2019年06月14日
細菌感染と性格

細菌感染といえば、まず頭に浮かぶのが感染症という病気だと思います。感染症という事であれば、体調の悪化などがイメージされるので、「性格」というキーワードとの関連についてあまり結びつかないのでは、と思います。
しかしながら、動物なども含めて特定の細菌に感染することで振る舞いが変化するということが解ってきたようなのです。
例えば、トキソプラズマに感染した、ラットが恐怖心を失って広々とした場所に出ていき猫の尿の匂いに引き寄せられたりすることや、ヒトの感染例でも振る舞いの変化がみられるというのです。
トキソプラズマに関して言えば、チェコのカレル大学により調査では、交通事故を起こして入院した150人と交通事故を起こしたことのない人での比較調査をした結果、非常に高い割合でトキソプラズマに感染していたという報告があったのと同時に、トルコでの同様の調査では、トキソプラズマの感染率が4倍になっていたという興味深い研究結果があるのです。
トキソプラズマの感染については、感染した男性が陰気になったり、社会ルールや道徳を無視するようになるなど猜疑心や不安を感じる傾向が強くなるそうで、一方、女性の場合は、明るくおおらかになり、決断力のある自信家というような傾向が強くなるという報告もあるそうなのです。
研究者たちによると、このような結果についても微生物自身にとって何らかのメリットがあるゆえの宿主への作用ということであるならば、宿主の行動を映えることでより多くの広がりを持つことが出来るのであろうという事になるのですが、これは、寄生者である微生物と宿主との共進化の関係で、トキソプラズマの場合は、宿主の性格や振る舞いを変える方法を習得し、宿主が通常では考えられないような振る舞いをしてしまうのです。
このような、考え方については実は非常に古い歴史があるようで、1896年のサイエンティフィック・アメリカンという雑誌で、「狂気は微生物が原因?」という衝撃的なタイトルの記事が掲載されたことがあったのですが、その後、フロイトによる精神分析学が主流になったことで、脳の不具合だけは他の臓器は異なり、微生物とは無関係なものとして特別扱いされてきたという歴史があるというのです。
しかし、近年では脳の症状にも微生物の影響によるものがあるということが明らかになってきたこともたくさんあり、実際に統合失調症やトゥーレット症候群の患者にトキソプラズマ感染が見つかるケースがここ数十年で増えているというのです。
このように、微生物が宿主の振る舞いを左右するという事であれば、「微生物を入れ替えることで、ひょっとすると性格までも変えられるのでは・・・?」という、ある意味とんでもない仮説もあながち可能性はないでも無い・・・というところまで来ているのかもしれません。
この仮説の、真偽については今後の科学の進化の役割としても、そのようなことを踏まえた、「育菌」意識した食生活という発想はありなのかもしれない、と考えさせられる部分もあるような気がします。
Posted by toyohiko at 17:25│Comments(0)
│身体のしくみ