2018年03月31日
脂肪と腸内細菌の関係を考える

近年、「やせ菌」とか「デブ菌」という名前を聞いたことのある方もいると思いますが、「どうやら、腸内細菌と脂肪や体重の増減と関係性がありそう・・・」という話題もちょくちょく聞かれるようになってきました。
「やせる」というキーワードは多くの人たちの関心事として、「何をどうすれば、結果につながるのか・・・」という興味の的にもなっていると思います。
そのようなか、そのメカニズムも少しずつ解明されつつあるあるようです。
そもそも、肥満と腸内細菌の相関関係はについては、2006年にアメリカのジェフリー・ゴードン博士が明らかにしたとされ、 そのメカニズムに関しては、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が大きく関係しているということが分かってきました。
短鎖脂肪酸というのは、炭素が鎖のようにつながった構造をしており、油脂を構成する成分の中でも炭素の数が6個以下のものを指し、酢酸、酪酸、プロビオン酸などになります。この短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維などを分解することによって腸内に存在することが分かっています。
東京農工大学大学院農学研究院応用生命科学専攻代謝機能制御学研究室の木村郁夫准教授によりますと、腸内細菌由来の短鎖脂肪酸は、水溶性のために直接肝臓に移行し、そこで、様々な受容体と呼ばれる物質を刺激し、末梢神経から中枢神経にシグナルが行くことで脳から腸管神経を通じて腸管の糖代謝を制御しているという報告もあります。
また、同じように腸管内の短鎖脂肪酸がすい臓のβ細胞という細胞にある受容体に作用することでインスリンの分泌も制御しているとの報告もあり、脂質の一つである短鎖脂肪酸が全身のえれる技―消費を促しているというメカニズムも次第に解明されつつあります。
更に、短鎖脂肪酸の作用は、脳腸相関によって脳内視床下部の摂食中枢を刺激することで、食欲を抑制するなどの報告もあるようです。
この短鎖脂肪酸の受容体としては、GPR41やGPR43というものが現在わかっているのですが、腸内細菌由来のものだけでなく、食物由来のものもあります。具体的には、酢やチーズ、バターといった発酵食品ということになりますので、いずれにしても微生物由来であることについては違いがなさそうです。
そのほかにも、HYA(機能性脂肪酸10-ヒドロキシ-シス-12-オクタデセン酸)という腸内細菌による代謝脂肪酸が、腸の炎症抑制や肝臓への脂肪蓄積抑制、腸管バリア機能などを重要な役割を示している事もわかりつつあるようです。
これらの事を考えると、腸内細菌と始めとする微生物の代謝物である、酢酸や酪酸、プロビオン酸等の短鎖脂肪酸が身体の様々な神経ネットワーク通じて、あらゆる機能に関わっていると同時に、健康に欠かせない「微生物との共生関係」によって支えられているということが云えそうです。
Posted by toyohiko at 15:13│Comments(0)
│身体のしくみ