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2018年01月07日

「腸内フローラ」だけじゃない身体中で存在している「微生物との共生」

「腸内フローラ」だけじゃない身体中で存在している「微生物との共生」


 腸内フローラという言葉は、ここ数年多くの場面で聞かれるようになったので馴染みの方も多くなってきていると思いますが、小腸や大腸を中心とした消化管における微生物群のことです。

 十数年前までは、100種類100兆個といわれていたこの腸内フローラの数というものが、今では種類についていえば数100種類といわれるようになり、文献によっては数千種類というような表現になってきています。

 これは、新たな研究によって新しい種類の微生物が見つかったということもありますが、それだけでなく、今まで同じものだと思われていた微生物が、機能や役割などを詳しく調べることができるようになったために、しっかりとした分類ができるようになったということも同時にあったと考えられています。

 これは、環境中にある土壌中の微生物も同じなのですが、複数の仲の良い仲間が集まることによって「ある性質が出てくる・・・」というような現象が良く見られるそうで、微生物を一つ一つ切り離して考えることが難しいということもあるのです。

 近年の微生物の研究では、DNAレベルでのゲノム解析の技術が急速に進化したことで、今まで解らなかったことが、とらえることができるようになったことは、微生物の研究分野において大きな成果の一つと言えると思います。

 これらの様々な成果によって、人間の身体と微生物の関係において「今まで、常識だと思われてきたことが、どうも違っていたらしい・・・」というようなもの事象も出てきているのです。

 いわば、「ガリレオの世界」の様なものなのかもしれません。

 たとえば、多くの微生物の研究者の間で言われていました、「新生児は無菌状態で生まれてくる・・・」ということについても、近年、胎児の胎盤や羊水から微生物が検出される等事例が報告されるようになってきており、今までの定説について再検証が必要になってきています。

 また、母乳についても同じです。数年前、母乳からビフィズス菌が検出されたという事例について、「母乳中にあるはずがない・・・」という前提で、皮膚への付着から母乳中に入ったという経路を考えていた様な事が多かったのですが、近年の事例では、どうやら、「母乳中にも特定の微生物が存在するらしい・・・」という説の方が有力になってきています。

 以前から、口腔内や鼻腔、女性の膣内などの粘膜質のところには微生物が共生していることが良く知られています。とくに、臨月期の母体の膣内ではビフィズス菌などの有用菌が急激に多くなり、これが出産時の子どもへの有用菌の伝搬につながっているということは「母子垂直伝搬」として学問的にも確立しつつあります。

 さらに、皮膚上にも皮膚常在菌叢と呼ばれる微生物群が皮膚を守っていることは、古くから解ってはいるものの、まだまだ「清潔のために除菌する・・・」という考え方が主流になっていることとあいまって、「皮膚常在菌叢を正常に保つため・・・」というような具体的なアプローチに関してはこれからという感じです。

 これらのように、今まで存在しないと思っていたところに微生物が存在したり、ひょっとすると「今まで、人人体に悪い影響を与えると思われていた微生物が、その一方でなくてはならない働きをしていたり・・・」というようなことが、明らかになってくる時代がそこまで来ているような気がします。

 これからの、微生物を取り巻く研究は、これからますます目が離せなくなりますね。



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Posted by toyohiko at 07:56│Comments(0)身体のしくみ
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