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2024年11月22日

アレルギー症状と睡眠との関係を考える

アレルギー症状と睡眠との関係を考える


 近年、多くの方々の健康に関する悩みの中で、次第に増えていると言われているのがアレルギー症状です。アレルギーは、免疫システムの暴走による自身への攻撃が原因と考えられており様々な症状を引き起こします。

 その中でも、日常的にQOLに大きな影響を及ぼす症状が皮膚のかゆみです。

 皮膚のかゆみなどの症状を引き起こす、代表例として挙げられるのがアトピー性皮膚炎で、小児で約12%、成人で約8%とされており、日本におけるアトピー患者数は増加傾向にあるとされています。

 かねてから、かゆみと睡眠との関係については、下肢静止不能症候群とも呼ばれるむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)なども不眠の原因とされており、多くの関心を集めています。

 むずむず脚症候群の原因は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンがうまく働かないことが原因と考えられており、アトピー性皮膚炎とはメカニズムが異なりますが、かゆみという症状が睡眠に大きなマイナスの影響を与えているということが言えると思います。

 そのような中、ポーランドのグダニスク医科大学医学部のアリレザ・コスラヴィ氏らの報告によれば、アトピー性皮膚炎によって集中力の低下、睡眠効率の低下、IQの低下など、短期的な神経認知課題に関連しているという可能性が示唆されました。

 報告によれば、アトピーによる睡眠障害は、単なる「かゆみで眠れない」という問題だけではなく、アトピー性皮膚炎に伴う慢性的な炎症が、体内の免疫システムに影響を与え、それが睡眠-覚醒リズムを狂わせることで、脳の働きにも大きな影響を与える可能性があるというのです。

 更に、27万人以上を対象とした大規模な研究により、アトピーによる睡眠障害が認知機能に与える影響も明らかになってきたという報告もあります。

 具体的には、注意力散漫による集中力の低下、さらに記憶力の減退や学習能力の低下や感情コントロールの困難さなどの短期的な影響のみならず、長期的には、子どもの場合では学業成績への影響や知能指数(IQ)の低下リスクに加え、ストレス耐性の低下やうつ病などの精神疾患リスクの上昇なども指摘されているようです。

 現在のところ、慢性アトピー性皮膚炎に関連する潜在的な長期認知機能低下に関するエビデンスは充分とは言えない状況ではありますが、アトピー性皮膚炎における睡眠の質の低下が神経認知障害の関係性については、短期的な影響については明らかになっていることからすれば、さらなる知見の必要性があると言えそうです。

 冒頭にも述べましたように、様々なアレルギー症状は免疫システムの暴走から起こるとされています。

 また、免疫システムの多くが腸管内やそこに共生している、腸内細菌と言われる共生微生物と大きく関わっていることからすれば、免疫調整作用や睡眠の質の向上につながるプロバイオティクスを利用した腸内環境を整えるためのアプローチもスキンケアを中心とした医学的な治療と併せて取り入れることも必要なのかもしれません。







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Posted by toyohiko at 13:26│Comments(0)身体のしくみ
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