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2019年06月07日

カロリーイン・カロリーアウトの法則は本当か?

カロリーイン・カロリーアウトの法則は本当か?


 一般的には、様々な食品に表示されているカロリーの量については、多くの人に対して同じであり食事によって供給されたカロリーと、運動や基礎代謝によって消費されるカロリーのバランスによって身体の状態が保たれていると言われています。

 しかし、今まで当たり前とされていたエネルギー収支に対し、近年は疑問を投げかける研究者があらわれ始めたのです。

 そのなかの仮説の一つが、「食品に表示してあるカロリーは誰が食べても同じカロリーに本当になるのだろうか・・・?」という疑問です。

 スウェーデンの研究者のターンバウは、マウスの実験において摂取するカロリーの量とそこから吸収するカロリーの量に違いがある事に着目し、実際に100kcalの摂取カロリーに対して、太ったマウスの場合に102kcalの吸収量があったことが解ったというのです。

 この摂取カロリーと吸収カロリーの差をつくりだしている原因とされているのが、腸内細菌の構成と考えられているのです。
 実際に、腸内細菌におけるファーミキューティス門とバクテロディス門のバランスで、バクテロイディス門の割合が少ないほどに肥満の割合が多いとされています。

 たかが2%の違いと思うかもしれませんが、毎日の蓄積と考えれば時間が経つにつれて大きな差になるということになりますので、なかなか侮れない・・・ということになるのです。

 この様に、腸内微生物があなたに代わって食べ物から余分にエネルギーを引き出すとい言うのであれば、カロリー量を決めるのは標準換算表ではなく、腸内フローラが決めるという事になってきます。

 2011年にアメリカアリゾナ州フェニックスの国立衛生研究所で、被験者カロリー量を一定にした食事をしてもらい、消化された後の糞便に残るカロリーを測定するという方法を用いて実験を行いました。

 その結果、痩せた人に高カロリー食を与えると糞便中のバクテロイディス門の細菌よりファーミキューティス門の細菌が増えてくるという結果となり、その変化に伴い糞便として出てきたカロリー量が減ってきたというのです。
 この被験者の場合、同じ高カロリー食を続けることで腸内微生物の比率が変化し、一日当たり150kcalが以前より多く吸収されたという結果になったというのです。

 この研究で、私たち人間をのみならず多くの動物が、食事からどのような栄養源を引き出すことができるかは腸内の微生物工場とも言えるようなシステムにどのようなオプションを持っているかというようなものなのかもしれない可能性が出てきたということが言えるのかもしれません。

 言い換えると、菜食主義者の人が、ある時その信条を捨て脂たっぷりのステーキを食べたとしても、そのステーキに含まれるアミノ酸や脂肪酸を分解するのに必要な微生物が十分にいないはずなので十分な栄養素を吸収することが出来ないということになるのかもしれません。

 食べた物の栄養価を十分に引き出す事が出来るかどうか・・・の是非については、ひょっとすると賛否両論あるかもしれませんが、私たちが食べるものの習慣によって、腸内で優勢になる菌の種類が変化とともに、様々なエネルギー収支のバランスが変化していくということであれば、そのようなことを意識しながら食生活の見直しをしていくことで、健康の維持向上に対して最も必要なことの一つになるのかもしれません。



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Posted by toyohiko at 12:31│Comments(0)身体のしくみ
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