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2019年08月10日

免疫という視点から下痢を考える

免疫という視点から下痢を考える


 下痢は、感染症の疑いのある時や急なストレスに襲われた時に起こる症状の一つです。そして、体内に入った有害なものを体内の水をつかって体の外に出すという作用になりますので、健康の維持については重要なメカニズムの一つです。

 この下痢のメカニズムに関して、よく言われるのが、「下痢という作用は、のうが指令を出す前に、腸自身が判断している・・・」という、脳と腸の独立性や対等性の考え方のベースにもなっています。

 免疫システムという視点から下痢を考えていくと、下痢は、細菌と免疫系、双方にとって好都合な仕組みで、「細菌にとっては、外に出て新しい宿主に辿り着くための方法として・・・」「免疫系にとっては病原体とその毒素を洗い流すために下痢を利用している」という考え方する人もいるそうです。

 当然、「洗い流す」ということになりますので、当然そのための「水」が必要になってきますが、その水は口から入り、腸管内に溜まったものの使用しているのではありません。

 細胞の層がぎっしりとつまった腸壁は、レンガの壁に似ているといわれています。そして、レンガを固定しているモルタルにあたるのが鎖状のタンパク質になりますので、腸壁はやや柔軟性があります。しかし、何かが腸から血液中に移動するためにはこの壁を直接通り抜け、その際に、免疫システムによってあらゆる種類の取り調べを受けることになります。

 しかしその際に、レンガのモルタルにあたる細胞間の鎖が緩んでしまうことがあるそうです。この鎖が緩んでしまうと「血液から腸」「腸から血液」という検閲の甘い、物質の移動が可能になってしまうというのです。

 このメカニズムを利用し、必要に応じて腸壁の隙間を利用し、血液から腸へ相当量の「水」が血液から腸に流れ込む現象が「下痢」ということになりますので病原体である細菌やウィルスを早く追い出すためには便利な仕組みであるといえます。

 この隙間なのですが、不具合による隙間といわゆる「水門」のような正常なメカニズムによって開閉される隙間の両方があるようで、下痢の場合は正常なメカニズムによって開閉される「水門」によってコントロールされているといわれています。

 どのようなものでも、同じですがコントロールするためのスイッチが必要になります。マサチューセッツ小児総合病院の研究拠点を置く、胃腸科医のアレッシオ・ファサーノ氏が、スイッチの役割をするゾットという閉鎖帯毒素を発見し、下痢のメカニズムそのものついてもさらなる解明の糸口になっているようです。

 健康な腸内フローラが形成されているときは腸壁の細胞をつなぐ隙間はなく構成される鎖状たんぱく質も堅固な状態であることが解ってきています。つまり、このようなときは大きな分子や危険なものが血液中に入ることはありません。

 しかし、腸内フローラが乱れると感染症に感染したような状態となり免疫システムを刺激するため、ゾットと同じような働きをする、ヒトのタンパク質が腸壁の鎖に働きかけて、鎖が緩んでしまうのだそうです。
 この腸壁の鎖を緩めるスイッチが、明らかな外部からの侵入者に対する反応として正常作動するか、腸内フローラの乱れによる誤作動のようなものによるものかが重要な問題になるのかもしれません。

 多くの人が、ご存知のように下痢の症状は感染源の除去としての働きと、ストレスなどの脳への負荷によって引き起こされてしまう症状と大きく二つに分かれます。

 前者を正常作動とするのであれば、このシステムが誤作動するときのリスクとメカニズムを理解する必要もありそうです。

 リスクに関しては、ストレスによって発生した鎖を緩めるスイッチによって放出された「水」の合間を潜り抜けてくる不法移民のような免疫システムに引っかからない侵入者が増えてしまうことなのだともいます。
 
 この腸の隙間とうつ病をはじめとする脳に関わる疾患とどのように関係しているのかは、これからの研究に大いに期待したいところになりますが、腸内フローラが健常であることで隙間が空きにくくなるということであれば、「腸の健康」に関する新たな認識も生まれてくるのかもしれません。




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Posted by toyohiko at 15:08│Comments(0)身体のしくみ
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