2020年12月18日
変化しないということ

コロナ禍、ポストコロナなど様々な言葉が飛び交い、まさに「変化を余儀なくされ・・・」の時代になってきています。その一方で、多くの人にとって変化は、「脅威」であり、今までと違う事をすると、次の瞬間何が起こるかわからないために・・・変化を怖がるということも事実です。
「時代に取り残される・・・」という言葉がありますが、多くの人は、個やチームが変化しないという事だけを考えがちです。
しかし、今回のように社会が劇的に変化している中で、「変化をしない」ということは、相対的な価値が下がり、「何もしない事・・・」がマイナスの変化を引き起こし、結果的に、個も含め、チームや組織にとって困った事が起きるという認識を持たなければならないのだと思います。
歴史的な事例で言えば、アメリカの鉄道会社が鉄道に拘り続けた結果、社会のニーズの航空機への移り変りについていけなくなり経営破綻した事例は有名な話です。この事例は、「社会の移動手段を担うと考える・・・」ことで、自らが航空機、もしくはもっと違った形で社会インフラを現在も担っていたかもしれません。
最近で言えば、ハンコ不要論のなかシェアトップの会社が「当社はハンコ屋ではなく、インクやゴムの素材メーカーです・・・」と事業を再定義することで変化に対応していくケースもあります。
とはいえ、多くの場合自分自身の変化については、「なるべくしたくない・・・」という力学が働いてしまうことが多いのが現実です。このような事例を物理学の法則になぞらえて「仕事(社会)における慣性の法則」という言葉があるようですが、まさに言い得て妙・・・という感じがします。
そして、他者からの評価が第一番目の関心事となり、「失敗しない」事が目的化してしまうと、思うようにことが進んでいきません。
確かに、他者からの承認は、「行動に結びつく勇気」という意味では重要な役割をすることは事実です。しかしながら、この承認が目的化してしまったとするとどうでしょうか。
褒められるために・・・という行動パターンに陥ってしまいます。
アドラー心理学に詳しい哲学者の岸見一郎氏によると、褒めるとは、「自分に価値があると思えなくさせる行為・・・」であり、褒める・褒められるの関係性の中には「共同体」といえるような対等な関係ではなく、相手の能力を正当に評価していないというような従属性の高い関係の象徴であるとしています。
その一方で、「自分に価値があると思えた時にこそ勇気が持てる・・・」としていることからも、「褒める」という行為は長い目で見た時に必ずしも良いことではないという認識が必要だという事になります。
「ならばどうすれば良いの・・・?」という事になると思いますが、しっかりと評価することは必要としています。「評価」は、目的に対する進捗状況の確認のようなもので、感情に過剰に投げかける必要はなく、結果としての事実を確認しあう事の方が、「褒められるために・・・」の行動パターンを排除するためには、むしろ健全なのかもしれません。さらに、チームに対する貢献があれば、それに対して感謝を伝えることも重要です。
また、チームや組織だったりすると、「自分は変わろうとしているのに・・・」など、他の人のせいにしてしまいがちになってしまうのが、この変化のむずかしいところです。
そのような時には、「相手を変えようとするのではなく、自分に出来ることが無いかと考えること・・・」が重要だとしています。物事の考え方を「他者基準」で考えてしまうとどうしても、「行動の自由が妨げられた・・・」と感じるようになり「悪いあの人・・・」「可哀そうな私・・・」という思考に陥りがちになってしまいます。
先日、2020年の米国タイム誌で15歳の科学者・発明家のギタンジャリ・ラオ氏が世界にポジティブなインパクトを与えている若い世代の代表として「今年の子ども」に選ばれました。
ギタンジャリ・ラオ氏は、ネットいじめをなくすためのアプリサービス「kindly」を立ち上げたり、鉛汚染問題が深刻になっている米国内で水の汚染物質を調べる装置を作ったり、世界中の若者と一緒にプロジェクトや発明を助けるワークショップを開催したりしてきたことが評価されたのです。
このような様々な問題に取り組むモチベーションは、「他の人を幸せにしたいという気持ちの強さ、・・・」とインタビューなどで答えている様ですが、何よりも素晴らしいと思う事は、「自分は、子どもなんだから大人になんとかして欲しい・・・」という事ではなく、「自分のチカラでなんとか出来ることをしてみよう・・・」という実践力だと思います。
そこには、「15歳の中学生だから、・・・」という既成概念を覆させられるような、一人の人間としての大きな存在感を感じさせられます。
どのような状況にあっても、「完璧且つ満足のいくもの・・・」という事はあり得ません。
たとえ、現在の立ち位置が他と比べてレベルが高いものという事であったとしても、「変化をしない・・・」という事は、周りからみれば「応えてくれない・・・」という満足度の低下を招いてしまいます。
社会の価値観が大きな変化のうねりの真っただ中のいま、「変化する」ということに対して、向き合うチャンスなのかもしれません。
Posted by toyohiko at 11:55│Comments(0)
│社会を考える