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2020年12月11日

歯周病と消化器疾患

歯周病と消化器疾患


 マスク生活が当たり前というような生活になってきた今、近年、明らかになりつつある口腔内環境の大切さ・・・、特に、感染症予防や糖尿病などの炎症性慢性疾患との関係など・・・多くの関心が高まってきています。
 
 特に、歯周病菌による様々な疾患については、口腔内のみに関わらず多くの炎症性慢性疾患との関係性が多くの研究者にとっても注目を集めています。

 今回は、今までの血管も含めた循環器系の疾患だけでなく、消化器系疾患と代表的な歯周病菌の一つであるフソバクテリウム・ヌクレアタム菌についての報告がありますのでご紹介させていただきます。

 横浜市立大学 学術院医学群 肝胆膵消化器病学 日暮琢磨講師らのグループは、大腸がん患者の大腸がん組織中に歯周病菌であるフソバクテリウム・ヌクレアタムが発見されたことと、さらにそのような症例において、大腸がんそのものの病態や経過に対して悪影響がみられることからフソバクテリウム・ヌクレアタムの感染経路に着目し、PCR解析を行い菌株レベルでの経路解析を行いました

 その結果、4分の3の割合で唾液中と同一菌株とされる歯周病菌が検出されました。
このことは、口腔内の歯周病菌による感染予防が大腸がんの予防やリスク回避等、今後の様々な可能性につながることと考えられます。

 また、熊本大学大学院 生命科学研究部 消化器外科の馬場秀夫氏は大腸がんだけでなく、食道がんについてもフソバクテリウム・ヌクレアタムとの関係性を解析し、大腸がん同様に食道がん組織内にて分離された菌株と口腔内に存在する菌株との関係性を明らかにしています。

 さらに、興味深いのは抗がん剤に関する抵抗性についてです。

 食道がんについての症例において、歯周病菌であるフソバクテリウム・ヌクレアタム陽性のケースに於いて、術前化学療法の治療についての結果が悪くなっていたという事です。
 このことについては、フソバクテリウム・ヌクレアタムの影響により抗がん剤の効果について何らかの阻害性を認めたという事を示唆してると述べています。

 これらのように、たかが歯周病菌といえども、消化器系の癌の進行にたいしての関係性が明らかになったり、癌の治療法の一つである抗がん剤の効果についての抵抗性が見られたりという事になると、「お腹の健康のみならず・・・、お口の健康と一心同体・・・」という関係性もあながち言い過ぎではない・・・という事かもしれません。

 無症状且つ、突然の歯の欠損・・・というだけのイメージの歯周病。
 どうやら、それだけではない・・・という研究結果としての知見が数多く報告されるようになってきました。

予防と治療については、バイオフィルムとなる歯垢の除去・・・つまり適正な「歯磨き」を欠かさず丁寧に続けることです。

さらに、お口の中をお腹の中と考えれば・・・抗生物質による腸内環境のディスバイオーシスと同じように、抗菌成分入り歯磨き剤などの利用についても必要な時に必要な量を・・・というような見直しの時期も来るのかもしれません。

 今一度、ご自身の口腔ケアを見直してみませんか。





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Posted by toyohiko at 09:19│Comments(0)身体のしくみ
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