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2019年01月05日

プロバイオティクスと健康の関わりについて考える

プロバイオティクスと健康の関わりについて考える


 近年、腸内細菌をはじめとするヒトと共生する微生物についての関心が急速に高まりつつあります。
しかし、このような微生物は整腸薬として古くから便秘や下痢の症状の治療薬として処方されているというような事実もありますので、食品やサプリメントによって近年になって注目されてきたのではなく、医薬品として臨床応用の結果としてすでに馴染みのあるものでもあるのです。

そのような流れの中、腸内細菌だけでなく皮膚や口腔内の領域さらにはメンタルヘルスに至るまで様々な臨床領域においてプロバイオティクスの利用が検討され始めています。

例えば、口腔内での一番のリスクは、虫歯と言われるミュータンス菌などによるう触やジンジバリスなどによる歯周病と言われています。

この分野でも、Lactobacillus reuteriやL.rhamnosus ,L.salivariusなどの乳酸桿菌がプロバイオティクスとして利用され、歯周病の原因菌の減少や歯肉炎の臨床症状の軽減が報告されているという話があります。

 このケースも、「腸内環境の乱れを整える」というような言葉に代表されるように、口腔内環境と呼ばれる口腔内菌叢のバランスが整うことによってこのような効果があるというように考えられています。

 また、消化器系のリスクに関しても、胃の中のピロリ菌や、近年注目されている胃の痛みや胃もたれなどの症状が慢性的に続いているにも関わらず、内視鏡検査などを行っても胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどのような異常がみつからない症状として知られる機能性ディスペプシアの症状緩和についてもいろいろな報告がなされています。

 ピロリ菌については、胃がんのリスクということで多くの方がご存じかと思いますが、この除菌に関しても、使用する菌株の種類や投与方法の条件はあるもののプロバイオティクスを併用することで除菌率の上昇が見られています。

 機能性ディスペプシアについても機能性消化器疾患ガイドラインに治療方法の第一ステップにプロバイオティクスが記載されており、過敏性腸症候群(IBS)などについても炎症にたいする治療にも有効性が示されています。

 さらに近年注目を集めている、アトピー性皮膚炎や花粉症をはじめとする様々なアレルギー症状についても症状の抑制や緩和などの報告があり、ある意味、身体中の様々な症状に対するプロバイオティクスの効果というものが注目を集め盛んに研究されているのです。

 最近では、各種症状に対する対処という観点だけでなく救急救命領域での、重症者の腸炎や人工呼吸器関連肺炎の予防に対して、プロバイオティクスのだけでなく有効な微生物のエサとなる成分であるプレバイオティクスの両方を併せたシンバイオティクスの投与によるシンバイオティクス療法のような治療法も徐々に普及されつつあるようです。

 一昔まえであれば、「お腹の中のバイ菌を殺してしまわないと・・・」という扱いであった、腸内をはじめとする様々なヒトと共生する微生物も、今では、次第にプロバイオティクスと呼ばれるようになり、今までひそかに活躍していた様子も、少しずつベールが剥がされてきています。

 これから、ヒトにとって思いもよらない関わり方がもっと知られるようになるかもしれません。



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Posted by toyohiko at 16:21│Comments(0)身体のしくみ
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