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2021年11月05日

腸内細菌と脳の働きについて考える

腸内細菌と脳の働きについて考える


 近年、脳腸相関という言葉が多く聞かれるようになり、腸と脳との様々な関係性について多くの研究者が関心を持つと同時に多くの事が解明されてきました。

 特に、うつ病や統合失調症などの症状のある方の腸内細菌叢の菌の種類が少ないことや、特定の菌株が優勢もしくは、殆どいないなどの特徴や、ディスバイオーシスと呼ばれるような腸内環境の乱れなどが確認され始めています。
また、腸内細菌代謝物との関係など、精神疾患と呼ばれる領域についての新たなる知見も出てきつつあります。

 腸内細菌はビタミン等の多くの必須栄養素を産生したり、免疫系等を通じて脳の機能維持にも重要な役割を果たしているという内容の報告も増えつつあります。
特に、統合失調症の症状においては食事などで過剰に摂取した糖が体内のタンパク質と結びつくことで生成されるAGEs(終末糖化産物)と呼ばれる物質が多く蓄積する傾向があり、統合失調症患者の2割においてこの傾向が顕著であるという報告もあります。

 その一方で、ピリドキサミンなどの一部のビタミンB6がAGEsを除去するためのスカベンジャー機能を持っていることも研究によって報告されています。

 東京都医学総合研究所の堀内泰江主席研究員は、統合失調症における低ビタミンB6及び高AGEsの状況と腸内細菌叢及び腸内細菌の代謝物との関係についての解析に対する報告をしていますので、ご紹介させていただきます。

 統合失調症の35%以上の患者が、血液中のビタミンB6の濃度が基準値以下であり健常者と比較して優位に低いことが今までの研究でも報告されています。
 また、カルボニルストレス性統合失調症と言われるような、AGEsの蓄積が進んでしまうようなケースでは、栄養管理が行われているような状況においてもビタミンB6の低下が見られるというのです。
この要因として腸内細菌によるビタミンB6産生量の低下など、腸内細菌叢のディスバイオーシスによるビタミン代謝異常と大きな関わりがあるとしています。

 今回の体内のビタミンB6とAGEsの量の関係性のように、具体的に腸内細菌叢の乱れと、統合失調症のような精神疾患に影響を与える可能性についての報告もありますが、ビタミン類などの腸内細菌の代謝物によって脳腸相関と呼ばれるメカニズムの一部を担っているという可能性を示唆されたと同時に腸内環境の維持のさらなる重要性が示されたと思います。





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Posted by toyohiko at 16:38│Comments(0)身体のしくみ
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