2017年12月22日
プロバイオティクスと脳腸相関

「脳腸相関」という言葉は、まだまだ馴染みのないい方も多いと思いますが、腸の機能として消化吸収だけでなく、内分泌系や免疫系にも深くかかわっている事は古くから知られていました。
人間の身体は、「脳が、末梢臓器まで支配している」という概念は多くの研究者にとって主流でありその考え方を覆すような概念は中々定着しなかったという現状もあったようです。
そもそも、「脳腸相関」の概念は1880年代にアメリカの心理学者ウィリアム・ジェームスとデンマークの心理学者カール・ランゲによって提唱されたのですが中心的な概念としては指示されずにきました。
これは、彼らが心理学者であったことも関係があったのかもしれませんが、近年では過敏性腸症候群(IBS)などの機能性消化管疾患の研究などを通して、「脳腸相関」の概念無くして説明がつかない症例が増えてきたこともあり、次第に認知されつつある概念です。
「腸は第二の脳」などというフレーズも、腸が独自の神経系を持ち、更にはその腸管神経が脳と連携し合っていることが良く分かったきたという背景の表れなのかもしれません。
更に近年では「脳腸相関」から「腸内細菌-腸-脳相関」という更に新しい概念が注目されるようになりました。
すでに、マウスなどの実験レベルでは無菌マウスの高いストレス反応に対して、正常なマウスの腸内フローラを移植することで正常レベルに近づくことや逆に正常なマウスに悪玉菌と言われる種類の菌株を腸内に感染させることによって不安行動が増加することなどが明らかになっています。
更に、ヤクルト中央研究所で行われた実験では、L.カゼイ・シロタ株(YIT9029)を自律神経系の中の交感神経への影響をラットの実験で調べたところ、ストレスへの影響受ける内分泌系の興奮と交感神経の亢進の両方が緩和される可能性が示されました。
ここで、興味深いのは投与したL.カゼイ・シロタ株(YIT9029)の菌濃度とこの作用に優位な相関関係があったということです。このことは、健康維持のためにプロバイオティクスを摂取利用するときに、意識するべき視点としてこれから更に注目されることになると思います。
現在、注目を集め始めている「脳腸相関」は、プロバイオティクスと言われるような「良い菌」を高濃度の状態で定期的に摂取することで、脳にも直接的もしくは間接的に脳に作用しているという可能性が示されてきています。
この研究を行った、ヤクルト中央研究所の河合光久主任研究員は「このような、「腸内細菌-腸-脳相関」の関係性に於いてプロバイオティクスが薬のように一つの症状を軽減するということではなく、身体全体の恒常性を維持することで、結果的に多彩な作用を示すのでは・・・。」としてます。
今回の、L.カゼイ・シロタ株(YIT9029)をプロバイオティクスとして利用した実験では、腸内細菌が脳腸相関を介して脳に刺激を与えることで、全身の恒常性を調節することにより身体が本来持っている「自然治癒力」や、恒常性が崩れたときの「回復力(レジリエンス)」を高め、健康維持につながるという新たな可能性が示されたのだと思います。
まさに、「健腸長寿」ですね。
Posted by toyohiko at 12:09│Comments(0)
│身体のしくみ