2024年07月19日
プロバイオティクスと皮膚との関係を考える

かねてから、皮膚に対する症状と胃腸などの消化器系の症状との関連は、多くの関心を集めており、様々な研究もおこなわれています。
このような関係性は、ストレスによって便秘や下痢などの消化器系の症状になるケースがある場合や、湿疹や脱毛などの皮膚の症状が優位に出る場合があることからもうかがえると思います。
実際に、脳腸相関という言葉だけではなく、脳腸皮膚相関という言葉もあり、この三つの関係性に対しての大きなポイントになっていると考えられているのが、腸内細菌や皮膚常在菌などのヒトとの共生微生物群です。
そもそも、皮膚と消化管は、管の表面と内側のような構造で考えてみると解り易いのですが、外界と身体が直に接する故に、多様なバリア機能を必要としています。そのバリア機能として大きな働きをしているのが、皮膚や消化管内に存在する共生微生物ということになります。
近年の研究では、これらの共生微生物は宿主と言われるそれぞれの身体の恒常性や免疫機能を支える大きな役割をしている一方で、これらの微生物叢の状態によっては、マイナスの影響もあるということになります。
実際に、腸内細菌叢の乱れを起因とする皮膚疾患や他の炎症性疾患や自己免疫疾患の素因となる可能性についての指摘もあります。
そのような中、アトピー性皮膚炎は、最も一般的な慢性炎症性皮膚疾患として知られており、子どもの約2割に症状が見られ、成人に於いても約1割の方に症状が見られるとされている世界的にも増加傾向にある疾患のひとつです。
その要因については、衛生状態や母乳育児、居住条件、抗生物質の摂取、食事など様々であると言われている一方で、特にアトピー性疾患に対する遺伝的素因を持つ人々において、微生物叢への影響が、宿主の免疫系に影響を与える可能性があることも示唆されています。
そのような中、特定のプロバイオティクスが腸内細菌叢を調節することによって、アトピー性皮膚炎の症状を改善する可能性も出てきつつあります。
マウスによるLactobacillus paracasei KBL382株の経口投与によって症状を効果的に減少させた事例や、KBL382の投与により、アッカーマンシアの存在量が有意に増加したことなど研究事例も構築されつつあります。
このようなプロバイオティクスを用いた実験的研究では、サイトカイン産生を調節し、制御性T細胞集団を増加させ、腸内細菌叢を再形成する能力が示されており、アトピー性皮膚炎の症状緩和に有望であることが示されてますが、臨床試験における特定のプロバイオティクスの有効性については不確実性が残っており、プロバイオティクスの一貫した有効性と最適な使用を確立するためのさらなる研究の必要性が強調されているのが現状です。
しかしながら、このような知見の裏付けには脳腸皮膚相関という人間の基本的なバリア機能が、大きく関わっていることを意識しておくと良いかもしれません。
Posted by toyohiko at 14:00│Comments(0)
│身体のしくみ