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2024年08月29日

睡眠力という考え方

睡眠力という考え方


 「もっと寝ていたいのに、目が早く覚めてしまう・・・」「眠りが浅く、何度も目が覚めてしまう・・・」というような経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。よく、「歳をとると目が覚めるのが早い・・・」というような話を耳にすることもありますが、このような傾向は加齢によって高まり、50代になると顕著になるということです。

 雨晴クリニック院長の坪田聡氏によれば、加齢によって脳の老化が進み、眠るための能力が低下してくると述べており、睡眠力という表現をしています。
 この睡眠力は、加齢によって低下します。50代になると急激に睡眠力が衰え、60代以上になると浅い眠りしかできない人も増えてくるとしています。

 そもそも、眠りには大きく2つの役割があるとされています。

 まずは、日中の活動で疲れた脳と身体を修復・再生することです。いってみれば、身体全体の定期メンテナンスになります。ヒトの場合、毎日のメンテナンスが必要な仕組みになっていますので、このメンテナンスを怠ったり、上手くいかなかったりすれば、疲労の回復、免疫機能や認知機能など様々な不具合が出てしまうということなのです。

 そのメンテナンスにおいて大きな役割をしているのが成長ホルモンだとされています。成長ホルモンというと、成長期の子どもに必要なホルモンと勘違いされがちですが、大人にとっても欠かせない重要なホルモンで、睡眠状態に入ってからの最初の深い眠りで最も大量に放出されることから、日々のメンテナンスをしっかりと行うには就寝後3~4時間の深い睡眠が重要ということになります。

 ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールと睡眠ホルモンのメラトニンとのバランスも大切で、コルチゾールは血圧や血糖値の上昇、代謝のアップ、免疫抑制などに作用し、朝に多く分泌されますが、睡眠のリズムが崩れるとうまく分泌できなくなります。

 また、メラトニンは、脳にある松果体が分泌しますが、老化でその機能が衰えてしまいます。睡眠サイクルを司る睡眠中枢も同様に働きが鈍るなど、さまざまな脳の老化現象が睡眠力を低下させてしまい、結果的に朝に起きられなかったりメンタル不調になったりすることがあるのです。

 厚生労働省では、「睡眠指針2014」を改訂し、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を策定することで、世界でも有数の睡眠不足である日本の状況に対する警鐘、啓蒙をしています。

 また、加齢による脳機能の低下が引き起こす睡眠力の低下だけでなく、様々な不具合の症状の一つとしての不眠の可能性も加齢によって高まってくることも意識しておく必要があります。

 その代表的な事例が、睡眠時無呼吸症候群です。この症状は、加齢による機能低下のみならず、肥満による上気道の閉塞など様々の要因によって現れてきます。

 大きないびきをよくかく、日中眠気や倦怠感に襲われることが多い、夜間トイレに起きることが多い、早朝、頭痛が起こり易い、というような症状や、高血圧で降圧剤を服用しているのに血圧が下がりにくいなどがある場合については、睡眠時無呼吸症候群の疑いも考え別のアプローチが必要であるという認識も必要です。

 また、女性ホルモンは上気道を広げる働きがありますが、閉経後は上気道を広げる働きが弱まり、睡眠時の無呼吸を起こしやすくなるとも言われています。

 更には、無呼吸の低酸素状態が脳にダメージを与えてしまうことで、認知症の発症につながる可能性を示唆するような研究結果がある事や、睡眠中も呼吸停止のために血圧が下がりにくいということもありますので、「眠れていない・・・」状況を放置することは、健康の維持増進に対して大きなリスクになるという認識は大切です。

 そのような中、睡眠の状況の改善に一番大切なことは、生活習慣や安定した就寝時間と起床時間などの睡眠習慣の改善が必須と言われています。そのためにも、自身の生活と癖を知ることからとされていることからしても、睡眠の改善には特効薬があるわけではなく、「朝食をしっかり摂る食習慣」をはじめとする、日常生活の見直しは不可欠なものになるのだと思います。

 アメリカのレスター・ブレスロー博士の「健康と寿命に関する研究」では、次の7つの健康習慣が健康的に長生きするのに必要としています。

 ・適正な睡眠をとる
 ・毎日朝食を食べる
 ・間食をしない
 ・週に数回、適度な運動をする
 ・適正な体重を保つ
 ・お酒を飲み過ぎない
  ・煙草を吸わない

 この7つの生活習慣は、「適正な睡眠をとること」と「良質な睡眠をとるための準備」と考えることも出来ます。

 つまり、良質な睡眠をとることが、健康と長寿に最も重要だということからすれば、このようなの健康習慣を心掛け、歳をとっても睡眠力の低下を招きにくいような習慣を睡眠力が落ちる50代になる前から取り入れることで健康の維持増進につながります。






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Posted by toyohiko at 16:35│Comments(0)身体のしくみ
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