2022年04月23日
孤立と健康の関係を考える

「コロナ禍」という言葉が使われるようになり、2年以上もの歳月が経ちました。そのような中、ソーシャルディスタンスという言葉も含め、生活様式の変化が人々のリアルのつながりに対して変化をもたらしたことは言うまでもありません。
もちろん、感染症に対する防疫の視点は非常に大切なことの一つになると思いますが、その一方で、その結果、「ほとんど人と、合わなくなった・・・」「1日中、誰とも会話していない・・・」というような、「孤立」と呼ばれるような状況に陥りつつある人たちが増えてしまったことも考えていく必要があると思います。
東京都健康長寿医療センター研究所 村山洋史副部長によりますと、「孤立」は心臓病や認知症のリスクを高め、喫煙や飲酒以上の健康リスクと考えられており、死亡リスクの増大に関しては、 肥満1.2倍、過度の飲酒1.4倍、喫煙1.6倍に対して「孤立によって高まる死亡リスク」は2.2倍にも上るという研究報告もされています。
また、社会とのつながりが少ないことで脳卒中のリスクが1.3倍、心筋梗塞や狭心症などの心臓に関わる疾病のリスクが1.3倍、認知症に至っては1.5倍に上がってしまうという事も解ってきたようです。
「孤立」の健康への影響については、MRIの脳の画像分析の結果でも身体的な痛みを感じている時と同じ部分が活性化していることが解ってきており、身体的なストレスと同じストレスを「孤立」によって感じているとしています。
このことは、「孤立」がストレスを与え交感神経などに過度な刺激を与え続けることで、気付かないうちに心や身体を蝕んでいくことになっているのだと思います。
特にコロナ以降の行動変容によって、人との接触が制限される中、孤立状態に陥る人の増加に伴い、健康への影響が危惧されているのです。
その一方で、高齢者を対象とした継続的な調査でも、ボランティア、趣味、稽古事に参加してることで自立した生活を長く継続できているという研究結果もあり、社会的なつながりが健康に及ぼす影響というものが見直されつつあるのかもしれません。
とはいえ、「興味のない集まりや社会活動に参加するのは逆効果」という調査結果もあり、高齢者を対象にした「三年後に自立した日常生活が送れないリスク」の評価では、「社会参加に消極的で参加してない人」を1とした場合に、「進んで参加している人」のリスクが0.52と半分近くに低下したことに対して、「参加したくないが、参加している人」は0.92と参加していない人とほとんど変わらないという結果も出ています。
「参加したくない・・・」という気持ちや、「本当の自分の居場所はここではない・・・」という気持ちは、態度や表情などの非言語的コミュニケーションとして周りの人にも伝わってしまいます。
近年、マウンティングという言葉が聞かれるようになりましたが、「自分を自分以上に大きく見せようとする・・・」ことで、周りに対して、不敬、不遜な態度をしてしまうことは、ひいては、自身の孤立を招き、健康な生活を自ら遠ざけてしまっている行為なのかもしれません。
孤立という問題は、高齢者だけの問題ではありません、「ワンオペ育児」と言われるような子育て中の家庭内での「孤立」等、残念ながら、社会の様々なところに孤立は存在します。
なかなかハードルが高いと感じてしまうかもしれませんが、「○○、になったら・・・」というように条件が整ったら、と考えるのではなく、「がっつり参加でなく、ちょこっと参加でも・・・」、「自分が楽しめることを・・・」「仕事もつながりの一つ・・・」と考えれば、身近に始められることも意外に多いのかもしれませんし、そのつながりを支えてくれる存在を「頼るチカラ」も大切に出来ると良いかと思います。