2018年03月17日
身体の中の脂肪の役割を改めて考える

「脂肪」という言葉の響きについては非常にネガティブな印象が強い方も多いと思いますが、その一方で、「タンパク質・脂肪・炭水化物」と昔から三大栄養素の一つとされ、「身体にとって、重要なもの・・・」という位置づけであるということも昔から云われています。
慶應大学薬学部代謝生理化学講座の有田誠教授によりますと、「脂質に関しては、あいまいな情報が多い・・・、その理由として、疎水性(水になじみにくい)性質のために、ゲノムレベルの解析が難しいことにある。・・・」と述べています。
しかし、有田教授によりますと脂質と呼ばれるものは10万種を超えると言われており、更に構造的にも多様性が高く、解析するのが難しく、どの脂質がどのように機能しているのかわからない事が非常に多いため、エネルギー源としての側面で捉えられがちになったために、「量」のみが注目されがちになってしまったということのようなのです。
脂質には大きく分けて3つの機能があると言われています。
まず第1番目としては、多くの人がイメージするのと同じように「エネルギー源」としての機能です。そのイメージゆえ、悪者にされがちですが、脂質の仲間であるトリグリセリドが高い方が長寿であるというような論文も出ており、一概に言えないところも出てきていますが、生存競争に勝ち残るためのエネルギー蓄積技術の一つであることは事実と言えます。
2番目は、生体膜の構成成分としての機能です。「生体膜」といきなり言われてもイメージしにくいかもしれませんが、細胞全体を覆っている細胞膜や、臓器などの身体の中のあらゆる機能の境界に存在する膜状のもの・・・と考えると少しわかりやすいかもしれません。
つまり、この膜の組成に影響が出ることで「膜」自身の硬さや、弾力と呼ばれるものに影響を及ぼすことになります。
最後に、シグナルとしての機能です。炎症の制御や熱や痛みを抑えるための機能と大きく関わっているというのです。
例えば、鎮痛剤でよく知られるアスピリンという薬があります。このアスピリンは、アラキドン酸という脂肪酸が代謝する時に必要なシクロオキシナーゼという酵素の役割を阻害することで、解熱や鎮痛の作用をしています。
脂肪酸の代謝を止めることが、熱や痛みを抑えるということは、身体の恒常的な機能を維持するということに対して、脂肪酸の代謝が深くかかわっている事を示唆しているということにもなるのです。
こうして考えると、今まで私たちは、「脂肪」のある側面しか見てなかったということが言えるのかもしれません。
何故、「三大栄養素」・・・と言われたのか、エネルギー源として以外の機能面で脂肪というものを見る必要があるのかもしれません。
Posted by toyohiko at 11:38│Comments(0)
│身体のしくみ