2021年10月23日
睡眠不足と免疫システムとの関係を考える

私たちの身体には、細菌やウィルスを含めたあらゆる外敵から身を守る「免疫」というシステムがあることは皆さんもご存知の事かと思います。
また、日常生活の中で一番多くの外敵が侵入してくるところは消化器官であり、その多くは食事と一緒に侵入してきますので、「内なる外・・・」とも言われる消化器官に免疫システムの多くの機能が集中しているという事も知られています。
スウェーデン・ウプサラ大学准教授であり神経科学者のクリスティアン・ベネディクト氏によりますと、睡眠不足によって自然免疫系の働きが特に弱くなると述べています。
実験によりますと、徹夜をしたことによって自然免疫系の活性が悪くなり感染症への罹患及び発症リスクが上昇してしまうというのです。
また、164人を対象に風邪に関するウィルスを点鼻薬で投与し、睡眠時間と発症との関係を調査した実験では、6時間睡眠の被験者は、7時間の睡眠をとっている人より風邪をひく確率が4倍にもなったという報告もあります。
クリスティアン・ベネディクト氏によると、人間は覚醒時には活動的であり、かつ、飲食も行うので常に多くの外敵と接触しています。言ってみれば、常に厳戒態勢になりますので、免疫システム自身にも多くの負荷が掛かり続けます。
いっぽうで、睡眠時には厳戒態勢が解かれた状態になりますので身体自身の修復などに特化した活動が可能になり翌朝からの防御態勢を整えることができるというのです。
例えば、ちょっとした擦り傷で指を怪我したとしても、怪我をした箇所から多くの侵入者が狙いを定めて入ってきます。そんな時には、免疫システムが他の侵入者に妨げられることなく働くことができれば、細菌やウィルスによる炎症も早期に回復する・・・というようなものだと考えられています。
さらに、睡眠中に分泌されたり、変動していくホルモンの量なども大きく関係してきます。
特に、ストレスを感じた時や、起きるときに必要とされているコルチゾールというホルモンには、免疫を抑制する働きがあることが良く知られています。
つまり、睡眠不足によって免疫システムは疲れてヘトヘトになっているのと同時に、コルチゾールによって押さえつけられているのです。
これでは、「しっかりと、侵入者と闘え・・・!」と言われてもなかなか難しい状態に陥ってしまうことも理解できるかと思います。
クリスティアン・ベネディクト氏は、ワクチンの効果に対しても、睡眠不足によって抗体を獲得するための効果がうすれてしまうリスクを指摘し、特にワクチンを接種した日の夜の睡眠が大切だとしています。
ドイツで行われた研究でも、A型肝炎とB型肝炎のワクチンの接種を行った後、十分な睡眠をとったグループと徹夜したグループでは、肝炎に対する抗体と免疫細胞の形成が少なかったという結果も報告されています。
先ほどご紹介した、自然免疫についても、自然免疫系の代表選手とも言われるナチュラルキラー細胞は主に夜に活性化し、私たちの細胞の状態をチェックしたり、悪性腫瘍につながる異型細胞のもとを破壊する役割をしていますので、睡眠不足によってこの機能が弱まってしまいます。
さらに、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンには抗酸化作用がありますので、活性酸素を好む腫瘍に対しても免疫系のみならず、ホルモンとの相乗効果なども睡眠不足によって損なわれてしまうという事になります。
睡眠は、身体を休める・・・だけでなく、免疫システムにとっても必要かつ重要な休息の場面と考えた方がよさそうですね。
Posted by toyohiko at 14:18│Comments(0)
│身体のしくみ