2024年06月28日
脳腸相関と発毛との関係を考える

脳腸相関という言葉が聞かれるようになり、プロバイオティクスによるストレスの軽減や睡眠の質に関するエビデンスも整いつつあり、機能性表示食品などの食品も身近な存在になりつつあります。
そのような中、プロバイオティクスと毛髪との関係についての関心も高まりつつあり、様々な分野で研究が進められているようです。
実際に、韓国では男性型および女性型脱毛症の患者46名を対象に、プロバイオティクス(キムチと納豆由来の菌株を含む)またはプラセボを12週間摂取するという実験の結果、有意な発毛効果と毛髪の密度と太さが改善したという報告があります。
また、台湾の研究グループが行った二重盲検プラセボ対照試験では、脱毛に悩む26名の被験者にプロバイオティクスサプリメントを12週間摂取してもらったところ、96.2%の参加者で毛髪の密度が改善し、抜け毛が減少したと同時に、頭皮のかゆみの緩和や、皮脂量の減少、頭皮の保湿力の向上などの効果が認められたととのことです。
近畿大学医学部皮膚科学教室 大塚篤司主任教授によれば、これらの知見について、研究の蓄積は不十分としながらも、腸内フローラを整える生活習慣を心がけることが、皮膚や毛髪の健康維持につながる可能性への期待と今後のメカニズムの解明について次のように述べています。
まず、はじめに腸内細菌叢が良好になることで、脳腸相関によって脳を介して毛包の機能や毛周期に影響を与えていることや、腸内環境が良くなることでIL-1、TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生が抑制され、毛包の炎症を鎮静化し健やかな髪の成長を促進する可能性です。
更には、プロバイオティクスの摂取によって、VEGF(血管内皮増殖因子)やIGF-1(インスリン様成長因子1)などの毛包の成長因子の発現を高めるという仕組みによって発毛効果を発揮する可能性もあるとかんがえられていますので、必ずしもひとつのメカニズムによって頭皮・毛髪への影響を議論できる状況ではないようです。
近年、話題になっている短鎖脂肪酸についても抗酸化物質を産生するものがあることが知られており、その効果の可能性も否定できないという見解もあり、そのメカニズムについては、まだまだこれからということのようです。
これらの知見の多くは、動物実験のレベルの段階であるということもありますが、お腹の健康と言われる腸内細菌叢を整えるということの健康に関する様々な可能性の広がりという見方も出来ると思います。
「お腹の健康」と言われてきた、腸内細菌叢を整えることが、脳腸皮膚相関などと言われるように毛髪も含め身体の様々なところと密接につながっているとともに、互いに影響を及ぼし合っていることからすれば、いままで以上にお腹の健康について意識していく事は大切なことになると思います。
Posted by toyohiko at 14:21│Comments(0)
│身体のしくみ