2018年02月17日
「アレルギーは、食べて慣らす」を考える

春先になると、憂うつになる方も多いかと思いますが、その多くの方がスギ花粉を中心とした花粉症によってQOLが下がってしまうことなどが多くの原因かと思います。
このアレルギーですが、近年では花粉症だけでなく食物アレルギーの症状で悩んでいかたも多くなってきています。
このアレルギーに対して様々な対処法があるのはご存知かと思いますが、ここ数年注目されているのが、「経口免疫療法」という方法です。
アレルギーのメカニズムは、本来異物を排除するための免疫システムがうまく機能しないために自身の身体を攻撃してしまい「炎症」という症状が出てしまうことです。
アレルギーに悩む人がいる一方で、多くの人が色々な食べ物を食べても平気なのは、「消化」というシステムが大きく関係しているといわれています。
つまり、食物アレルギーの原因物質であるアレルゲンは、ある程度の大きさをもったタンパク質である場合が多く、消化によって分解されることによってアミノ酸になってしまえば、アレルゲンであるタンパク質分子が少なくなり、免疫システムから攻撃されにくくなるのです。
そのため、アレルギーの原因物質は様々ですが、一般的には「加熱されても性質が変化しにくく、胃酸や胆汁酸などの消化酵素にも強い食品がなりやすいと言われています。
アレルギーの原因は、原因物質が「異物でない」という免疫寛容が働かずに、異物とみなしその異物を抗原としたIgE抗体を作ってしまうことにあります。
この「異物」の侵入経路は、実は様々で口から食物として入るだけでなく、軌道に入ってしまう「経気道感作」や、アトピーなどの皮膚炎のなどで皮膚の表面がガサガサしていることで皮膚からアレルゲンが入ってしまう「経皮感作」などがあります。
ここで問題になるのが、アレルゲンそのものが、最初に口から入って腸まで到達するという順序が崩れてしまうと制御性のT細胞という免疫細胞ができないために免疫寛容の仕組みができないことにあります。
このために、初めて食べたはずなのに、経皮や経気道で侵入したことによってつくられたIgE抗体がアレルゲンを攻撃してしまうという状況が起きてしまうのでは・・・といわれています。
最近、アレルギー予防のために、母親がアレルゲンとなるものを食べないようにするとか、離乳食の時期を遅らせるようなことをする方もいるようですが、近年の研究では、そのような行為は食物アレルギーの予防効果はあまりなく、むしろ適切な時期に食べさせた方が予防効果が高い様です。
最近までは、アレルゲンを完全排除することで、症状を抑えるという対処療法が主流でしたが、近年では色々な形で少しずつアレルゲンを経口で取り入れることでそのアレルゲンに対して免疫寛容の仕組みを作る方法が考えられています。
先ほども言いましたように、アレルゲンの量には「消化」というタンパク質そのものの量を減らすことが大きく関わっていることも事実です。
その証拠に、調理方法によって、炎症などのアレルギー症状が発症しないケースもあります。たとえば、「オムレツはダメだが、堅茹で卵ならOK・・・」という人の場合は、調理中の熱のかけ方によってタンパク質の変形度合いが異なるために、アレルゲンそのものの量が違っているためと考えられているのです。
つまり、ケースによっては「アレルゲンそのものが全く入ってはダメ・・・」なのではなく、量によって発症するということも言えそう・・・ということです。
この「少量・・・」をうまくコントロールすることで、免疫システムをうまく使って免疫寛容を働かせようというのが、経口免疫療法とされるものです。
とはいえ、まだまだ研究段階であり治療法も確立されていないのが現状のようです。2017年にも、この治療を行った子どもに呼吸器の重い症状がでて、脳に障害が残るケースも報告されていますし、続けていた経口免疫療法をやめることで、いったん食べられていた物が再び食べられなくなるケースも少なくない・・・というのも現実です。
アレルギーという日常生活のQOLに大きく関わる症状のメカニズムを良く理解することで、「普段の生活で、気をつけること・・・」のヒントになるのかもしれませんね。