2019年03月31日
意外と知られていない骨と免疫の関係

「骨と免疫・・・?」多くの方は、この二つの関わりについてはあまりイメージがつかないかもしれませんが、「骨と血液・・・」ということであれば、「なるほど・・・」と思われる方も多いかと思います。
そもそも、骨というものには血液をつくる役目があります。
血液と一言でいいましても、赤血球から、白血球・・・その成分であるリンパ系の様々な細胞があります。
以前にも、云いましたようにこのリンパ系の様々な細胞がB細胞やT細胞、そしてNK細胞などの免疫細胞になりますので、「骨が血液をつくる機能・・・」であるということは、免疫細胞をつくる機能も持っているということになるのです。
このように、骨が免疫細胞の発生に関わる重要な器官であるにも関わらず、骨と免疫との関係はあまり重要視されてこなかったというのが実情の様です。
しかし、現在では骨免疫学という一つの学問分野として大きな発展を遂げようとしている中、第一人者として研究をけん引しているのが東京大学大学院医学系研究科免疫学の高柳広教授です。
高柳教授によりますと、骨はカルシウムの貯蔵や骨格として運動を中心とした身体機能の中心的な役割を担っています。
それは、脊椎動物が海から陸に上がる際に、重力に対する運動能力の維持や、海水に豊富に含まれていたカルシウムなどのミネラル分を貯蔵する役割を果たす臓器として進化の過程の結果であると考えられています。
同時に、今まで海水で覆われていたことによるメリットとしての表面からのバリア機能に対して、陸に上がることによって生じる病原菌などの外敵といかに戦うかという課題に直面した結果、免疫系・・・特に獲得免疫系の発達が必要不可欠だったと考えられます。
さらに、血液をつくる細胞組織等を紫外線から守るためにも紫外線透過性の低いカルシウムで閉じ込めておくということが有効だったという説もあり、その結果、現在の様に骨と免疫細胞が分子を共有しているという状況は進化の過程での必然であったと考えられています。
免疫システムの状態をあらわすときに、免疫細胞そのものの量を表す場合と免疫活性と呼ばれる活性度で示す場合があります。
よく、「腸は、免疫の6~7割を占めている・・・」と言われることがありますが、あくまでも免疫細胞そのものは骨の中でつくられ、腸管は仮想敵や実践も含めた様々な外敵からの情報に対しての対応を学ぶためのトレーニングセンターになります。
言いかえれば、「新人は、何をどうしたら良いかわからないので、腸管の周りに集まる様々な微生物からの情報などをもとに研修をしながらスキルアップしていく・・・」というようなものになるのだ思います。
近年の研究では、運動などにより筋肉や骨が増えることで免疫細胞の量も増え活性化につながるというということが分かってきました。
これは、無重力の宇宙空間において免疫細胞が減ってくるということからも同様なことが言え、免疫という外敵から自分の身を守る機能を充実させるためには、運動も充分におこない、強い骨をつくることも大切なことの一つのようです。
Posted by toyohiko at 07:33│Comments(0)
│身体のしくみ