2024年09月20日
グリーンインフラの実践と地域コミュニティ

グリーンインフラという考え方は、前回ご説明させていただきましたが、実際にどうすれば良いの・・・という問題が出てくるかと思います。
「水」に関する防災や生物多様性に関することは、行政機関のすることで個人や小規模な企業が介入できるような問題でないと思う方もいるでしょうし、「これは、行政の仕事なんだから・・・なんで自分たちがやらなければいけないのか・・・?」と疑問を持つ方も多いのかもしれません。
しかしながら、多くの災害においてボランティアと呼ばれる自らの意志をもって復旧・復興に関わる人たちの存在は欠かせないものであり、被災地にとっては大きな心の支えになっているという現実もあります。
そうした考え方にしていく事によって、身近にも出来ることが沢山あることに気付くこともあるのではないでしょうか。
例えば、アスファルトやコンクリートで覆いつくされた雨水の流れる枡を覗き込んだことはありますでしょうか・・・、雨水桝は言ってみれば台所の排水溝と同じなので、排水溝にゴミや泥があれば、当然のように流れにくくなり道路に溢れ出す確率は高くなります。
天気予報を見ながら、雨水桝のゴミや落ち葉などを気にしてみたり、定期的に枡に溜まった土砂を取り除くことで水の流れは随分スムーズになります。
私の知人に、大雨の予報の時は必ず駐車場の乗り上げに使用している段差プレートを外して雨水桝に水が流れやすいようにしている方がいますが、それも減災という意味では大切なことの一つです。
このように、ちょっとした工夫で雨水の流れをスムーズにすることは誰にでも出来ることの一つです。
更に、既存のコンクリートをはがすことはなかなか難しいかもしれませんが、出来る限り表土を残すことも出来る工夫の一つですし、少し高価にはなりますが敷地内の舗装を透水性のものにすることも同じです。
そして、もっとも有効な手段と考えられているのが、大小にかかわらず「庭」と呼ばれるような環境を屋外に作っていく事です。
もちろん、草取りなどの日常的な手間はかかりますが、地表全体で考えれば地中の保水能力の一助となる事は間違いありませんし、そのような面積が増えていく事でヒートアイランド効果の減少にも大きな効果をもたらしてくれます。
また、愛知県では開発という名のもとに自然環境が失われるようなケースに対して、その損失を最小限もしくは、損失をしないようにしようという代償ミティゲーションという取り組みをしています。
いずれにしても、身の回りの利便性を一切損なうことなく身の安全を確保することは難しい・・・という発想が必要なのかもしれません。
地域コミュニティの持続可能性についても様々な議論がありますが、自然災害という視点で考えていけば、近隣の人々の協力は無くてはならないものであることは多くの方がお気づきの事でしょう。
流域全体という広域的な治水という視点で考えていけば、本来、湿地帯や田んぼを中心とした農地が大半を占め、多くの保水量を担っていた下流部が、都市化してきていることで、中流部や、さらには上流部に至るまで負荷が掛かってきているという状況も考える必要があります。
そのような状況からすれば、水に関連する大規模災害は都市部だけ・・・ということでは無くなってきているのかもしれません。
予防医学という言葉がありますが、予測される身の危険に対する予め準備するということで考えれば、社会的には「交通安全も立派な予防医学である・・・」ということにもなります。
ましてや、「水」から自身の身を守るということからすれば、「自分だけに降りかかる問題・・・」ということは無く、「一人一人の立ち振る舞いの結果が、その地域全体に降りかかる・・・」ということになります。
だからこそ、自治会や地域のNPO活動などの地域コミュニティの根幹である近隣の人たちとの関係性を今一度見直したうえで、グリーンインフラにつながるような身近に出来ることを学んだり、実践してみることも、自分自身の「予防医学」につながるのかもしれません。