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2024年07月04日

「酒は百薬の長」を考える

「酒は百薬の長」を考える


 アルコールの適度な摂取は血行を促進し、胃腸の動きを活発にしたり、消化酵素の分泌を促す働きを得られることで食欲増進効果がある故に食前酒という習慣があったり、免疫力向上にも良い効果があると言われてきました。

 また、「酒は百薬の長」というような言葉も古くから使われており、アルコールと社会生活との密接さも伺えます。

 そもそも、この言葉は中国古代の史書「漢書」から出た言葉と言われていますが、「適度な酒はどんな薬にも勝る効果がある」という意味とされています。この後「過ぎたるは百薬の長ならず」と続いており、お酒の功罪の「罪」の部分も表現しているとされているそうです。さらに、吉田兼好が、徒然草の中で「百薬の長とはいへど、よろずの病は酒よりこそ起れり」とアルコールに対する危険への指摘もあります。

 このように、過度な飲酒に対する危険性についての指摘は古くからありますが、国内でも従来は、「節度のある適度な飲酒」として目安が示されるだけだったのですが、「疾病のリスクを高める飲酒量」も含めたガイドラインが作成されました。

 さらに、今回のガイドライン作成の背景としては、2021年の調査で、コロナ禍でのテレワークによって、飲酒量が増えたという人の割合が40.3%と、減ったという人の15.2%と比較して非常に多かったこともあるとされています。

 今回作成されたガイドラインは、「基礎疾患等がない 20 歳以上の成人を中心に、飲酒による身体等への影響について、年齢・性別・体質等による違いや、飲酒による疾病・行動に関するリスクなどを分かりやすく伝え、その上で、考慮すべき飲酒量(純アルコール量)や配慮のある飲酒の仕方、飲酒の際に留意していただきたい事項(避けるべき飲酒等)を示すことにより、飲酒や飲酒後の行動の判断等に資することを目指すものとします。」と記されており、アルコールに関連した問題の理解・関心を高めて予防に役立てることを期待し、実際の摂取量と疾病のリスクなども具体的に提示されているのが特徴です。

 また、「お腹の健康」や、近年話題の「腸活」という視点からすれば、アルコールの飲み過ぎは腸内環境を悪化させる可能性があるとされています。

 米国国立衛生研究所(NIH)の研究によれば、アルコールを摂り過ぎると、腸内で毒性の強い細菌が増え、腸内フローラが悪化してしまうおそれがあるとの報告をしています。このことからも、アルコール摂取が腸内フローラを変化させ、腸内フローラそのもののアルコールの産生や分解に影響を及ぼすことで、腸内フローラのバランスが崩れアルコールの分解への影響が出る可能性もあるというのです。

 それだけではなく、大腸菌などの悪玉菌と呼ばれる有害菌の増加によって腸内で作られる毒素が増えたり、水分やナトリウムなどの電解質の腸から体への吸収が悪くなることで、水分と電解質の排出量の増加、更には、小腸の粘膜の働きが弱まり、十分な消化をできなくなったり、その影響も含めて、糖や脂肪の分解・吸収も低下し、下痢を起こしやすくなる可能性も否定できません。

 これらのような、腸内環境への影響はすぐさま疾病につながるということにはならないのかもしれませんが、「お腹の健康」という視点からしても、多くの疾病へのリスクは高まっていると言わざるを得ないと思います。

 かつて、「酒は百薬の長」と言われてきましたが、科学の進歩によって身体への様々な影響が解明されつつあるいま・・・この言葉を、「酒飲みの口実・・・」として使うのではなく生活に潤いを与えるためのより良い付き合い方にしていけると良いですね。






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