2018年09月29日
あらためて「匂い」の仕組みを考える

「匂い」というものは、日頃生活をしていて以外に気になるものです。また、「気にするほどのことではないんだけど・・・」ということが、続いてしまうのは日常生活を送っていくためにはダメージとして感じている方も意外に多いのではないのでしょうか。
「匂い」については、不快感を感じたり香料に含まれる成分が原因で化学物質過敏症を引き起こす人がいるなど、「香害」や「スメルハラスメント」を呼ばれるような状況に近年はなってきています。
そのような問題を引き起こす、原因の一つとして考えられるのが、匂いの成分そのものでは無く、「匂いに関しての感じ方が、個々によって差がある・・・」ということなのではと思います。
ネガティブなイメージの代表格である「加齢臭」に関していえば、加齢臭の主成分はノネナールという成分で男女問わず40歳を過ぎたころから増え始め、60代から顕著になると言われています。
この匂いについても、「臭い・・・」という反応と「おばあちゃんの着物の匂いがする・・・」など、好き嫌いがはっきりするということがあるそうです。更に興味深いのは、この結果と高齢者との接する機会の多さと強い相関関係があったということです。
東北大学大学院の坂井信之教授によりますと、人間が生まれつき嫌だと感じる匂いというものはごく少数しかないのだそうです。
例えば、食物や死体の腐敗臭です。これは、「腐敗したものを食べないように・・・」とか、現代社会ではイメージしにくいかもしえれませんが、死体の腐敗臭については、「敵の存在を示す・・・」ということにつながります。
また、焼け焦げる臭いも嫌と感じる臭いの一つで、これも「火事などの危険信号・・・」といして認知するような仕組みになっています。
しかし、それらの「匂い」以外については個人差というものが非常に多いのだそうです。
坂井教授によりますと、「人は、これまでに嗅いだ事の無い臭いを嫌な臭い・・・と表現することが多い」そうです。
これは、「匂い」を認識する仕組みにも関係していると考えられています。
「臭い」は、化学物質の一つとして鼻から入り、鼻の奥の粘膜にある嗅覚受容体で化学反応が生じることで、その反応が信号として嗅神経を通じて脳に送られます。つまり、鼻はあくまでも臭い成分をキャッチするものということです。
その信号を、脳が今までの経験などを含めた情報と合わせることによって「匂い」として感じるのです。食べ物の匂いなどがこのような仕組みによってイメージ付けられるために「今まで嗅いだ事の無い臭いに関して、け警戒心を持つ・・・」ということになるのだそうです。
皆さん、「食」と「匂い」についてあまり関心ないかもしれませんが、「普通に食べたときと・・・」、「鼻をつまんで匂いが分からない状態で食べたとき・・・」の味の違いを一度試してみてください。ずいぶん違うということを感じると同時に、味と匂いとの大きな関係に気づくと思います。
小さい時に、嫌いだったものが大人になると食べられるようになる・・・ということも、匂いセンサーのデータの蓄積量が増えたということなのかも知れせん。
最後に坂井教授によりますと、中年男性に対する「臭い・・・」ということも、実際の「臭い成分」の量ではなく、「不潔」「だらしない」「疲れている」・・・などの見た目から来る「くさい」「嫌い」というイメージが「臭い」と感じることに対して大きく左右しているということのようです。
こうして考えると、「匂い」のメカニズムは思った以上に複雑ということのようですね。