2020年09月26日
腸内細菌の代謝物と血管機能を考える

近年の研究では、腸内細菌が腸管内での生命維持活動と共に、代謝される様々な物質が及ぼす健康への影響に関心が高まってきています。
その代表的な代謝物として、近年注目を集めているものが酢酸、酪酸、プロビオン酸などに代表される短鎖脂肪酸です。
しかしながら、腸内細菌の代謝物に関してはまだまだ未知の部分が多く、なかなか知られていないことが多いことも事実です。
その中で、血管機能に対する作用やエストロゲン作用、抗酸化作用として知られているものがエクオールです。
実は、このエクオールも腸内細菌の代謝物で、大豆イソフラボン中のダイゼインという物質が腸内細菌によって摂取され、代謝物として腸管から吸収されるのです。
星薬科大学医薬品科学研究所機能形態学研究室の松本貴之准教授は、このエクオールに注目し、Ⅱ型糖尿病罹患時における重要な病態である高インスリン血症の発症及び予防効果について実験を行いました。
Ⅱ型糖尿病の場合、血糖値の上昇に伴って分泌されるインスリンが効きにくかったりする、インスリン抵抗性の状態が頻繁に起こることで、インスリンの過剰分泌が引き起こされ低血糖の状態を招くことがあります。
この状態を、高インスリン血症と言い、高血糖や全身の慢性炎症を伴う場合が多いとされています。
また、高血糖状態は細胞内の活性酸素を増加させ、DNAにダメージを与えることがわかっています。
特にⅡ型糖尿病では、肥満を伴うことが多いため、肥満によって蓄えられた脂肪組織内での慢性炎症が、がん発症の要因になるとも言われています。
松本准教授によりますと、ラットの実験により高インスリン状態における頸動脈の収縮増強状態をエクオールが抑制しているという結果から、高インスリン状態における血管機能不全に対してエクオールが予防効果を示す可能性を示唆しています。
エクオールだけでなく、消化吸収の機能を持つ腸管では、腸内の様々な物質が吸収され血管に入り込みます。当然、血管の機能に対してもプラスマイナス含めて何らかの影響を与える物質も多く存在すると考えられます。
当然のことながら、腸内細菌の代謝物もその一つです。
製品ベースで考えてみても、昔はニワトリのトサカからとっていたヒアルロン酸も、現在では微生物の代謝物として培養生産をしていますし、GABA(γ-アミノ酪酸)なども複数の乳酸菌の代謝物として商品化されているようなものもあります。
口腔内、腸内、そして皮膚における共生微生物との関わりは、色々な組み合わせも含め、様々な代謝物と健康との関係性について大きな可能性が高まりそうですね。
Posted by toyohiko at 15:36│Comments(0)
│身体のしくみ