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2021年11月27日

食生活と腸内環境との関係を考える

食生活と腸内環境との関係を考える


 普段の食事は、身体をつくるという意味で大変重要なものになります。特にアスリートと言われる人たちにとって、必要な筋肉量を増やすための食事など様々な工夫をしています。
 その工夫の内容一つによって、身体のつくりが変化してきたり、競技としてのパフォーマンスに直接つながりますので、アプローチも色々ありますし、やり方によってっは必ずしも良い結果が得られない事もあるようです。

 そして、食事だけではなく運動そのものが身体づくりに対して影響があることについては言うまでもないことかと思いますが、トップアスリートにみられるような高度な運動負荷については、必ずしも健康体に結びついているかどうかの疑問を呈するような事例も報告されつつあるといわれています。

 例えば、トップアスリートには試合が近くなるにつれて、ストレスなどが原因で免疫活性が低下し、風邪などの上気道感染症の罹患率が上昇したり、下痢症状などの体調の変化を訴える選手がいることは以前から知られています。

 またほかの事例では、女性の長距離ランナーの便中に腸内炎や下痢を引き起こす原因となるコハク酸が多く蓄積されておりランナー下痢という症状がある事や、男性のボディビル選手の腸内細菌叢においてディスバイオーシスの傾向が見られるなど、様々な報告もあります。

 これらの、傾向はそれぞれの競技に併せた運動機能を最大化するために、トレーニングを含めた食生活が関係していると考えられており、トレーニングのみならず、「食生活」というアプローチでの身体づくりの見直しが進んでいます。

 特に、その見直しのなかで近年注目されつつあるのが腸内細菌叢の変化についてです。

 摂南大学ラグビー部員を対象とした研究では、腸管内のコハク酸が増大することで、大腸炎患者のレベルになっているケースが見られ、腸内細菌の状況も悪玉菌が優勢であることが報告されています
 このケースをさらに調べてみたところ、食物繊維の摂取が少ないと増加がみられコハク酸を多く代謝するといわれるコリンセラ菌が、一般の人の2倍以上存在し、1日当たり4,000~4,800kcalも摂取する食事の中で食物繊維の量が一般の人の17gより少ない12~14gであったという事がわかりました。

 このように腸管内に炎症引き起こす原因となるコハク酸が多く、食物繊維の摂取量が少ないケースでは、炎症を抑え、免疫を調整するとされる酪酸が多いことでバランスが取れるのですが、酪酸を代謝する酪酸菌と呼ばれるような菌が含まれる食品は少ないために、酪酸菌のエサとしての食物繊維を十分に摂取する必要があります。

 今回の調査対象者の中でも、酪酸の量が少なく、しかも25%の人で未検出という結果も出ています。

 このようなケースでは、身体づくりにとってたんぱく質や炭水化物の摂取が重要と考えすぎ、全体の摂取量に対して食物繊維の摂取が不十分であったことが明らかになったと報告されています。

 その後の追跡調査で、4週間サプリメントと食事で食物繊維を40g/day摂取してもらった結果、コハク酸の量が5分の1に減少していたことと同時に、エネルギー摂取量を維持したままで、便通の改善や筋肉量の増加、ニキビなどの皮膚にみられるような外的炎症も劇的に改善したとしています。

 アスリートにとって、競技で結果を出すためにはトレーニングは欠かせないものとされてきましたが、身体について様々なことがわかるようになるにつれて、食事の内容・・・更には「育菌」と言われるようなプロバイオティクスやプレバイオティクスを活用した腸内環境の向上を図ることで、総合的なパフォーマンスの向上にもつなげていくという考え方も必要なのかもしれません。





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