2018年09月22日
口の中の細菌叢-口腔内フローラと健康の関係を考える

腸内フローラという言葉は多くの方に認知されるようになってきましたが、消化器官の一つである口腔内にも同じように様々な微生物がお互いに関係しあって、人間(宿主)の健康に大きな関わりを持っているということはご存知でしょうか。
腸内に常在する微生物の数は数100種類、数100兆個と言われていますが、口の中にも同様に多くの微生物がいると言われています。口腔内で検出された微生物は800種以上、一人当たりの菌種数では100~200種程度と言われており、菌の数についても10の8~10乗位とされています。
九州大学大学院歯学研究院口腔保健推進学講座の竹下徹准教授によりますと、腸内フローラと異なり、口腔内の微生物のほとんどは日和見菌だと考えられており、虫歯や歯周病の原因菌と言われる、ミュータンス菌やジンジバリス菌が居るからといって必ずしも発症するというわけではないそうです。
虫歯の原因菌とされるミュータンス菌についても、ミュータンス菌を保有していない人でも、虫歯になることがあるということのようなので、腸内細菌と同じように数100種類の口腔内菌叢のバランスが重要なのでは・・・と考えられているようです。
そのような中、多くの人が考えるのが、口の中の何処にそんなにたくさんの微生物がいるんだろう・・・という疑問です。
竹下准教授によりますと、唾液には、口腔内の様々な所から剥がれおちた細菌が含まれているそうで、1日当たり1L以上と言われています。その唾液に含まれる細菌の大半が「舌」に由来するということからすると舌のなかに多くの細菌が存在するということになりそうです。
また、唾液の中に多くの細菌が含まれているということであれば、高齢者などに起こりやすい誤嚥などのよって、肺に細菌が入りやすくなり誤嚥性肺炎等を引き起こしやすいとい現実もありますので、口腔内の細菌叢をより良い状態に保つことも大切なことになると言われています。
口腔内菌叢のバランスについて1961年から現在に至るまで続いている「久山町研究」と呼ばれる疫学調査があります。前出の竹下准教授らも1998年から参加し、様々な考察が行われています。
その中でも、興味深い研究結果がありますので紹介します。
口腔内の優勢な常在菌種は、2つのパターンに分類することができるそうです。その中の一つのパターンにおいて死亡率も高いことが分かってきたそうです。
さらに2つのパターンの菌数のバランスの変化が加齢と大きく相関があると同時に、様々な統計解析から、「加齢」以外にも「う触経験歯(虫歯の治療などで金属の詰め物やかぶせ物が何本あるか)」「肥満」「現在喫煙」の4つの因子が死亡率の高い口腔内菌叢のバランスになりやすい因子として示されています。
「たかが歯・・・」と思っているかたもいるかもしれませんが、口腔内にいる微生物が身体全体の健康に対して大きな影響をあえているということなのです。
少なくとも、口腔内での最も多い虫歯や歯周病の原因菌を少なくすることは、すぐにでも出来ることは口の中の細菌群集である歯垢やバイオフィルムを除去することです。
もちろん、丁寧なブラッシングが有効な手立ての一つにはなりますが、前出の竹下准教授によりますと「1回のブラッシングには15分は必要・・・」ということなので、なかなか続かないのが現実なのかもしれません。
ただ、歯磨き剤の中には、虫歯や歯周病の原因菌が歯にくっつき易い性質があることを利用し、歯の成分であるハイドロキシアパタイトをナノレベルで微細粒子化することで、より効果的に口腔内菌叢を整えるものもありますのでそのようなものを利用するのも良いかもしれません。
Posted by toyohiko at 15:25│Comments(0)
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