2022年04月01日
微生物とSDGs・・・Ⅱ

持続可能という考え方の中でも、最も重要なものの一つに環境の保全があります。環境と言っても生物多様性という視点と、水や土壌などの「周りを取り巻く環境」という様々な方向からの視点があると思いますが、今回はその中でも、「水」について考えてみたいと思います。
水には、海水、淡水などの成分の条件もあれば、温度や流れなどの様々な要素がありますが、今回は私たちの日常生活にも大きく関わっている、界面活性剤などの洗浄成分による水質への負荷について考えていきたいと思います。
私たちは、生活していく中で着ているものを洗濯したり、食器を洗ったり毎日のように「洗う」という行為を繰り返し行っています。その中で多くの場面で使用されているものが洗剤です。
その洗剤の主原料となっているのが界面活性剤です。
その生活に欠かせない界面活性剤のほとんどが石油由来の原料によってつくられているために、家庭から出てくる生活排水の垂れ流しによる環境汚染の問題は、長期にわたり社会的な課題となっていました。
近年では、下水道の整備に伴い「深刻な汚染」は減りつつありますが、処理にかかる負担含めて、石油由来の界面活性剤が「環境に負荷をかけ続けている事については、変わりはない。」と言わざるを得ない状況にあることも事実です。
そのような中、新潟工科大学工学部の竹園恵教授は、微生物の中には界面活性剤をつくるような性質を持つものが存在し、バイオサーファクタントと呼ばれるような「環境にやさしい洗剤」が普及していく可能性に期待し、研究を続けている方の一人です。
竹園教授によりますと、1960年代に発見された枯草菌の仲間である納豆菌が産生するサーファクチンという物質は少量でも界面活性の効果が高く、肌への浸透性も高いことが解っており、既に化粧品のクレンジング剤や乳液などに実用化されているそうです。
このようなバイオサーファクタントを利用した製品は、「自然環境下で分解されやすい」、「生物に対する毒性がない」、「界面活性剤としての能力が高い」というような特徴があるといわれています。
地球全体の環境への負荷軽減の視点で考えれば、「身近な水の汚染は、下水道の普及で解決した・・・」という事ではなく、石油という有限の化石燃料からつくられる界面活性剤を「コスト」という理由だけで使い続けることの持続可能性を考えれば、「納豆菌からできた洗剤」のようなバイオサーファクタントのような新しい取り組みの実用化に大きな期待もできるのかもしれません。