2019年03月20日
免疫力は高めるだけで良いのか・・・Ⅱ

前回、免疫力というのは様々な免疫細胞の働きによる総合的なシステムのために、「単に高いだけでは身体にとっても良くない影響が出てしまう・・・」ということを説明させていただきました。
その「よくない影響・・・」による症状の一つがアレルギーや自己免疫疾患と呼ばれる様々な炎症です。
その炎症を引き起こす大きな原因となるのが、情報伝達機能を持つT細胞グループのTh1とTh2とのバランスです。
もちろんこの二つのヘルパーT細胞の働きが、「高い」とか「低い」とかはありますが、両者のバランスが一番重要になってくるのです。
具体的に云いますと、Th2の働きがTh1に比べて大きいと獲得免疫系チームのB細胞に対して、「攻撃するためのミサイルなどの武器をつくれ!」という指令を出してしまいます。
この武器が、抗体と呼ばれるものです。
アレルギーに関する血液検査などで目にするIgE(免疫グロブリンE)などがこれにあたり、この数字が大きければ大きいほど、武器を沢山持っていることになります。
「武器は、沢山あった方が良いのでは・・・?」と思う方もいると思いますが、過剰に持ってしまうことで、暴発であったり、誤発射のようなものにつながりやすくなります。
もう一度、Th2の相方であるTh1の働きを見てみますと、このヘルパーT細胞の役目は、癌細胞やウィルスに感染した細胞を排除する役目をしていますので、NK細胞と良く似た働きをするのですが、実際に対象となる細胞がいないことには働きが活性化されません。
しかし、実際にウィルスや癌細胞ではないものを勘違いしてしまうようになってしまうとどうなるでしょうか・・・?
排除する対象なる癌化された細胞はいないのでTh1はあまり働かないのですが、勘違いにしてしまった事によって、Th2だけが活躍することでバランスが崩れ、「勘違いしてしまった敵をミサイル攻撃してまう・・・」のです。
ここで、問題なのが「何故、勘違いしてしまうのか・・・?」とことです。
ここで、注目していただきたいのは、「免疫細胞はウィルスに対して排除したり、攻撃をする・・・」と云うことです。
ご存じの方もいるかもしれませんが、菌とウィルスとでは基本的な構造が異なります。いってみれば、菌は非常に小さい生き物の様なものになりますので細胞というものがありますが、ウィルスはその細胞を構成する分子の様なさらに小さい構造をしています。
よって、ウィルスは何かにくっ付き、その細胞が増えることでしか増殖できないという特性があり、タンパク質分子に非常に構造が良く似ているのです。
アレルギーのことをよくご存じの方は、お分かりかと思いますが食品の場合なども含めて、そのものに含まれるタンパク質分子を敵と勘違いをしてしまうために、抗原と認識されてしまうことがあるのです。
つまり、必要がないのに抗体というミサイルをつくりためてしまうということなのです。
アレルギーなどの症状をなるべく起こさないようにするには、抗体をつくる役割の獲得免疫系チームが不必要な抗体をつくらなくて済むように、自然免疫系チームが活発に活躍できるような状態にしておくことが必要になってきます。
近年は、腸を含めた消化器官にリンパ球などの免疫システムの多くが集中しており、その免疫システムが腸内細菌を中心とした腸内環境と大きな関わりがあるとも言われています。
L.カゼイ・シロタ株(YTI09029)などの食品に利用されているプロバイオティクスの中にも、研究によって免疫調整作用が証明されているものもあります。
そのような、食品を積極的かつ継続的に利用することも、免疫のアンバランスを修正することにつながるかもしれません。
Posted by toyohiko at 17:07│Comments(0)
│身体のしくみ