2024年10月25日
ストレスと感染症との関係を考える

ストレスがかかる状況で、「お腹の調子が悪くなる・・・」というような話は、よく耳にするのと同時に、脳腸相関という考え方が広まることによって科学的なメカニズムについても次第に明らかになってきました。
また、腸内細菌叢と免疫システムとの関係も、食物含め外界から様々なものが入ってくる「内なる外」と言われる消化器官に身体における免疫システムの半分以上が集中していることも既に解ってきています。
さらに、ストレスと免疫システムとの関係性に於いて腸内細菌叢が大きく関わっていることも多くの研究者の関心事になりつつあります。
例えば小腸には、パネート細胞という細胞があるのですが、そのパネート細胞が抗菌ペプチドαディフェンシンなどの分泌顆粒を放出して病原体を排除したり、幹細胞増殖因子の産生により上皮幹細胞を維持することが知られています。
また、そのパネート細胞は腸内細菌叢の構成員とされる共生微生物を見分けて外敵である微生物のみを攻撃することが出来るようになっていることで、腸内細菌叢を守っているのです。
つまり、ディフェンシンが上手く分泌されない状況になる事で、小腸内を外敵とされる微生物が通過してしまい腸内細菌叢のバランスの乱れを引き起こし、炎症性腸疾患などにつながることが指摘されています。
このディフェンシンの分泌量については、うつ病モデルマウスにストレスを与える実験に於いてストレスが低下の大きな原因であることが明らかになっています。
そもそも、ストレスの情報を処理するのは脳であるため、このようなストレスに関する研究成果から、脳腸相関に腸内細菌叢が関与しているのではないかと考えられるようになってきたと言われています。
アカゲザルの親子に対して、赤ちゃんとの分離というストレスを与える実験では、母子分離後3日目から赤ちゃんの腸内細菌叢の変化が見られたという報告もあります。
その報告では、善玉菌の代表選手でもある乳酸菌の減少と共に、頻繁に奇声を上げたり、活動や意欲の低下などのストレス行動と言われる行動パターンがみられるようになったというのです。
更に、妊娠したアカゲザルに6週間にわたり毎日10分間、大都市の騒音と同じような大音量の警報音を断続的に聞かせるという方法でストレス与える実験では、生まれた赤ちゃんアカゲザルの糞便中の腸内細菌において乳酸菌やビフィズス菌の善玉菌と追われる腸内細菌が有意に減少していたという結果もあり、ストレスは本人のみならず世代を越えて影響を及ぼす可能性が明らかになっています。
ヒトも動物である以上、気温や気圧、さらには音などの環境要因によって大きなストレスを受けるということは、前提にはなりますが、精神的なものも含めたストレスは脳で感じるということからすれば、ストレスによって腸内細菌叢に影響が及ぶということは、脳腸相関の考え方を裏付けるものであるとともに、腸に集中しているとされる免疫システムにも影響を及ぼすことで、ストレスの増大は、感染症のリスクの増大にもつながってくるということは想像に難くありません。
そのためにも、季節の変わり目や急激な天候の変化ヘの備えをはじめ、ストレスを溜め込まない「思考の癖」と「お腹の調子を整える」という、腸内環境の維持向上は、これからの季節の感染症の予防にもつながるのかもしれません。
Posted by toyohiko at 16:28│Comments(0)
│身体のしくみ