2018年10月27日
非感染性疾患とプロバイオティクス

「非感染性疾患と言われても、何のことやら・・・」と思う方も多いと思いますが、感染症という言葉であればおおよそ想像がつくかと思います。
感染症は、細菌やウィルスなどの外敵にさらされることによって罹患するもので、これからの季節に心配される上気道感染症の一つであるインフルエンザや、腸管感染症の一つであるノロウィルスによる食中毒などが代表的な疾病です。
つまり、非感染性疾患とは感染症とは逆で、細菌やウィルス由来でない疾患のことで、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患さらには、肥満も現在では慢性炎症として、非感染性疾患として定義づけられているようです。
感染症とプロバイオティクスとの関係は、腸内環境と免疫システムとの関係も含めて、多くのエビデンスが出されつつあることもご存じも方も多いと思います。
ただ、特定の菌種、菌株レベルでのお互いの優位差などに関しては、食品や医薬品への応用という商業ベースの利用という現実もあり、利用する側からすると判り難いものになっているという現状も否めない部分もあるというの現状もあります。
近年、「非感染性疾患とプロバイオティクスとの関係」については、腸内フローラと免疫システムも含めた腸管バリア機能との関係性も含めて多くの研究者から関心を集めています。
フィンランドにおける長期調査によりますと、腸内フローラは生後6カ月から12ヶ月の間に劇的な変化を遂げ、複雑な成人型の細菌叢の様相に近くなってきているということです。これも、生後約3年で独自の腸内菌叢を出来上がるという以前の説からすれば、ずいぶん初期に出来上がってきていることが示唆されたことになります。
さらに、この研究チームによりますと、この劇的な変化は離乳食と固形食などの食の変化と大きな関連性の可能性も考えられており、その結果、乳幼児期に優勢であるビフィズス菌の一種であるBifidobacterium longumの占有率の減少との相関関係が示されています。
つまり、この時期に自身の免疫システムと密接に関係していると考えられている腸内フローラの固定化が行われている可能性もあり、アレルギー疾患の人に共通にみられる腸管バリア機能を司る粘膜の機能不全などとの関連性も考えていかなければならないことに一つになるかもしれません。
実際に、脂質をたっぷり含む高カロリーの不健康な食事が、腸内細菌の多様性を減少させその構成を乱しディスバイオーシスと呼ばれる腸内毒素症を引き起こす原因の一つとして考えられていいますし、肥満などによる軽度な慢性疾患の場合も、腸内細菌叢によって引き起こされ、その炎症が更なる腸内細菌叢のバランスを乱れを引き起こすというような悪循環のトリガーになってることも指摘されています。
以前も、申し上げましたが、「肥満」は単に摂取と代謝の差引によるカロリーの過剰備蓄ではなく、全身の慢性炎症疾患と考える研究者が多くなっている現状もあります。その炎症のトリガーとなっているのが、腸内フローラの乱れということのようです。
また、アレルギーなどについても、アトピー性疾患のリスクの高い子どもに出生前と出生後の6ヶ月間プロバイオティクスを6ヶ月間投与することで、プラセボ投与群と比較して乳時期後期および幼児期のアトピー性湿疹の有病率が半減したという報告もあり、この効果については乳幼児期以降により顕著になったようです。
これらの様に、非感染性疾患と腸内フローラとの関連性を示すようなエビデンスも徐々に出つつありますが、 多くの研究者の関心事は、幼児期に出来上がった腸内フローラの再プログラミングと言えるような、腸内細菌叢や腸管免疫環境のバランスの復活に関わることのようです。
これらの、関心事がプロバイオティクスの活用の一つとして現実のものとなり、私たちの生活にフィードバックされる事に大きな期待を寄せていきたいですね。