身体のチカラ › 食の文化

2025年01月24日

「我が家の味」と腸内フローラ



 皆さんには、「我が家の味」とか「おふくろの味」というものがありますでしょうか・・・?

 小さい時から食べ慣れた味というものは、どことなく安心感につながるものです。例えば、和食の代表的な献立の一つである、味噌汁やお雑煮などはその代表的なものではないかと思います。
 かつては味噌汁の違いや、お雑煮の違いで喧嘩になった・・・などという話も度々耳にするようなことあるくらいです。

 この話は、一見食文化のようの話題のように見えますが、別の見方も出来るというのです。

 「食べたものは、実は腸内細菌によってきめられている・・・」というような話を聞いたことがあるかたもいるかと思いますが、この食文化の礎を担っているのが腸内フローラの可能性があるというのです。

 ヒトを含めた多くの哺乳類の腸内フローラは、食糞や分娩時の直接的な伝播や免疫システムにも関わると言われている遺伝子情報を基にした設計図のようなもの、さらに食事の内容の3つの要素によって大きく作用すると考えられています。

 そのように考えた場合に、ヒトであれば3歳までにその人固有の腸内フローラが出来上がるということも含めて、その時の食事の影響は少なくないと考えることが出来ます。

 ご存知のように、腸内細菌もエサとなるものの多い少ないという状況によって、構成される菌株の割合が変化していきます。そのエサの元になるのは、当然のことながら食事から摂る様々な栄養素になりますので、腸内フローラも当然のように影響を受けるということになります。

 慶應義塾幼稚舎と横浜初等部で食育教育に取り組んでいます医師の菅沼安嬉子氏によりますと、「3歳くらいから子どもはいろいろなものを食べ始めるので、『我が家の味』というものを一品で良いので作ってみてください。人間には『これを食べると癒される』という味があるようです」とその人にとっての懐かしく、忘れられない味の重要性に触れています。

 更に、「我が家の味」は反抗期の癒し飯にも・・・というように、腸と心の安定についても、「思春期になるとホルモンが嵐のように体内に出てきて脳がパニックを起こします。本人もどうしていいかわからない状態になり、時には親に暴言を吐きますが、それは本人ではなくてホルモンが言わせているので本気にしてはいけません。そんな時は『我が家の味』を作って黙って出してあげることで穏やかになることもあります」とも述べています。

 更に、食べるだけでなく、食事をつくることの大切さについても、「奥さんに先立たれた時、残された男性はすぐに亡くなる方が多いですが、自分で料理を作れる人は大丈夫です。・・・」と、高齢になった時の幸福度に大きな影響を与えることにも言及しています。

 そして、「小さい頃に作った経験があると、しばらくブランクがあってもいざとなったらできるもので、子どもの頃の食育はとても大事です」とし、「働きながらの育児は忙しく大変だが、1週間に一度で良いので手作りに挑戦してほしい。」と、子どもの頃からのバランスのとれた食事の重要性について、将来の生活習慣病やがん予防との関係性についても述べています。

 ご自身の腸内フローラと大きく関係している「我が家の味」、そして、その味を自らつくることが出来ることが、長い意味での幸福度につながる・・・というような考え方も、大切ですが、一方で、「・・・しなければ」にとらわれ過ぎず、経験する、体感する場面が増えていく事で「やったことないから・・・」にならないことを大切に出来るというような軽い受け止めかたをすることで、意識し続けることが出来るのではないでしょうか。

 勿論、小さい時からいつも飲んでいた飲み物や、よく連れて行ってもらったご飯屋さん・・・のように必ずしもつくってもらったものでないものが「我が家の味」であってもいいと思います。

 こうした、「我が家の味」というような味の記憶は、単なる記憶ではなく・・・腸内フローラにとっても心地いいエサの供給源になっていることで、脳腸相関を通じて心の安定につながっていることの可能性も意識していくことをしてみたらいかがでしょうか。


  


Posted by toyohiko at 13:55Comments(0)食べ物を選ぶ食の文化

2022年05月19日

旨味と食欲と健康長寿を考える




 前回、タンパク質不足の食事になる事で、炭水化物を過剰に摂ってしまい、結果的に肥満のリスクにつながってしまうという「タンパク質レバレッジ仮説」について紹介しましたが、高タンパク質・低炭水化物中心の食事を摂っていれば、すべて解決という事にはならないという事も一方で解ってきているそうです。

 この仕組みは、多くの生物に備わっている基本的なメカニズムの一つと考えられていますが、長生きと繁殖のための生殖機能は両立せず、お互いに阻害しあう関係にあるためだと考えられています。

 食料と栄養が十分であれば、そのエネルギーは繁殖と成長に注がれる一方で、長生きにつながる、新しい細胞を作る際に発生する、損傷などのミスコピーを修復したり、エラーの頻度が高まってしまうというのです。

 つまり、癌化などの様々な疾病リスクが高まってしまうのです。これは、生命の進化に大きく関わる「死」のメカニズムにも通じる大切な仕組みでもあり、染色体にあるテロメアの長さにも影響を与えるというのです。

 その一方で、低タンパク質の状態になることによって、繁殖機能が低下し、「長生き」というスイッチを入れ、「繁殖という進化上の目的を果たすため、来るべく状態に体調を戻す。」ための機能を優先させるのですが、基本的にヒトを含めた多くの生物は、「長寿よりも、進化のために遺伝子を引き継ぐことを選択する。」というのです。

 長寿という視点から考えると、「肥満は必ずしも健康に悪いとは言えない・・・」という考え方もできるのですが、炭水化物の摂取の仕方に工夫をすることで、両立とはいかないものの丁度いいバランスを見つけることが出来るというのです。

 ご存知の方も多いかと思いますが、炭水化物の過剰摂取と言いましても、炭水化物は大きく分けて食物繊維と糖質の二つに分類されます。
 つまり、食物繊維を意識して摂取することで摂取カロリーの中身を変化させることが出来るという事です。

 このような食生活をしている代表的な地域が、沖縄と言われていました。

サツマイモと葉物野菜を主体とし、少量の魚と赤身肉を組み合わせた伝統的な沖縄食を中心に食べていた頃では、100歳以上の人口割合が他の先進国平均の5倍と言われており、三大栄養素の摂取比率は、タンパク質がわずか9%、炭水化物が85%、そして脂肪も非常に少なく6%であったと言います。

 これは、食事に十分な食物繊維が含まれることで、カロリーの過剰摂取につながる「タンパク質レバレッジ効果」が弱められるためともされています。

 事実、食物繊維は食物の消化速度を遅らせ、空腹感を抑えたり、腸内細菌のエサになる事で直接吸収されるのではなく、短鎖脂肪酸などの多くの有効成分に変換された状態で体内に取り込まれるなど、複合的な効果があることも知られています。

 とはいえ、「タンパク質レバレッジ仮説」が有効であり、タンパク質の摂取を中心に食欲や食の嗜好がコントロールされているとしたならば、旨味と食物繊維が豊富な「出汁を中心に旨味を大切にしている日常的な日本食」が一番良い・・・、ということになるのではないのでしょうか。

 旨味成分の多くはアミノ酸と言われるタンパク質をつくる材料になるモノです。つまり、「旨味は食品にたんぱく質を含んでいるシグナル」という事になります。

 かつて、旨味は日本人独特の味覚とまで言われていましたが、「寿司を箸で食べる・・・」という食文化は世界中に広がり、そもそも日本の料理である・・・という事すら知らない人たちが出てきたという状況になっているという話を耳にしたことがあります。

 こうして考えると、旨味と食欲との関係からすれば「世界遺産としての日本食」も、文化という側面だけではなく、健康長寿・・・、そして健腸長寿の一助として大きな役割を果たしているような気がします。



  


Posted by toyohiko at 15:34Comments(0)食べ物を選ぶ食の文化

2021年06月12日

プレバイオティクスとしての食物繊維を考える




 食物繊維の大切さについて、健康の維持増進のためにも有効であるということは言うまでもないと思います。ついては、「野菜を中心に食べることを意識して・・・」というかたも多いかともいます。

 また、食物繊維が腸内細菌にとって有効な栄養分としてのプレバイオティクスという認知も高まりつつありますので、食物繊維を積極的に摂ることで「便秘の解消・・・」などのお腹の健康とのつながりをもって意識している方も増えてきていると思います。

 近年の食物繊維の摂取状況の推移は、1955年の22.5gから2013年の14.2gと3割以上減ってきているというのが現状です。日本人の食物繊維の目標摂取量は男性20g、女性18gといづれにしても足りていないという現状があるようです。

 大妻女子大学人間生活文化研究所の青江誠一郎教授によりますと、日本の食生活の上では、食物繊維に対して最も寄与率が高い食品は精白米で次いでパンという事になっていますが、1955年と比較しても7割も減少していることと加え、食物繊維にも種類があり、その種類を考慮しても様々な穀類の摂取量を増やしていくことが食物繊維の摂取量を増やしていくための一番有効な方法として提唱しています。

 しかしながら、近年では炭水化物が肥満の原因にというイメージが先行しすぎてしまい、穀類=糖質という考え方を持つ方も多くなり、「ごはん抜き」になってしまうことで、本来必要な食物繊維まで減らしてしまうケースは少なくないという事を耳にします。

 実際に、炭水化物ダイエットを始めたことで便秘の症状が出たりする事例も多く耳にしますが、これは食物繊維が足りなくなってしまった典型的な事例と考えることもできます。

 だったら、どうすれば良いの・・・?
 
という事が、一番の関心事になると思いますが、日常摂取している糖類に直接つながってしまう糖質と食物繊維を多く含む糖質とを区別して摂取の状況をコントロールしていく事です。

 糖類に直接つながってしまう糖質に関して言えば、ドレッシングをはじめとする、多くの市販の調味料などの内容成分を注意して見ていただくことが大切かとおもいます。多くの場合に、様々な糖類を使用することで、「おいしさ・・・」につなげていますので、そのことそのものが悪いわけではありませんが、全体的に見てみると過剰になってしまうこともあるという意識は必要です。
 身体にとっては、食後のデザートで摂る糖類も調味料で摂る糖類も同じです。「知らず知らずのうちに・・・」を注意することが良いのかもしれません。

 次に、穀類に含まれる食物繊維についてですがプレバイオティクスの観点から考えると、水溶性食物繊維や不溶性食物繊維など様々な食物繊維があり、当然のことながら腸内の「常在菌の好みのエサ」というようなマッチングがうまくいかない事には腸内細菌の代謝物である短鎖脂肪酸の効果を享受することはできないという事になります。


 青江誠一郎教授によりますと、全粒小麦に代表される不溶性食物繊維は腸疾患の予防や改善が期待されていることに対して、大麦やオーツ麦に含まれる水溶性食物繊維は代謝疾患の予防や改善に対する有効性が指摘されてきましたが、研究が進むにつれて小麦ふすまなどの不溶性食物繊維を豊富に含む食品の摂取による、糖尿病や冠状動脈疾患のリスクの低下が報告されるなど、水溶性や不溶性などの食物繊維による機能分類だけでは説明がつかないこともあるとしながらも、主食穀物からの食物繊維の積極的な摂取は有効な手段の一つといえるのではないでしょうか。

 食物繊維の摂取というと「野菜をたくさん摂る・・・」となりがちですが、レタスに含まれる食物繊維の量は100gあたり1.1g(不溶性食物繊維1.0g、水溶性食物繊維0.1g)になりますので、思っているより少なく、白米の2倍強、玄米の3分の1の量に当たります。
サイズにもよりますが、100gで1玉の4分の1以上という量になりますので、1gを摂取するためにサラダなどで考えてもなかなかのボリュームになってしまうのではないかと思います。また、そのままで食べればいいかもしれませんがドレッシングなどを使うことで、計算外の糖質を摂取してしまうことにもつながりますし、毎日となるとなかなか大変ということもあるかもしれません。

 大麦やもち麦に多く含まれるとされる水溶性食物繊維の一つであるβ-グルカンをつかったマウスでの実験でも、回腸内の酢酸や酪酸の量が優位に上昇しているという報告があります。つまり、腸内細菌の代謝物である短鎖脂肪酸に着目する必要性が注目されているのです。

  穀物別に見てみると最も食物繊維が多いとされてるのがもち麦です、大麦のなかでも特に食物繊維が豊富で、通常の押麦では、可食部100gあたりの食物繊維含有量が9.6g(水溶性食物繊維6.0g、不溶性食物繊維3.6g)なのに対し、もち麦は可食部100gあたりの食物繊維含有量が12.9g(水溶性食物繊維9.0g、不溶性食物繊維3.9g)と食物繊維が多いことがわかります。

 また、野菜のなかでも食物繊維が多いことで知られるゴボウでも5.7gなので、その含有量の多さを考えれば、様々な工夫をしながら食物繊維を多く含む穀物を食事に積極的に取り入れて、腸内細菌の代謝物である短鎖脂肪酸を増やしていくメリットは十分にあると思います。




  


Posted by toyohiko at 16:16Comments(0)食べ物を選ぶ食の文化

2018年09月29日

あらためて「匂い」の仕組みを考える




 「匂い」というものは、日頃生活をしていて以外に気になるものです。また、「気にするほどのことではないんだけど・・・」ということが、続いてしまうのは日常生活を送っていくためにはダメージとして感じている方も意外に多いのではないのでしょうか。

 「匂い」については、不快感を感じたり香料に含まれる成分が原因で化学物質過敏症を引き起こす人がいるなど、「香害」や「スメルハラスメント」を呼ばれるような状況に近年はなってきています。

 そのような問題を引き起こす、原因の一つとして考えられるのが、匂いの成分そのものでは無く、「匂いに関しての感じ方が、個々によって差がある・・・」ということなのではと思います。

 ネガティブなイメージの代表格である「加齢臭」に関していえば、加齢臭の主成分はノネナールという成分で男女問わず40歳を過ぎたころから増え始め、60代から顕著になると言われています。
 この匂いについても、「臭い・・・」という反応と「おばあちゃんの着物の匂いがする・・・」など、好き嫌いがはっきりするということがあるそうです。更に興味深いのは、この結果と高齢者との接する機会の多さと強い相関関係があったということです。

 東北大学大学院の坂井信之教授によりますと、人間が生まれつき嫌だと感じる匂いというものはごく少数しかないのだそうです。
 例えば、食物や死体の腐敗臭です。これは、「腐敗したものを食べないように・・・」とか、現代社会ではイメージしにくいかもしえれませんが、死体の腐敗臭については、「敵の存在を示す・・・」ということにつながります。
 
 また、焼け焦げる臭いも嫌と感じる臭いの一つで、これも「火事などの危険信号・・・」といして認知するような仕組みになっています。

 しかし、それらの「匂い」以外については個人差というものが非常に多いのだそうです。

 坂井教授によりますと、「人は、これまでに嗅いだ事の無い臭いを嫌な臭い・・・と表現することが多い」そうです。

これは、「匂い」を認識する仕組みにも関係していると考えられています。

 「臭い」は、化学物質の一つとして鼻から入り、鼻の奥の粘膜にある嗅覚受容体で化学反応が生じることで、その反応が信号として嗅神経を通じて脳に送られます。つまり、鼻はあくまでも臭い成分をキャッチするものということです。

 その信号を、脳が今までの経験などを含めた情報と合わせることによって「匂い」として感じるのです。食べ物の匂いなどがこのような仕組みによってイメージ付けられるために「今まで嗅いだ事の無い臭いに関して、け警戒心を持つ・・・」ということになるのだそうです。

 皆さん、「食」と「匂い」についてあまり関心ないかもしれませんが、「普通に食べたときと・・・」、「鼻をつまんで匂いが分からない状態で食べたとき・・・」の味の違いを一度試してみてください。ずいぶん違うということを感じると同時に、味と匂いとの大きな関係に気づくと思います。

 小さい時に、嫌いだったものが大人になると食べられるようになる・・・ということも、匂いセンサーのデータの蓄積量が増えたということなのかも知れせん。

 最後に坂井教授によりますと、中年男性に対する「臭い・・・」ということも、実際の「臭い成分」の量ではなく、「不潔」「だらしない」「疲れている」・・・などの見た目から来る「くさい」「嫌い」というイメージが「臭い」と感じることに対して大きく左右しているということのようです。

 こうして考えると、「匂い」のメカニズムは思った以上に複雑ということのようですね。
  


Posted by toyohiko at 15:55Comments(0)食の文化

2017年08月12日

発酵乳と「日本書紀」




 720年に完成したとされている、日本で最も古い文献の一つである「日本書紀」に「牛酒」という名前の飲み物が出てくるそうです。当時、神武天皇が東遠征に出た際にその土地の豪族とのやり取りの中で、「牛酒をもってもてなしながら油断させる」というくだりがあることから、この「牛酒」というのが牛乳を使った発酵食品の一つでお酒の様なものと考えられていると、信州大学名誉教授の細野明義氏が述べています。

 そもそも、乳製品に関する歴史については1998年に英国ブリストル大学のエバージェット教授により、トルコ南東部のアナトリアにあるチャヨニュ遺跡から出土した土器に付着した有機物を解析し、紀元前7000年から乳利用があったという報告をしていることから、約9000年前から乳製品を食していたのでは・・・と考えられています。

 日本では、「日本書紀」以前の文献があまりない・・・ということを考えると、どのくらい前から、食生活の中で乳製品との関連があったのかは定かでなないということになりそうです。

 当然、ここで出てくる「牛酒」が日本独自のものであったか、中国や朝鮮半島から渡ってきた食文化であったかどうかは定かではありませんが、西洋で発達して今日に至っている乳製品と、アジアで栄えてきた乳製品は作り方なども含めて、「全く異質のもの」と言ってもいいと、前出の細野教授は述べています。

 中国の「斉民要術」という世界最古の調理書と呼ばれる書物の中に、乳製品に関する記述があり、この書によりますと、乳製品は「酥」「醍醐」「湿酪」「乾酪」「淳酪」「漉酪」の6つのものがあるそうで、それぞれ、「酥」は牛乳を放置した時に表面に浮いてくるクリーム層をすくい取ったもの。「醍醐」は、酥を加熱し濃縮させたもので現代でいうとバターオイルの様なもので、「衆病皆除」とされ万能薬として尊ばれた。「湿酪」は、「酥」をとったあとの残りを発酵させたもので、現代の発酵乳に相当するもの。「乾酪」は、「湿酪」煮詰めてさらに乾燥させてつくり、脱脂粉乳で作ったチーズの様なもの。「淳酪」は、牛乳を発酵させて布袋に入れて水分(ホエイ)を除去し、固形物を煮たもの。最後に「漉酪」は、「淳酪」を天日で乾燥させたもの。と様々です。

 日本では、発酵乳として良く聞くもので「蘇」というものがありますが、この「蘇」も中国の「酥」とは異なり、「乳をゆっくりと加熱し、濃厚になった練乳の様なもの壺に移し、そこに適当な菌が入ることで「蘇」が出来上がる・・・」とありますので、これだけを見てもルーツはいろいろあれど、それぞれの地域で独自の食文化として進化を遂げたということが伺えると思います。

 その後は、急激に乳製品が普及し始めた要因としては、農村部の食糧危機があったと考えられています。特に、慢性的な飢饉にみまわれた、農村部はもちろん、江戸でも生まれた子どものために「もらい乳」や「売乳」という言葉があったほどだったそうです。

 明治に入り、何とかして牛乳を乳幼児の栄養源にしようと育児用の調整粉乳というものが普及していくことになります。これは、西洋を含めた他の国と大きく違う特徴で、多くの国の場合、牛乳があって、チーズ、バターというような乳製品の普及の順序になっているのですが、日本の場合には、牛乳、赤ちゃんにあたえるための練乳、バター、発酵乳・・・と社会環境の違いも含めて乳製品においては特徴的な広がりを示したようです。

 その後、政府の後押しもあり、酪農を政府の進める殖産興業の柱として進めていくために、牛乳を「天皇陛下も召し上がっている飲み物・・・」とか、発酵乳においては、時の首相や新渡戸稲造など愛飲しているひとの著名者リストまで載せてピーアールした時代もあったそうです。

 もちろん、その背景にはイリアメチニコフの「不老長寿論」の発表を受けて、1914年に「実業之日本」という雑誌で、発酵乳特集が組まれたことも大きな要因にもなっています。

 その後、1920年代から乳酸菌をはじめとする、微生物の健康効果についての研究や食品についての利用が進み始めたのです。今や多くの方が知っている「乳酸菌飲料」もこのような社会背景から、世の中に出てきたのかもしれません。
  


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2016年08月12日

栄養情報の消化不良




 現在の日本では、「ビタミンCの多い食べ物は・・・?」などの質問に、多くの人が「レモン」や「イチゴ」などの具体的な食品の名前を上げることが出来るのはある意味「ごく当たり前」のことになっています。

 しかし、世界的にみると国民全体が、このような豊富な栄養に関する知識をもっているということは珍しいことのようです。

 このことは、日本における栄養教育の成果の一つとして評価されていますが、その一方で、知識があるからこその日本特有の現象が起きているという指摘が多いのも事実のようです。

 日本の食生活と言えば、最近、世界遺産にもなった「和食」にあらわされる日本古来の食習慣ですが、「刺身」や「てんぷら」というようなメニューだけ取り上げてみても、日本食本来の価値を表してはいないという専門家の方も多いようです。

 東京家政学院大学の江原絢子名誉教授は、「自然の恵みを大切に使うという習慣の中で育まれた調理方法、食材の多様性が、「和食」のなかで大切にしてきたこと・・・」と述べているのと同時に、ご飯を主食に汁を付け、いくつかの菜を組み合わせて食べるという特徴がパターン化した「一汁三菜」という基本型が和食の内容を豊かにしたのでは・・・という考え方をしています。

 例えば、煮物にしていた野菜が旬を過ぎて手に入りにくくなれば、別の野菜を使うとか、魚が経済的に無理な場合においては豆腐に置き換えるなど・・・パターン化したなかでアイテムを自在に置き換えるという構造が重要だと言います。
 さらに、醤油や味噌などの発酵食品を使うということも和食というものを大きく特徴づけるものの一つになっていることは間違いありません。

 結果的に、あまり栄養素ということを意識しなくても、身近で手に入るものを中心に、ご飯と主菜には魚や肉などの動物性食品と副菜として野菜・芋・豆類などを組み合わせて具だくさんの汁を用意すれば比較的簡単に栄養バランスがとれるのが「和食」の特徴の一つであったともいわれています。

 しかしながら、社会の変化や食習慣も変わり、「普段はコンビニ中心で、たまにはグルメ・・・」というような方も珍しいことではなくなってしまった現在・・・知っている栄養素だけに着目しすぎてしまう傾向が強まってしまったという感じがします。

 「普段は、外食が多いけれど朝はスムージーを飲んでいるし、サプリメントも飲んでいるから大丈夫・・・」というような人が増えたことも現実です。

 今は、栄養情報があふれていて中には明らかに誤った知識を信じている人は意外に多いと言われています。

 以前、「あるある大事典」という健康情報番組がありました、この番組は情報のねつ造の疑いで廃止になったのですが、その当時医者などの専門家の中で「あるある被害者」という言葉が流行したという話を聞いたことがあります。

 ある食材を取り上げると、その食材が日本中の売り場から無くなってしまうほどの社会的影響力を持った番組であったからこその、それぞれの立場の思惑が「人間の健康」という本質的なテーマとはずれてしまったからこそ起きでしまった現象のひとつだったと思います。

 このような状況の中、栄養教育の次なるステージの重要性に対しての取り組みの必要性を訴える声も出てき始めています。その一つが、公衆栄養学の確立の必要性です。
 欧米では、食事が健康に及ぼす影響を栄養士が個別にフォーローアップしていく活動を進めています。また日本でも、日本栄養士会を中心に「栄養ケア・ステーション」という栄養士が地域に出向く形での栄養相談会の実施を進めています。

 「何が正しい・・・?」という疑問もあるかもしれませんが、人間の身体は複雑な故、もっと総合的な視点で食事というものと関わる視点がこれからさらに求められるかもしれませんね。
  


Posted by toyohiko at 16:07Comments(0)食の文化

2016年08月05日

コメと小麦の違いを考える





 近年、「糖質制限」というキーワードとともに良く耳にするのが「コメ離れ」という言葉です。とはいえ、日本人の主食として長年付き合ってきた「コメ」とその対極にある「小麦」との違いについて少し考えてみたいと思います。

 世界の三大主食と呼ばれるコメ、小麦、トウモロコシ・・・いずれも植物の種子になります。つまり、食べ物と言うよりも種子としての構造などに注目する必要があります。

 まず、コメと小麦の食べ方の違いには大きな違いがあります。その違いは、コメは種子の粒の状態を食べるのに対して、小麦は粉にして加工して食べることがほとんどです。

 それぞれの食べ方には理由があります。ひとつは、種子そのものの硬さです。食用にする際に邪魔になるのが糠(ぬか)ですが、そのためコメも小麦も糠を取り除く必要があります。その糠を取り除く際に、小麦はやわらかいために粉砕して取り除いた方が向いていたのに対して、コメは堅いために表面を研磨することで取り除く方が簡単だったということのようです。

 また、糠とともに取り除いて食べる部分の一つには、胚芽があります。コメの場合は、種子の横に小さく胚芽がついていますので、研磨によって糠同様に取り除くことが出来ますが、小麦の場合は胚芽が種子の中に巻き込んだ構造になっているために、胚芽を取り除くには、粉にしてから、篩(ふるい)などで取り除く必要があったのです。

 そのために、コメと小麦の両者の「食べ方」に大きな違いが出てきたのです。

 もうひとつ、食べ方に大きな違いをもたらした理由があります。その理由は「グルテン」の有無です。グルテンは、小麦特有のタンパク質で麺のコシやパンのモッチリ感につながる成分で、コメには含まれていませんので、コメは麺類やパンには向かないということになります。
 近年はこのグルテンに対して、「糖化」のリスクの上昇や、小麦アレルギーのアレルゲンであるというようなことがわかってきたこともあり注目され始めた成分です。

 そのほかの違いについては、食べたときの味覚に関することになりますが、これは、こ好みもありますので一般的にな傾向として言われていることを紹介しますと、コメは、米粒そのものを炊飯という「煮る・焼く・蒸す」という3つの調理方の要素を複雑に組み合わせた方法で食べる文化が出来上がってきました。そのために、もともとの結晶質の種子本来のほんのりとした甘みを感じることが出来るために、炊飯した「ご飯」そのものを美味しいと感じる人が多いのです。

 その一方で、小麦は、粉にしてしまうために、種子本来の味覚を感じにくいこともあり「塩や砂糖、油などとの相性が非常に良い・・・」ということになります。

 また、最近は「コメ=糖質」というイメージが強くなってしましましたが、コメには多くの機能性成分が含まれていることにも改めて注目していただくことも大切だと思います。

 具体的には、乳酸菌などの腸内の善玉菌を整えるための食物繊維をはじめ、抗酸化作用のあるフィチン酸、成長促進作用のあるγ-オリザノール、病原性微生物防御や肥満防止に作用すると言われている酵素阻害タンパク質、酸化防止作用のあるポリフェノールやフェルラ酸など様々です。

 「パンにしますか・・・?、それともご飯に・・・?」というやり取りは、意外と多くのところで聞かれますが、「パンとご飯」・・・主食だから同じ・・・なのではなく、実は結構違うところが沢山あるということも知っていただけるとありがたいです。

 最後にひとつ、・・・水田は、災害をはじめ自然環境にも大きな役割を果たしてきていることも、お忘れなく。

  


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2016年05月29日

学校給食と食育




 1954年に制定された学校給食法が2008年に改訂されました。実に半世紀以上経過してからの改訂です。
 改訂された学校給食法によると、学校給食の目標として次の7つを挙げています。

1. 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること
2. 日常生活における食事に正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、及び望ましい食習慣を養うこと
3. 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと
4.食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと
5. 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと
6. 我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること
7. 食料の生産、流通及び消費について正しい理解に導くこと

 この7つのうちの1,2,3,7については、1954年当時のもの同じであるということが、この学校給食法の特徴が表れているような気がします。
 学校給食法というものは、義務教育の子どもたちに対して規定される推奨法ということもあり、きわめて理念的なものであり、各自治体や教育委員会の裁量にゆだねられているということろもあります。

 学校給食そのものは、1889年、山形県鶴岡町の私立忠愛小学校提供されたものが始まりとされています。その後、1923年の文部次官通牒に「小学校児童の衛生に関する件」児童の栄養状態を改善するために学校給食を奨励する記述があり、当時の食糧不足がきっかけになったということは言うまでもありません。
 また、このように成長期の子どもたちが同じものを一斉に食べる日本の学校給食制度は世界的に見ても珍しいシステムであると同時に、高度経済成長とのかかわりも欠かせないという考え方をする方も多いようです。

 昭和30年代当時の支援国であったアメリカからの食糧援助品の小麦や脱脂粉乳などが提供されるメニューに対して大きな影響を与えたことも否めないと思いますが、この「学校給食の目標」を見てみると、その当時から食育に対する大きな役割を担っていたということはあるような気がします。

 食育という視点で考えると、まずは選食力、食を通じて生活のマナーを身につける、さらには食を通じて社会を考えるという3つの大きな役割があります。
 「学校給食」の著書である牧下圭貴氏によりますと「最近の家庭では子どもが食べたいといった献立を作りがちですが、食経験の浅い子どもの好みを優先させると限られたメニューしか出てきません。そこで、学校給食が食の経験を広げる役割を担う面も出てきました。」というように、味覚も含めしっかりとした「食経験」を成長期である子どもの時期に積み重ねることが大切だと思います。
 
 このような経験が、世界遺産にもなっている「日本食」という素晴らし文化を継承しさらに発展していくためにも大切なことです。さらに、前出の牧下氏によりますと、学校給食にはあらゆる意味での「教材」という役割がある・・・ということです。

 アレルギーの増加や子どもの貧困を始め、様々な社会的な課題が山積する中、学校給食が果たす役割にあらためて、関して色々と考えていく必要がありそうですね・・・
  


Posted by toyohiko at 07:15Comments(0)食べ物を選ぶ食の文化

2016年01月31日

ヨーグルトと乳酸菌飲料




 ここ数年、「腸内フローラ」という言葉とともに腸内環境をはじめひとのおなかに対する関心が、急速に高まっているような気がします。また、最近では、腸内環境を整えることによって便秘を解消した芸能人が、自らの体験を綴った本が人気を呼んでいるなど様々です。

 そこで、誰もが気になるのが「何を食べると、腸内環境の改善にいいのか・・・」という自分の身体にとって答えが出やすいための具体的食品名です。

 テレビなどのメディアに出てくる専門家といわれる方々の多くは、その答えに対して「ヨーグルト」という食品を紹介しています。
 これは、一般的に認知度が高いことや、さまざまなレシピに対する汎用性などいろいろな理由があると思います。

 ここで、肝心なのは専門家といわれる人たちが「善玉菌である乳酸菌をたくさん摂るために有効な食品」を紹介している・・・ということです。

 ヨーグルトという食品の歴史は長く、紀元前3,000年位から記録に残っているそうです。多くの発酵食品がそうであるように、そもそも人間は微生物をつかって食品の保存に利用してきました。もちろんヨーグルトもその一つです。

 ヨーグルトの健康効果について本格的な研究がされはじめるようになったのは、1908年にノーベル医学生理学賞を受賞したロシアのイリア・メチニコフの「ヨーグルト不老長寿説」からだとされています。

 その一方で、1935年に日本で販売されるようになった乳酸菌飲料は、人間にとって良い働きをする乳酸菌を日常的に摂取することで予防的に健康効果を維持してもらうために考えられた食品です。

 その当時、京都帝国大学医学部出身の代田稔博士が乳酸菌を摂るのにヨーグルトではなく、乳酸菌飲料という新たなカテゴリーの食品を考えたのか・・・ということを考えてみる必要があるような気がします。

 当時、なぜこのような食品を選んだのかという記録に関して多く残っているわけではなので、はっきりしたことは言えませんが、少なくともさまざまな理由でヨーグルトよりも「効果的に乳酸菌を継続摂取できる食品」という発想でつくられたということが想像されます。

 また、乳酸菌飲料が世に広まり始めた当時、複数の大手製薬会社から独占使用権を買い取りたいという話があったが、「予防的に毎日1本飲んでいただくのが必要だから、食品である必要がある」というような、代田稔博士の乳酸菌飲料開発にまつわるエピソードがあります。

 発売当時は、より多くの乳酸菌を摂ることができる食品ということで考えたこともあり、原料である培養液は、非常に酸味が強くそのまま口に入れることを「ピリピリ」とするほどだったために、砂糖を利用し最小限の酸味と甘みのバランスで味を調えた結果だとされています。
 また、多くの乳酸菌飲料は脱脂粉乳を使用しており、当時の原材料調達のこともありできるだけシンプルにより多くの乳酸菌を摂ってもらうための食品として世に出てきたということです。

 また、乳酸菌にもさまざまな種類があり、食品に利用されている乳酸菌の種類には、健康効果が科学的に明らかになっているものもあれば、風味のバランスをとるためだけに利用している乳酸菌など様々です。

 このような乳酸菌に関しては食品表示法で詳しい規定がないために各メーカーの自主的表示になっているので、消費者として情報を知る手段が少ないということもありますが、健康効果があるようなプロモーションをしてるのにもかかわらず、健康効果があるとされている種類の乳酸菌の割合が極めて少ないということも実際にはあるようです。

 実際に流通している商品を見てみても、ヨーグルトに入っている菌数と比較して乳酸菌飲料のほうが数10倍から数100倍であることも多いようで、「シンプルにより多くの乳酸菌を飲みやすく」という商品の基本的な考え方からしてもある意味うなずけることもあります。

 「腸内フローラをより良くすることによって、健康に・・・」に対する様々なエビデンスが出てくる中、商品の特徴を知ることで自分にとっての、「毎日1本」見直してみてはいかがでしょうか・・・?  


Posted by toyohiko at 10:11Comments(0)食べ物を選ぶ食の文化

2015年10月10日

人類の進化と乳製品



 最近、「牛乳は本当に身体にいいのか・・・?」というような表現をよく耳にするようになりました。そのような主張の中にあるのは、「牛の乳は、子牛のためのもの・・・」とか、「牛のようなあれだけの大きな、個体を成長させるためのものだから、人間には適さないのでは・・・」というような内容のものが多いような気がします。

 人間は生物学上、哺乳類というところに分類されます。哺乳類は出産後、母乳によって栄養と免疫系に不可欠な成分をもらっています。
 その後、「離乳期」を迎え、他のものから栄養素をとるようになるのですが、離乳期をおえても「乳」から栄養分を摂取するのは、実は人間だけなのだそうです。

 「乳」と一概に言いましても、様々な種類の哺乳類の「乳」があり、その種によって、「乳」の成分のバランスも違うそうなのですが、ほぼすべての「乳」にはラクトース(乳糖)と呼ばれる糖が含まれています。
 このラクトースを消化するには、ラクターゼと呼ばれる酵素を必要とします。このラクターゼは、誕生した時点で全ての哺乳類が持っているのですが、生産能力は遺伝的にコントロールされており、人間以外のすべての哺乳類は思春期といわれる時期を迎える過程でラクターゼを生産が止まってしまうことが分かっています。
 
 これが、離乳期以降、人間以外の動物が「乳」を口にしない大きな理由の一つとされています。

 人間に場合も、すべての人間が継続的にラクターゼを生産できるかといいますと、実はそうでも無いようで、大半の人間も止まってしまうとされています。
 成人のラクトーゼの生産能力は、子どもの10%ほどしかないとも言われています。

 この、ラクトーゼの減少については、まだまだ未解明の部分も多いようでうですが、少なくとも「必要無くなるから・・・」ということでは、説明がつきにくいところも沢山あるような気がします。

 乳糖不耐症(ラクトース不耐症)といわれる、「お腹がゴロゴロする・・・」という症状に悩まされる、人が多いのは、哺乳類の仕組みからしても当たり前のこと・・・と考えなければいけないことなのかもしれません。

 その一方で、多くの人は一生、乳製品を摂り続けることができるというもの現実です。

 古くは、ギリシャ・ローマ時代から大人の乳製品を消化する能力に違いがあることは知られていたそうです。20世紀に入るようになり、その後の世界中での調査研究によると大人が乳製品を消化する能力を持ってる地域があるということも明らかになってきました。
 その地域というのが、スカンジナビア地域と呼ばれるヨーロッパとアフリカ及び、中東の一部であり、世界中の35%程度ということが分かってきたのです。

 当時、「乳」を摂取できるのが当たり前と考えられていたのが、実は、進化の過程で遺伝子によって決められていることが分かってきているようです。
 しかも、この遺伝子が「優性」であることが1970年代にわかり、乳糖不耐症ではない人たちが長い年月をかけて、徐々に増えてきているというのが、「進化の過程」から見た場合の見方ということになりそうです。

 紀元前3000年からあるといわれる、チーズやヨーグルトなどの乳を利用した発酵食品・・・

 ご存じのかたも、いると思いますが、乳酸菌を利用した発酵食品が、ラクトース(乳糖)の一部が分解されているために、乳糖不耐症の症状に悩まされることは少なくなります。

 約5000年にもわたる長い時間をかけて、発酵乳と付き合ってきたということもひょっとすると、進化の過程に大きく関わっているかもしれません。

 最近では、スウェーデンの食品庁が「コメの摂取に制限を・・・」ということもあるようですが、千年単位で人類がつき合ってきた、「自然の恵みである食物」の是非については、進化という身体の適応能力も考えたうえで時間をかけて判断することも必要かもしれませんね・・・
  


Posted by toyohiko at 11:48Comments(0)食の文化