2020年11月28日
「親子の触れ合い・・・」を考える

ソーシャルディスタンスや三密の回避という言葉が、すでに聞きなれた言葉になってきた昨今、感性症予防という防疫の視点と、「何といっても、人同士は直接会って・・・」とか、リアルのふれあいなどに関する渇望感などとの様々なジレンマのような感覚を持たれる方もいるかと思います。
東邦大学医学部医学科解剖学講座の吉田さちね氏は、「人と人との触れ合い・・・」について医学的見地から研究をしている研究者の一人です。
現在では、「しないように・・・」とされていますハグ(Hug)についても、多くの親子間で喜びや愛情を示すときに自然に行われる動作の一つです。
そのハグという行為が乳幼児期の子どもにとって、どのような変化をもたらすのかという実験を行いました。
吉田さちね氏らの研究グループは、生後4か月の0歳児を対象に、母親に「軽く縦抱きする」、「かわいいと思ってぎゅっとハグする」、「抱いている母親がそのまま走れるくらいに強く抱きしめる」という3つの抱き方を圧力センサーと親子双方の心電計の数値を比較していきました。
その結果、3つの抱き方の中で「かわいいと思ってぎゅっとハグする」という抱き方が最もリラックスするという結果となり、抱き方によって子どもの状態の変化がみられることが解ったのです。
さらに、母親だけでなく、父親のケースも同様の結果となり、興味深いのは初対面の女性の場合ではこのような心拍状況の変化が見られなかったという事と、母親、父親の両方にも自分の子どもを抱くことでリラックスすることが解ってきたという事です。
このことから、生後3か月までの親子の触れ合いを通じて、自分の母親や父親のハグを覚えていることで、一種のコミュニケーションのようなものをしてる可能性を示唆していると述べています。
また、触れ合うという事を、「皮膚からの刺激による情報伝達」というように理解すれば、乳幼児だけではなく、高齢者を対象とした研究でも興味深い結果が出てきています。
例えば、アルツハイマー型認知症の特徴として、大脳皮質や海馬の血流不足が発生し、脳の神経細胞に対してマイナスの大きな影響を及ぼすのですが、その血流不足を解消すするための神経伝達物質にアセチルコリンというものがあります。
このアセチルコリンはコリン作動性神経を活性化することで分泌されると言われています。そして、活性化の方法としては色々あるのですが、その一つが、「さする」「なでる」等の皮膚からの刺激なのだそうです。
昔から、乾布摩擦は健康に良い・・・と言われていますが、どうやら都市伝説にまつわる民間療法という訳ではなく、実際に脳の健康にプラスの効果があるのだそうです。
古くから、「手当」はまさしく「手を当てる、触れるだけでも何らかのプラスの効果が・・・」と言われ、その理由としてオキシトシンという幸せホルモンの存在が注目されてきました。
お互いに触れる、という事により、脳の活性化やリラックス効果など、皮膚からの刺激による様々な効果についてまだまだ未知のメカニズムや効果があるのかも・・・と考えてみると、ソーシャルディスタンスが重要とされる時代だからこそ、様々なストレスからの回避も含めて、ふれあいの大切さを考えてみる必要があるのかもしれません。