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2018年05月26日

炎症という視点で身体を考える

炎症という視点で身体を考える


 「炎症」という言葉は、あまり馴染みのない方もいるかと思いますが、基本的には免疫系のシステムが外界からの侵入者に対して反応する生体防御機能の一つです。

 具体的には、発赤(発疹など)、発熱、腫張(腫れやむくみ)、疼痛などが挙げられています。この考えは古代ローマ時代にセルサスという医師が炎症反応に対して挙げており、「炎症」という考え方そのものは非常に古い歴史があるのです。
 その後、ガレンという医師が、組織の機能不全を追加して、この5つを「炎症の5徴候」として現在もその考え方がベースになっていると言われています。
 
 炎症といっても、「発熱」の様に自覚できる様な形でおこる炎症を「急性炎症」と、病原体にたいして、免疫反応がうまくいかないことによって、はっきりと自覚できないような症状が持続的に起きてしまうような「慢性炎症」との二つに分類されると言われています。

 「炎症」と言いますとネガティブな印象になる方が多いと思いますが、自然治癒における過程の一つになりますので、急性炎症のほとんどは、身体にとって良い反応と言われています。
 その一方で、「慢性炎症」については、生活習慣病をはじめ様々な疾病のきっかけになってしまう場合が多いために注意が必要だと考えられています。

 九州大学大学院医学研究院病態制御内科学の小川佳宏教授によりますと、炎症のメカニズムについて、病原体そのものが自然免疫系のセンサーに直接作用すると考えられていましたが、その後の研究で細胞が病原体によってストレスがかかると内因性リカンドと呼ばれる細胞を構成する成分を通じて免疫系のセンサーに作用することが分かってきました。

 ここで、ポイントとなるのは、炎症のメカニズムそのものが病原体そのものがトリガーになっているのではなく、病原体が引き起こす、それぞれの細胞に対するストレスによって起こるということです。

 言い換えると、同じストレスでも反応が異なる可能性があるということです。つまり、同じ要因であっても、「炎症」という免疫反応がそれぞれ異なって発現するために、言ってみれば「つかみどころがない・・・」という症状となってしまうことなのです。
 いわゆる、アレルギーに対する対応の難しさもこのような炎症反応のメカニズムによるものなのかも知れません。
 
 本来、炎症は、何らかの理由で細胞が傷ついたときに起きますのでその細胞が除去されたり、置換されたりし何事もなかったように収束していくものなのですが、状態によっては炎症が終息せずにくすぶっている様な状態が続いてしまうというようなことが起きてしまうのです。

 この状態が、慢性炎症という状態です。

 そのために、炎症を収束させるためのやり取りがずっと続くことになります。「正常な状態になる前に細胞の再生が間に合わない・・・」ということになりますので、このような状況が臓器内で起きてしまうと機能不全となります。肝臓でいえば肝硬変、腎臓でいえば腎不全ということにつながってしまうのです。

 その中でも、最近注目され始めているのが脂肪細胞の慢性炎症です。肥満の多くはこの脂肪細胞の慢性炎症が関わっている可能性を指摘する研究者も多くなってきたようです。

 炎症のメカニズムの振り返ってみますと、炎症そのものは免疫反応であることと、炎症反応を直接的に引き起こすトリガーが細胞のストレスということになりますので、化学物質などの物質的ストレスについても慢性炎症に対して大きな関わりがあるのでは・・・という関心持っている人たちもいます。

 実際に、幼少期のマウスに低濃度の抗生物質を長期間投与することで肥満につながるということが明らかになっています。

 がんも含めた多くの疾患に「炎症」というメカニズムが関わっているといわれています。しかも、慢性炎症による見えない身体へのダメージも大きいといわれていますので、物質的にも精神的にもストレスのない生活を心がけて正常な免疫反応が出来るような身体づくりを心がけることも大切ですね。




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Posted by toyohiko at 16:10│Comments(0)身体のしくみ
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