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2017年12月16日

モチベーションとアンガーマネジメント(Ⅱ)

モチベーションとアンガーマネジメント(Ⅱ)


 個人や組織にとって、「やる気」を引き出すことは大変重要な事だということは多くの人が理解していることだと思いますが、前回の様に、ルールや規律、更にはインセンティブなどの今まで良いとされてきたものが、実は、「しかっりと裏付けとのある効果としては、みとられない・・・」というような結果が示されたということは、ある意味大きな衝撃なのだと思います。

 というのは、多くの場面で、「しっかりやりなさい・・・」「出来たら、ご褒美・・・」というフレーズは、日常生活の中で良く耳にすると同時に、自分自身でも、つい口にしてしまう言葉だからだと思います。

 その一方で、その言葉によって相手が思った良方向に中々いかない・・・という違和感や、ジレンマを感じる方も少なくないと思います。

 ニューヨーク大学の心理学者であるシベリー・レイバー氏が開発した、教員向けの能力開発プログラムが注目されているそうです。このプログラムは、日々教室で過ごす、教師・子ども双方にとってストレスを少ないものになることを狙いとして作成されています。

 つまり、子どもと同じくらいに、教師の側の「こころの健康」に気を配ることで大きな成果を導くことが出来るというのです。

 レイバー氏は、このアプローチを「双方向の自制モデル」と呼んでいるそうで、幼い頃有害なストレスを受けることで、非認知能力が充分に身につかなく自制能力が発達しなかった子どもたちは、教室で何かを要求されたりすると、感情をあらわにするか、粗野なふるまいをすることが多いそうです。

 その時に、教師自身が、ストレス反応をうまく抑えきれない子どもの爆発に対処することがうまくできないことで、「対立」をエスカレートさせてしまうことが多くみられるそうで、それが、子どもの「爆発」を激化させてしまいます。

 その結果、教室は敵意と怒りに満ちた場所になり、子どもは「脅かされていると感じ」、教師は、「ストレスで燃え尽きる」という構造になってしまいます。
 そうなってしまうと、その教室では「行儀良くふるまう・・・」こと事態が最大の課題になってしまい教室で行われるべき本来の目的とは程遠いものになってしまうのです。

 とはいってもどうすれば、良いのか・・・、ということになると思いますが、子どもと接する基本的なスキルの習得というものはあるものの、基本的には、世話をする子どもに気持ちを集中し、子どもが動揺したり、小さな対立が起きそうになったときに、「気を逸らす」か、あるいは「抱きしめる」ことが出来るように待ち構えている環境をつくっているというのです。

 もちろん、清潔で明るく、整理整頓された環境であるというようなことも教師や保育者の側の子どもに集中できる体制づくりのためには必要不可欠なことです。

 レイバーのこのプログラムをランダムに行った比較試験によりますと、プログラムを実施した教室では、高い注意力や自制能力の改善のみならず、語彙が増えることや計算の能力などの認知能力にまで良い結果が得られたというのです。
 このことは、対立や不調和に気を散らされることなく、目の前の事に集中できる事になったということの成果であると考えられています。

 ストレスや対人関係の調和、プライベートでの看護や介護など様々な問題を「個」が背負わなければならない時代では、お互いに知り得ない環境下でのストレスリリースが、暴力的な行為や言動につながるリスクは増えていると言わざるを得ません。

 レイバーのプログラムは、幼児期に向けてのプログラムではありましたが、乳幼児期はもちろんのこと大人、他人同士や親子などあらゆる人間関係に於いて、「どちらかが、我慢する」のではなく、「お互いが、穏やかでいられる」ためのスキルを身につけることは、これから非常に重要になってくるのかもしれません。




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Posted by toyohiko at 11:26│Comments(0)社会を考える
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