2018年05月12日
腸内フローラによる腸管バリア機能の強化と糖尿病

日本人におけるⅡ型糖尿病というのは、すい臓が分泌するインスリンの作用する臓器の慢性炎症が問題になっており、この炎症があらゆる合併症を誘発する原因になっています。
最近の研究では、特に腸管内の炎症により腸管から周りの血管を通じて一部の腸内細菌が血液中に移行し、その細菌が周辺の臓器などの慢性炎症を引き起こしている可能性が解ってきています。これは、日本人におけるⅡ型糖尿病患者の場合腸内フローラのバランスの乱れによって腸管のバリア機能が低下してることによって起きていると言われていいます。
順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学の金澤昭雄 准教授、佐藤淳子 准教授、 綿田裕孝 教授、プロバイオティクス研究講座の山城雄一郎 特任教授らの研究グループでは、年齢30~79歳、 HbA1c 6%以上8%未満の食事・運動療法もしくは、薬物療法で加療中の2型糖尿病患者70名を対象にL.カゼイ・シロタ株が400億入ったプロバイオティクス飲料を継続摂取する群と非摂取群とに無作為に分け、16週間の経過観察するという実験を行いました。
この実験は、ラクトバチルス カゼイ、ラクトバチルス ガセリ、ラクトバチルス ロイテリ等の腸内細菌が、腸管の上皮細胞間接着を強化させる作用があることが分かっているので、これらの腸内細菌を経口投与することで、腸管バリア機能の変化によって血中への腸内細菌の移行の変化にどのようにつながっているかを確認することを目的にしています。
特に腸管バリア機能の低下は、腸漏れ症候群(リーキーガット症候群)は、腸内細菌だけでなく、毒素、さらには食べ物そのものが、腸管から体内に侵入してしまう現象です。
その影響によって、「起きる炎症や毒素事態の影響が脳に及んでしまうのでは・・・、」と考えられています。脳については、血液脳関門というブロック機能がありますが、炎症性の物質が増加することによって血液脳関門が壊れてしまうことと大きな関係があり、脳腸相関もふくめこれらのメカニズムは大きな注目を集めているのです。
プロバイオティクス飲料の継続飲用実験では、飲用群と非飲用群とではいわゆる善玉菌の菌数の有意な増加が認められただけでなく、16週間の結果において血中の細菌数が、非飲用群が6個/mlであったのに対して、1.8個/mlと有意な減少を示すという結果が得られました。このことは、腸内フローラが整うことで腸管バリア機能が強化されたということを明確に示すことともつながりそうです。
腸管から血管への栄養分や様々な物質の移動については、まだまだ未解明のところも多いとされています。とりわけ、腸内細菌を始めとする微生物やウィルスなどの移動が腸管バリア機能や慢性の炎症疾患と大きな関わりがあるとするのであれば、今後のこの分野の研究に大きな期待がかかりそうな気がします。
Posted by toyohiko at 13:30│Comments(0)
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