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2018年01月27日

ヒトの遺伝子と腸内フローラ

ヒトの遺伝子と腸内フローラ


 ヒトのゲノム解析が成功し、人類の今後の様々な発展に大きな希望がもたらされましたが、その一方で、思いもよらない結果として受け止めなければならない結果でもあったといわれています。
 
 その結果とは、ヒトの生命活動の基本となる遺伝子が2万数千個であったということです。

 この結果の出る前には、多くの研究者の間で予想されていたヒトの遺伝子の数は、約10万個くらいであろうと言われていました。その理由としては、「他の小動物の遺伝子数から推察すると人体の精密さなどを考えても、このくらいであろう・・・」というものだったというのです。

 以前から、線虫やミジンコなどの遺伝子数は解明されており、線虫が2万500程度、ミジンコが3万1000個程度、ショウジョウバエが1万3000個といわれていましたので、「ヒトの遺伝子数が、ミジンコより少ない・・・」ということへの衝撃はかなり大きなものだったと考えられます。

 その中の、約200個は細菌由来のものであると推察されているというこのでもありますので、ヒトと共生している腸内細菌についても同様に考えてみますと、ヒトの常在菌は、数千種と言われています。重量に関しても以前は、数100グラムと言われていましたが、現在は数キログラムもあり、肝臓や腎臓の重量に匹敵する位だと言われています。

 数についても、100兆個と言われており、人体の細胞の数を上回っているだけでなく、遺伝子数においては、約300万個と言われています。
 遺伝子数からすれば、宿主である人体の100倍以上の遺伝子数を持つ腸内細菌がどのように影響を及ぼしているのかという点では、「無視できない状況」としても関心事になりつつあります。

 よく、「遺伝子は、1億年以上前の生命体の環境を反映しようとする・・・」という議論がなされます。とくに、「何故、動物は脂肪を蓄えようとするのか・・・」という理由の答えの一つとして言われているので、ご存知の方もおられると思います。

 こうして考えた場合に、腸内フローラには3回の大きな転機があったと考えられています。

 まず、1回目は、人類が火を使うようになりタンパク質の消化吸収の効率を劇的に変えた時、2回目は、農耕文化が始まり、穀物の摂取の割合が増加してきた時です。
 
 つまり、この仮説が正しいとすれが、現代人の腸内フローラは「農耕仕様」ということが言えるのかもしれません、「腸内細菌のエサには食物繊維を・・・」ということもその仮説からも理解できるような気がします。

 この2回の変化は、数100年もしくは数千年かけての変遷であったと思われれるので、宿主もある程度対応できたのですが、3回目の変化は、あまりにも劇的すぎで宿主である人体に様々なマイナスの影響が出ている「変化」です。

 その3回目の変化が、抗生物質とはじめとする細菌そのものを抑制する薬剤や、今まで自然界になかった化学合成物質の消化管への侵入です。

 この変化は、Martin J.Blaser教授らが警鐘を鳴らすように、腸内フローラにとって劇的であり、存続そのものに関わるのかもしれません。

 このような、仮説はある意味「大胆すぎる仮説」なのかもしれませんが、

 人体の細胞の数と腸内フローラの菌数、それぞれの遺伝子数の関係を考えた場合には、「見過ごせない関係」とだけは言えるのではないのでしょうか。



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Posted by toyohiko at 09:43│Comments(0)身体のしくみ
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