2019年11月30日
より良い睡眠を考える・・・Ⅱ

前回は、睡眠不足の社会的な損失などを中心に紹介をさせていただきましたが、今回は睡眠不足による直接的な健康への影響について紹介したいと思います。
睡眠総合ケアクリニック代々木の大川匡子理事によりますと、現代社会に於いて睡眠を妨げる要因には様々なものがあるとしています。
まずは、「寝酒・・・」といわれるほど、睡眠に大きく影響をしていると思われるアルコールについてです。
アルコールについては、鎮静催眠作用がありますので一見良いと思われがちですが、睡眠後半で睡眠内容を悪化させてしまうことが解っています。
その結果、脳の休息であるノンレム睡眠が減り、レム睡眠が増えてしまうという睡眠時間というよりも睡眠の質にも直結し、顕著に現れます。
最近では、スマートフォンと連動したような睡眠の状態を計測できるようなデバイスもありますので、飲酒後のデータなどを見るとよくわかりますが、適度な飲酒に抑えることは重要です。
また、たばこも覚醒作用がありますので中途覚醒につながり睡眠の質を下げてしまいます。
コーヒーなどのカフェインの入った飲み物ですが、これも覚醒作用と思われがちですが、覚醒というよりも睡眠を阻害するという作用になりますので覚えておくと良いかもしれません。
意外に意識しないのが、睡眠と食事との関係です。
多くの皆様が経験的に感じている事かと思いますが、満腹でも空腹でも質の良い睡眠にはつながりません。
消化器官の機能から言いますと消化のための消化器官の活動は3時間程度必要とされていますので、就寝時間の3時間前には食事を済ませるのが理想的とされています。
また、消化管も脳と同じように就寝時に大蠕動というメンテナンス作業を行います。この大蠕動は、大腸を中心に昼間の活動時よりも大きな蠕動運動を行うことで腸壁の大掃除をするようなイメージだと思っていただけると良いかと思います。
この大蠕動がうまくいくことで便が肛門近くに集められ、起床後便意を感じるという良いサイクルが回ることが理想的なのです。
しかし、就寝直前まで飲食をする習慣が日常化したりすると、就寝後に消化活動がのこってしまい大蠕動という腸のメンテナンス作業がうまく行われず、残便感などの排便不良に繋がってしまいます。
つまり、「食べてすぐに寝る・・・」ことは、睡眠の質も消化器官の異常と双方にデメリットがあることを意識していただくと良いかと思います。
食と睡眠ということで言えば、睡眠不足になりますと食欲に影響が出ることはよく知られています。これは、睡眠が不足することで食欲増進因子といわれるグレリンが増加するとともに、食欲を抑制するレプチンが減少してしまいます。
また、糖質の過剰摂取によって中途覚醒につながったり、飽和脂肪酸の摂りすぎによってノンレム睡眠のような深い睡眠の低下も見られるそうです。
食と睡眠についてのリスクについて触れてきましたが、食事の内容によって睡眠の質の向上につながることもあるようです。
例えば、前回紹介したメラトニンですが、そのもとになる必須アミノ酸を含むタンパク質が豊富に含まれる食品を積極的に摂取することも有効です。特に朝食に卵、納豆、肉類などを摂ることで就寝までにメラトニンが合成されやすくなるそうです。
さらに、近年の研究では食物繊維の摂取によって睡眠の質が向上するというような報告も多く出てきています。この食物繊維は腸内細菌のエサになりますので、腸内環境も大きく影響するのかもしれません。
腸内フローラと睡眠の質の関連についてもL.カゼイ・シロタ(YIT9029)株の入った飲料の8週間の継続摂取によって熟眠時間を表す指標と熟眠度を表す指標について有意な増加がみられたという報告が徳島大学医学部六反一仁教授らのグループによってなされるなど、研究者の中で活発な議論がなされていますので脳腸相関も考え方も含めて大いに期待できそうです。
Posted by toyohiko at 15:53│Comments(0)
│身体のしくみ