といった症状が現れるというように非常に密接なつながりがあるのです。
これらのように、自律神経の乱れが、自身の健康に対して見過ごせないような影響があるのだとすれば、そのようにならないための備えも大切です。
そのための備えとして出来ることとして、まずは、お腹の健康を意識したバランスの良い食事になります。もちろん、プロバイオティクスや食物繊維などのプレバイオティクスを積極的に活用することも有効になります。
そして、規則正しい生活を基本とした、十分な睡眠です。
日本人の平均睡眠時間は、2021年の調査で7時間20分余りと、OECD加盟国33か国の中で最も短く、厚生労働省の調査では約5人に1人が睡眠による十分な休息を取れていないと感じているという現状があります。
また、最近では、日本睡眠学会が、「不眠が医療の対象であることを広く知ってもらうためにも重要だ」という認識のもと、診療科の名前に「睡眠障害」を掲げられるよう、厚生労働省に要望書を提出するという動きもあり、睡眠についての様々な問題は社会的な課題になりつつあります。
居住地域やライフスタイルなどの生活環境はある程度、意識的に選択ができるものの、気温や気圧の急激な変化については、その状況を受け入れながら、影響を最小限にとどめるしか方法はありません。
環境の変化が目まぐるしい季節だからこそ、食事、睡眠を大切にしながら、気温の変化に負けないよう乗り切りたいものですね。