2021年02月04日
睡眠不足と食欲の関係を考える

夜遅くまで、起きていると「ついつい何か食べたくなる・・・」とか、忙しい日が続いて生活が不規則になると「どうしても、脂っこいものが欲しくなる・・・」というような経験はないでしょうか・・・?
遅くまで起きていれば、それだけ身体を使うのだからお腹が減って当然・・・と思うかもしれませんが、その食欲の原因は睡眠不足かもしれません。
実は、睡眠と食欲に関する実験や研究は意外に多く、その結果としても興味深いものがたくさんあります。
コロンビア大学では、睡眠不足の状態で、様々な料理の写真を見比べてきたときに、ジャンクフードに対して脳が活発な反応を示すという結果を報告しています。この結果について、睡眠不足によって脂質や糖質に対する欲求の高まりとの関係性を示唆しています。
このような傾向は、米国ペンシルべニア大学での実験で、8時間の睡眠をとったグループと徹夜をしたグループとの二つのグループに分け、1日当たりの摂取カロリーを比較したところ、徹夜したグループの方が高脂肪、高カロリーの食事を好み摂取カロリーも高かったという報告もあります。
さらに、スタンフォード大学の調査では、睡眠時間5時間と8時間の二つのグループを比較する実験で、食欲増進のホルモンと言われるグレリンが14.9%増加したと同時に、食欲の抑制を司るホルモンと言われるレプチンが15.5%減少したという報告があり、その結果、食欲を25%増進させるとも言われているのです。
成人男性の1日に必要な摂取カロリーの2,200kcalを基準としても、25%となると550kcalになりますので、おにぎり3個分もしくは、あっさり系のラーメン1杯分をついつい余分に食べてしまうことと同じという考え方もできるかもしれません。
この睡眠不足と食欲増進の関係のメカニズムについては、これから様々な知見から解明されることと思いますが、レプチンやグレリンの増減と睡眠不足との関係性についても、感情的なコントロールがうまくいかなくなるというような情動抑制力の低減などが起因しているという可能性も否定できないという考え方もあるそうです。
睡眠不足による感情面への影響は大きく、喜怒哀楽のコントロールがうまくいかず、ちょっと不快なことがあることで、強く反応してしまい声を荒げてしまったり、寝不足の子どもは多動や学習障害状態になるという事も良く知られているようです。
さらに大人の人に多く出る症状として、感情面の爆発に対する抑制が効きすぎることで、抑うつ的な傾向になりパフォーマンスの低下を招くこともあるそうです。
更に、早稲田大学先進理工学部の柴田重信教授によりますと、体内時計と食の相互作用という観点から「“何をどのくらい食べるか・・・”だけでなく“いつ何を食べるか・・・”という時間を考慮した視点が重要・・・」とし、時間栄養学という概念を提唱しているという事からすれば、睡眠不足と食欲との関係は非常に複雑なメカニズムによってお互いにマイナスの影響を受けていることは明らかなような気がします。
いずれにしても、睡眠不足は、現代のような飽食の時代に於いては「百害あって一利無し・・・」という事なのかもしれません。
「ついつい食べ過ぎてしまう・・・」というお悩みをお持ちの方、食事の量を減らすというだけでなく、ご自身の健康管理の中に「適度な睡眠」というアプローチを改めて取り入れてみてはいかがでしょうか。
Posted by toyohiko at 16:07│Comments(0)
│身体のしくみ