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2025年01月03日

不安と共感を考える

不安と共感を考える

「失敗したらどうしよう・・・」「人に嫌われたらどうしよう・・・」と言うようなことをいつも考えてしまうというようなことはありませんか。
 このように、まだ起こっていないことに心が囚われてしまったり、ストレスがかかるなど、潜在的なものに対する生体反応を不安と表現しています。

 老後の生活設計、自身の健康、今後の収入や資産の見通し、さらには、SNSの評判など・・・様々な要素の不安と常に隣り合わせでいるという感覚の方も多いのではないでしょうか。

 このような状況から逃れられないのは、ヒトには、「長期的な将来を予測」したり、色々と、想像を巡らせることで準備する能力そのものであるからで、これらは、不安要素をつくり出すという側面もあれば、その予測するチカラを使うことで進化を遂げてきたとも言えます。

 東北大学 河田雅圭名誉教授によれば、人の場合は他の霊長類と比較して、不安を抑える神経物質の放出量が少ないことで、不安を強く感じるようになっているそうです。これは、狩猟生活時代に捕食者から逃れられない不安を感じたり、食物を確保しなければという不安を増大させることで生存に有利な働きをしていたとも言われています。

 また、自身の危機管理能力の一つとして、不確かさに対して、不安を覚えるメカニズムが存在するとも言われています。不確かさについては、 ポジティブな面では好奇心、ネガティブな面では危険回避能力というような「不確かさ」が起因する2つの要因のなかでバランスを取りながら葛藤しているというのです。


 さらに、多くの霊長類にも「不安」という情動があるとされていますが、ヒトは他者の不安を、自分の不安として引き受けることが出来るというヒト特有の特徴をもつことで、社会形成の基盤にしてきたと考えられています

他者の感情に影響を受ける・・・といような情動によって、他者に対する「思いやり」を感じることができるという仕組みが脳の前帯状皮質に存在するそうなのです。

 京都大学ヒト生物学高等研究拠点 雨森賢一准教授によれば、前帯状皮質には不安に関わる24野と共感に関わる32野が存在し、ヒトは他の霊長類と比較して32野の領域が大きいことによって、他者の不安を自分の不安として引き受け、結果的に他者の感情に影響を受けるという特徴を持つようになったとしています。

 このように、脳の共感を司る部分が不安に影響をあたえるというような、不安と共感が相互作用することでヒトの意思決定に関わっている仕組みが存在することで他者と関係性において社会的コンセンサスを得るための重要な役割をしている可能性があるというのです。

 このような仕組みからすれば、人間関係は脳科学的にも大きな影響をもたらすことになります。

 帝京大学医学部精神神経科学講座 功刀浩主任教授は、そもそも100%確実なコミュニケーションというような手段は持ち得ないという前提がある中で、コミュニケーションの不確実さを理解しているということが相手に伝わることで、親しみにつながると述べています。

 そして、もっとも伝わるメッセージが、非言語的コミュニケーションである、会話の中での「間・・・」や、「考えているしぐさ・・・」だとしています。

 「間・・・」は、相手にとっては「考えている・・・」というメッセージとなり、その時間は「聴いているよ・・・」という明確なメッセージにもつながります。

 そして、「考える仕草・・・」は、「貴方のことを、ちゃんと考えていますよ・・・」「自分の考えを押し付けていません」というメッセージとして伝わるのです。

 「傾聴」という言葉がありますが、この二つの非言語的コミュニケーションは聴き手が相手の気持ちに共感しながら話を聴くことに対して、有効かつ具体的な手段の一つとして意識することが大切です。

 そして、「聴いているよ・・・」というメッセージが伝わることで、コミュニケーションが深まり、そこを起点に、「この人のことをわかろう・・・」という気持ちにつながっていきます。
 コミュニケーションがうまくいくかどうかの不安は大きいいっぽうで、その不安が相手に伝わることでコミュニケーションの潤滑油的な働きをしていくと考えることができれば、不安をポジティブに活用するということにもなってきます。

 不安が無ければ前に進めないし、前に進もうとするから不安があるということからすれば、不安があった時には、「自分は、何か新しい変化をしようとしている・・・」と考えることで、不安といい関係をつくることで、不安を燃料にすることもできるのです。


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Posted by toyohiko at 19:44│Comments(0)社会を考える
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