2018年11月10日
腸内細菌は身体の中で何をしているのか

腸内細菌という言葉は、最近良く聞かれるようになってので多くの方が「耳にしたことのある言葉」になって来たと思いますが、その一方で様々な食品や医薬品とイメージが重なり今一つわかりにくいという方も多いのではと思います。
腸内細菌というくらいなので、基本的には微生物ということになります。
生物学的分類からすれば、動物や植物に分かれる前のものということになりますので、動物でも植物でもありません。
近年、植物性乳酸菌という言葉もよく効きますが、微生物には動物でも植物でもありませんので、専門的には分離した言う表現をするのですが「何処にいた・・・」というようなことをとって植物性とか動物性という言葉を使う方々もいるようです。
ただ、「この植物から分離された・・・」微生物でも、後々、動物の消化管や乳などから分離された例もあるというような話も耳にしますので、あくまでも「マーケティング上のネーミィング」と考えた方がいいのかも知れません。
分類の話はさておき、腸内細菌も微生物なので当然のことながら、生き物としての活動をするわけです。生き物としての活動ということになれば、「何かを食べて、排泄する」というのが基本的な活動になります。
そこで、何を食べるか・・・?
ということになるのですが、良く聞くのが食物繊維やオリゴ糖というキーワードなのですが、近年の研究ではもう少し大きな解釈をしなければ理解できないことが多くなってきたようです。
そもそも、食物繊維といっても単一の成分と示しているのではなく、人間の場合でいえば、ヒトの消化酵素で分解できないものの総称ということになりますし、オリゴ糖も言い換えると「難消化性の糖類」ということになりますので、「腸内に残った様々な成分を食べ物としている様々な種類の微生物がいる・・・」というのが実態の様です。
しかも、「この様々な・・・」というのがポイントで、何を食べたかも大切なのですが、何を排泄(代謝)したか・・・が、現在最も注目されているところです。
この代謝物には、乳酸、酢酸、酪酸などの様々な単鎖脂肪酸があり、これらの成分の健康との関連性について多くの研究者が興味を持っているのです。
近年、腸内細菌バランスの乱れにより、炎症性腸疾患やメタボリックシンドロームが引き起こされる可能性が示唆され始めている一方で、その疾患の要因となるメカニズムについては、まだまだ不明な点が多いのも事実です。
慶応大学薬学部の長谷耕二教授によりますと、これらのメカニズム解明のに一つのアプローチとして、便中の代謝物や菌叢、ムチンなどの状況を健常な人と炎症性腸疾患の人との比較をした報告で、腸内細菌バランスの乱れによって酪酸の顕著な低下が認められたということです。
酢酸は、近年「痩せ菌」というようなキーワードと一緒に良く聞かれる脂肪酸ですが、ヒトの代謝そのものに大きな関わりを持っているとされているものです。
酪酸の量が少ないことに会わせて、ムチンの残渣量が多いという結果が出ています。ムチンという成分は、ネバネバの成分ということで耳にしたこともあると思いますが、粘膜質やウナギなどの体表面のヌルヌルもこのムチンです。
長谷教授の研究によりますと、ムチンは膠原病やリウマチなど様々なアレルギーに代表される、自己免疫疾患をコントロールするためのTreg細胞との大きな関係性が解ってきています。
このムチンと腸内細菌との相互作用のような代謝メカニズムが十分に働かない事で、腸内細菌バランスの乱れを引き起こす悪循環に陥ってしまうこともあります。
ひどくなれば潰瘍性大腸炎などを引き起こし日常のOQLの低下を引き起こすとにもつながってしまうということになりかねません。
いまや、数千種類、数百兆個といわれる腸内細菌・・・ いわば、非常に複雑で様々な機能を持った臓器の一つと言えるような共生関係にあるのが腸内細菌なのかもしれません。
Posted by toyohiko at 20:40│Comments(0)
│身体のしくみ