2024年10月18日
腸内環境は何故悪くなってしまうのか・・・?

腸内フローラという言葉が、あちらこちらで聞かれるようになり腸内細菌の重要性が注目されつつあります。
その理由の一つとして、ヒトは食べたものを全て消化・吸収できないためにそのお手伝いをしてもらっているからです。本来、消化・吸収できないものを共生微生物である様々な腸内細菌が消化吸収してくれるだけでなく、自身の健康の維持増進のために必要な成分をつくり出してくれるという役割をしていることが近年の研究で次第に明らかになってきました。
そのような中、解ってきたことが遺伝子レベルでは、2.2万個と言われているヒトの遺伝子の数に対して、腸内に存在する共生微生物の遺伝子の数を合計すると約2,000万個と千倍近い量があることからもヒトの健康維持に対して大きな影響を及ぼしていることが推察されるということです。
また、腸内環境と呼ばれる、様々な腸内細菌によって構成されるその状況は、ありとあらゆるきっかけによって変化するとされています。
まずは、食事の内容です。腸内細菌も生きていますので当然のように、栄養を摂取する必要があります。そして、善玉菌と呼ばれるグループと悪玉菌と呼ばれるグループでは摂取する栄養素は異なりますので、宿主であるヒトの食事の内容に大きく左右されます。
近年では、宿主である食の嗜好が腸内環境に影響を与えるのではなく、腸内環境と呼ばれる腸内細菌の構成によって食の嗜好が左右されるという話すらあるようです。
次は、加齢による影響です。よく知られているのは、善玉菌の代表選手であるビフィズス菌は授乳期をピークに加齢とともに低下していく事が知られています。
その他にも、腸内環境と呼ばれる腸内細菌同士の勢力争いは、あらゆる刺激によって変化すると言われています。
例えばストレスについても、それによって分泌されるホルモンや神経伝達物質などの相互作用によって腸内環境が変化することも解ってきています。
そのような中、食事、や精神的ストレスなどの生活習慣や加齢以上に大きな影響を与えるのが治療薬であることが、多くの研究によって明らかになりつつあるようです。
ある研究によれば、食事や運動などの生活習慣よりも3倍にも上る影響があるという結果もあります。
さらに、炎症性腸疾患、HIV感染、糖尿病、うつ病、慢性肝炎などの疾患による影響を越えるとすら言われ始めている様なのです。
東京大学大学院総合文化研究科の坪井貴司教授は、著書「腸と脳」の科学の中で、あらゆる治療薬がある中で、「消化器疾患治療薬、糖尿病治療薬、抗菌剤、抗血栓薬、循環器疾患治療薬、脳神経疾患治療薬、抗がん剤の順で、腸内マイクロバイオータの組成に影響を与えている・・・」と述べています。
そして、消化器疾患治療薬の中では、飲みすぎや食べすぎによって胃が痛いときに飲む胃薬やタンパク質の摂取が困難な場合に腸から投与する輸液、そして肝機能が低下して脂肪の吸収力が低下している時や胆石を溶解させるための胆汁促進剤の影響が高いことがわかってきたというのです。
さらに、多剤と呼ばれる複数の治療薬を処方されているケースについては更に大きな影響があるとしています。つまり、同時に投与された薬剤の数が増加すればするほど、酪酸や酢酸といった短鎖脂肪酸を産生する菌種が減少するというような報告があると同時に、投与する薬剤の数を減らすことで、腸内マイクロバイオータへの影響も減らし、腸内環境を改善できることも明らかになりつつあるようです。
腸内環境と言っても、なかなか可視化できるようなものではないと思う方も多いと思いますが、毎日の色や臭い、量や形を意識することで多くの情報が得られることを改めて理解しておく必要があると思います。
例えば、便の色は胆汁酸が腸内環境によって色が変わることで決まるリトマス試験紙のようなものだと言われており、酸性に傾くほど黄色みが強くなり、アルカリ性に傾くというほど茶色みが増し、黒褐色になるという性質があります。
「便は、身体のお便り・・・」というように、毎日同じ色や形の便が出てくることはありません・・・。
その時々のコンディションをつぶさに確認できる、大切な情報源であるという意識をもって、なるべく薬を飲まなくても済むような生活習慣の改善から始めることが健腸長寿に繋がるための一つになるのかもしれませんね。