2024年08月23日
プロバイオティクスの新たな可能性について考える

イギリスの微生物学者であるフラーによって提唱された、ヒトに有益な作用をもたらす微生物であるプロバイオティクスは、いまや多くの皆様方にとってなじみの深い存在になりつつあり、多くの食品やペットフードに至るまで様々なところで関連する商品を目にするようになっているのが現状です。
プロバイオティクスといっても、その健康効果については対象となる微生物によって様々です。
その中でも、もっとも一般的と言われているのが「お腹の健康」と言われる、腸内腐敗の抑制、腸管の蠕動運動の促進、通称悪玉菌と言われるヒトに対する有益でない微生物の抑制などの腸内環境の改善です。
その一方で、昔から馴染みの深いプロバイオティクスでもヒトに対する新たな健康効果が研究によって明らかにされるというケースもあります。
その代表的な事例が、ラクトバチルスパラカゼイ・シロタ株の健康効果です。
このプロバイオティクスについては、1930年の強化培養成功以来、生きたまま腸内に到達することで、良い菌を増やし悪い菌を減らして、腸内の環境を改善し、おなかの調子を整えるという効果があるということでしたが、研究が進むにつれて、ストレスの軽減、睡眠の質の向上というようなメンタルヘルスに関わるような領域についても健康効果が示されています。
この事例のように、新たなプロバイオティクスによって新たな健康効果が提供されるだけではなく、既に馴染みのあるプロバイオティクスに於いても新たなる研究成果として、従来とは異なる領域で健康効果が認められることがあるということです。
先ほど紹介させていただきました、ラクトバチルスパラカゼイ・シロタ株については、さらなる研究領域として、NK 細胞活性の維持やIgAの維持などの免疫システムに影響を及ぼすことや、上気道感染症の症状の軽減に有効であることが、既に研究で明らかになっています。 しかしながら、臨床段階において、当該プロバイオティクスの摂取が、免疫実行細胞に指示するマネジメント細胞 (単球やマクロファージ、樹状細胞など) に及ぼす影響やその機序については未解明の部分があるという段階のようです。
そのような中、健常な日本人男性オフィスワーカーを対象とし、ラクトバチルスパラカゼイ・シロタ株を1000億個以上含む乳酸菌飲料を使用した無作為化二重盲検比較試験を用いて、採取したヒト末梢血単核細胞 (PBMCs) に含まれる免疫マネジメント細胞に及ぼす影響を解析するという研究も行われています。
この研究において、宿主の自然免疫系と獲得免疫系に影響を与える可能性が示されており、宿主の全身の免疫機構に働きかけて、健常人の健康維持に寄与すると考えられており、今後、宿主の体調との関係性について検討を進めていくというような事例もあるようです。
このように、プロバイオティクスと言われる微生物に関わる分野においては、様々な研究が進むにつれて、私たちにとって欠かせない共生微生物としての役割が解明されるとともに一人でも多くの人たちの健康に寄与する可能性も更に大きくなりつつあるのです。