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2018年11月16日

プロバイオティクスは何故、腸内細菌として定着しないのか

プロバイオティクスは何故、腸内細菌として定着しないのか


 プロバイオティクスという言葉は、「宿主に対して良い働きをする微生物」として、多くの食品や医薬品に利用されていますので、言葉に馴染みのある方も多いかと思います。
しかし、「あとから、食べる良い菌」はヒトの腸内に定着しないので、一定の効果をその微生物から恩恵を得ようとすると継続的に食べ物として、もしくは医薬品として摂取し続けなければならないということはまだまだ知られていない事なのかもしれません。

 単純に考えれば、「口から入った微生物は生きているのだから人間の消化管の中で生き続けてくれれば面倒くさいことは無いのに・・・」と思うのが普通なのかもしれません。

 しかし、人間の身体の仕組みにはそうはいかない理由があり、どうやら、その理由というのは自分自身の身を守るための仕組みゆえ・・・ということの様です。

 例えば、「ここ数日、ちょっと風邪気味だったけど、2~3日したら治った。」とか「ここ数日、お腹の調子が悪かったんだけど・・・」というようにいつの間にか、体調が戻っているという経験をほとんどの方はお持ちではないでしょうか。

 この体調を崩す原因になっているのが、外部から来た侵入者である、ウィルスや細菌を排除するような仕組みがあるからこそ、「いつの間にか・・・」という状態に戻すことが出来るというわけです。

 このメカニズムについては、多くの研究者が興味を持ち様々な角度から研究を行っているのですが、完全に解明されているとはいえないものの、どうやら、菌やウィルスの身体に与える影響の善悪ではなく、「身体が仲間と判断するがそうでないか・・・」ということのようなのです。

 つまり、いくら身体に良いと思われるプロバイオティクスでも多くの場合は仲間と判断されずに、自身の体内で増殖し生き続けることはできないということなのだそうです。

 このメカニズムを定着抵抗性(Colonaization Resistance)と呼び、仲間と認識されない外在性微生物を腸内定着を阻害するという働きをするのだそうです。

 例えるとするならば、腸内にクラスの様なものがあり、良い生徒も、常にいたずらをして回るような悪い生徒も、傍観的に流されて日々過ごすような生徒もいるけど、みんなクラスメイトとして仲良くやっていて、なんとなくまとまっているという、ある種人間社会のような状況が成立していると考えると良いかもしれません。

 プロバイオティクスは、そのクラスに来た優秀な転校生の様な存在なのかもしれません。人間社会の中ではあまり良くないことなのですが、腸内細菌の中では、「優秀な転校生をクラスメイトとしてしっかりと受け止めて一緒に仲良くする。」ことを嫌うというのがこの定着抵抗性(CR)の仕組みになるのだと思います。

 この定着抵抗性(CR)のメカニズムに関しては、まだまだ未解明な点が多く腸内細菌の栄養源になる食事、腸内細菌どうしお互いのクロストークと呼ばれる情報交換や相互作用、宿主である動物自身の免疫システムなど様々な要因にが複雑に係わっていると考えられています。

 近年では、異常な腸内フローラを回復するような復元力(Resilience)のような機能も注目され、学術的にも多く使われるようになってきたということのようです。
そもそも、動物に備わっていると考えられている恒常性(Homeostasis)もひょっとすると、腸内細菌が大きく関わっているのかもしれません。

 身体の健康を保つためには、優秀な転校生であるプロバイオティクスを常に取り入れ続けていくということが一番良いようです。




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Posted by toyohiko at 17:09│Comments(0)身体のしくみ
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