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2022年02月25日

食生活と睡眠というアプローチから感染症対策を考える

食生活と睡眠というアプローチから感染症対策を考える


 感染症対策と言えば、感染源となる細菌やウィルスを持ち込まないことに加え、増やさないということは、大原則になります。食中毒に代表されるような消化器系感染症や気管支系や肺に至る呼吸器官に影響を及ぼす上気道感性症や肺炎なども、私たちにとって身近な感染症の一つです。

 感染症対策には、手洗いやマスクなどの感染源となる細菌やウィルスを持ち込まないことや、食中毒のように調理器具や温度管理など、感染源を増やさないために出来ることなど様々ありますが、感染源を全くのゼロにするということは非常に難しいことであることも事実です。

 国際宇宙ステーションなど外界から隔離されており、かつ閉鎖的な環境のようなケースでの感染症対策は、通常とは違うレベルでの配慮が必要ですが、「細菌やウィルスを全て排除する」というような環境をつくることの難しさは、大変におおきな壁であることも事実です。

 感性症対策の本来の意味は、人々の健康を保つということにあります。そのような目的を今一度考えてみれば、持ち込まない、増やさないという事に常に神経が行ってしまい、日常生活にストレスが掛かり続けてしまっては元も子もないということになってしまいます。

 そのような視点で考えれば、本来身体に備わっている免疫システムを中心とした、生体防御機能をしっかりとメンテナンスしておくことも感性症対策の一つと考える必要があると思います。

 神奈川工科大学健康医療科学部管理栄養学科の饗場直美教授は、「栄養不足は免疫力を下げるとされ、食生活の質が病気と闘うチカラに大きな影響を与える・・・」とし、その中でも腸管免疫も含めた腸の大切さについて述べています

 腸内環境を整えることは、食べ物から摂取した栄養をしっかりと消化・吸収する土台をつくるとともに、健康の維持増進のみならず予防医学にもつながる重要な要素になります。

 また、高齢になってからの健康についての課題は肥満と低栄養化の二極化が進んでるとされていますが、特に低栄養の状態については、「痩せてしまう」という事だけではなく、免疫という視点からしても、低栄養は免疫細胞の産生を阻害し、免疫力の低下にもつながってしまいます。
さらに低栄養の状態がきっかけとなり、精神的にも、社会的にも虚弱な状態に陥ってしまうケースが見られることもあるのだそうです。

 そのためにも、たんぱく質やビタミン類を中心とした食生活の見直しも有効とされています。
 特に、たんぱく質も多くアミノ酸スコアの高い乳製品や卵は、続けて摂取しやすい食品の一つでもありますので、積極的に利用することもいいのかもしれません

 また、現在のように様々なメディアを通じて、新型コロナウィルス感染症についての情報や社会の様々な問題に触れ続けていることも、知らず知らずのうちに不安が増し、睡眠に悪影響を及ぼしている人も多いと言われています。
 この睡眠も身体の恒常性はもとより、免疫力にも大きな影響を与えるために、質の良い睡眠を充分にとることが不可欠です。

 その中でも、ポイントになるのが睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンです。このメラトニンは身体を休めるために自然な眠りに誘う大切な働きをしています。

 メラトニンは、脳内の松果体というところで産生・分泌されていますが、この材料となるのが、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンです。このセロトニンは腸管神経に多く存在する物質としても注目されており、食事から摂取する必須アミノ酸のトリプトファンを原料として産生することが解っています。

 このトリプトファンはたんぱく質を多く含む食品を摂ることが有効とされていますが、トリプトファンが脳内に取り込まれる際に、他のアミノ酸と競合してしまうために単純にたんぱく質を多くとればよいという事だけではないそうです。

 そこで、トリプトファンを脳内に取り込むために重要な働きをするのが、インスリンです。ある研究によりますと、ブドウ糖などを摂取したときに分泌されるインスリンがあることで、トリプトファンと競合する他のアミノ酸が筋肉の合成のために働くことで、セロトニンの材料であるトリプトファンが脳内に取り込まれやすくなったという報告もあるそうです。

 こうして考えると、日常の食事や、その食事から摂る様々な栄養素を有効に利用するためのお腹の健康の重要性を感じるとともに、睡眠までが感染症対策と大きく関わっている事を改めて意識する必要があるのかもしれません。





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