2021年01月30日
満足と幸せとの違いを考える

CS(顧客満足)とかES(従業員満足)という言葉は、多くの皆様も耳にしたことがあると思いますし、会社のような組織を運営していく上で大切な考え方の一つでもあります。
そこで、「満足」という言葉に注目してみますと、「その人にとっての期待を越えるもの(サービス)」という事を言う人がいますが、満足とは「欲しいもの・・・」であり、ある意味際限のない欲望みたいなものとつながっている部分もあるのかもしれません。
そもそも、満足という言葉をつかう場面は、経済的なものや利便性に関するもの、地位や名誉などの可視化できる結果に関することが多いのではないでしょうか。
一方、「幸せ」に関することは、自身の存在感や目的の追求など、利己というよりも貢献感や肯定感のような利他に近いような感覚に近いものに対して感じることが多く、可視化できにくく他者からの評価につながらないものという感覚を持つ方も多いのではないのでしょうか。
近年では、組織のマネジメントの一つとしてモチベーションマネジメントという考え方も出てきたようですが、このモチベーションと満足とは必ずしも相関関係にないという考え方があります。
この考え方を提唱しているのが、アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した職務満足および職務不満足を引き起こす要因に関しての「二要因理論」です。
ハーズバーグによりますと、満足度は特定の要因が満たされることによって上がるが、それが不足することによって満足度が下がるのではなく、不満に関する要因は別のものであるとしています。
人間の欲求には二つの種類があり、「仕事に不満を感じる時には、自分たちの環境や待遇などについて感じるというのに対して、満足を感じる時には仕事を通じての成長や達成感、また評価やお客さまから認められていると感じる」と、1959年の調査研究の結果から導きだし、不満足に繋がる要因を「衛生要因」、より高い業績へと動機づける要因を「動機付け要因」と名付けたのです。
つまり、不満足感を解消させることと、満足感を引き出すことは、必ずしも繋がるわけではなく、それぞれ別のアプローチが必要であるという事になります。
衛生要因については、マズローの欲求段階説のなかの「生理的欲求」「安全・安定欲求」と「社会的欲求」の一部と考えられており、「会社の政策と管理方式」「給与の待遇」「労働環境」「労働条件」「対人関係」などがこれに当たります。
これらがしっかりと出来ていなければ、不満に繋がりますが、出来ていたとしても単に不満足を予防する意味しか持たない為に、「ふつう○○だよね・・・」という感覚で片付けられてしまう可能性もあります。
とくに、現代のような成熟社会においては、「絶対になされていなくてはならない・・・」必要条件と捉えなくてはならないのかもしれません。
一方、動機付け要因は、マズローの欲求段階説の中でも「自己実現欲求」「自尊欲求」さらに「社会的欲求」というような、高い価値観にあたる欲求を満たすものと考えられ、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任範囲の拡大」「自己の成長」「チャレンジングな仕事」などで、これらが満たされることで満足感は上がりますが、それが欠けていたとしても不満を引き起こすわけではないというのです。
このハーズバーグの考え方は、「満足」という際限のない他者への欲求と、「幸せ」という自立的な価値観の違いを示しているのかもしれません。
Posted by toyohiko at 12:08│Comments(0)
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