2022年05月28日
「夢」と睡眠の質を考える

「夢を見るか・・・、見ないか・・・?」という話題を口にすることは誰しもがあるかと思いますが、単に「夢」と言っても、良い夢、悪い夢・・・更には、現実的な夢など様々かと思います。
もちろん、「随分、夢を見た記憶がない・・・」という人もいるかと思います。
東洋大学社会学部社会心理学科の松田英子教授によりますと、「レム睡眠中は必ず夢は見ている・・・」と言っています。
夢の話に入る前に、この「レム睡眠」について、考えていきたいと思います。
眠りには、レム睡眠と言われる「浅い眠り」と、ノンレム睡眠と言われる「深い眠り」があることはご存知かと思いますが、この二つの眠りをうまく取り入れることで、「ヒトの高度な知性を司ることが出来る・・・」とまで言われているのです。
眠りに二つの種類があることが解ってきたのが1952年のシカゴ大学のクライトマンと大学院学生のアセリンスキー氏の研究論文からだと言われていますが、レム睡眠は、日本語にすると急速眼球運動(Rapid Eye Movement)睡眠であり、寝ている時の眼球の動きが大きな特徴の一つです。
この二つの眠りには、脳と身体について、対称的な働きがあることが解ってきつつあります。
東京大学大学院 医学系研究科の上田泰己教授によりますと、レム睡眠とノンレム睡眠の眠りの深さは、「脳の働き」の状態を表現しており、レム睡眠の状態では、ほぼ覚醒時と同じレベルで働いているのですが、一方で身体の機能はシャットダウンの状態に近くなっているために外見的には、「寝返りも打たずにぐっすり眠っている・・・」ように見えます。
ノンレム睡眠の状態では、脳は穏やかに休息している状態なのですが、 逆に身体は、活発に寝返りを打っているというのです。
二つの眠りの中で、脳がどのような働きをしてるかと言いますと、ノンレム睡眠の状態では、記憶などの様々な情報を伝える神経細胞間のシナプスを新しく作る働きをしています。
そして、レム睡眠中には古くなったシナプスや不要なシナプスを壊したり、補強したりする役割があり、ノンレム睡眠の時に、つながっていないシナプスを開通させる機能があると考えられています。
もう少し、具体的に言いますとレム睡眠中に様々な記憶を、不要な記憶と必要な記憶に振り分け、脳の大脳皮質に長期記憶として整理する一方で、短期的な記憶である海馬の記憶を消す役割をしているというのです。
また、その時に脳に蓄積した記憶情報が再生され、その情報がランダムに繰り返されると同時に、脳が起きている時と同じ視覚野と呼ばれる部分を使用するために、その情報が、「夢」となって起きた時の記憶に残っているのです。
夢の中でのストーリーに、バラバラ感があるのはそのためだそうです。
また、悲しい記憶や嫌な記憶もレム睡眠中に消去しているのでは・・・と言われており、「悪夢」を見るのはこのためなのかもしれません。
松田英子教授は、「そもそも、・・・おおらかに、日常生活が完結している感覚があれば夢は余り覚えていない。」と述べています。
これは、レム睡眠中に夢と現実の境目の区別がつかなくなることがリスクになるためにレム睡眠中の脳活動の記憶(夢)を残さないようにしているためだと考えられています。
夢をよく覚えている人の特徴として、神経質で不安が高かったり、創造的な感性が高く芸術家的な方が多いと考えられています。
また、「悪夢を頻繁に見る・・・」という方は、レム睡眠中にネガティブな感情を処理しているものが夢の中の記憶として残ってしまうためとされていますが、「心のお掃除」をすることで処理してくれていると考えれば、いつも見てしまうパターンをどのようにポジティブに置き換えるかを、起きている間に意識的に行うことで不安が下がり、悪夢から解放されることもできるとされています。
また、「金縛り」は、レム睡眠で身体が起きていないのに脳が完全に覚醒してしまった状態と言われていますので、これも科学的にわかっているそうです。
こうして考えると、睡眠中には二つのサイクルをうまく使用して、記憶の整理を起きている時以上にしてくれているとすれば、「眠さをこらえて夜中考える・・・」よりも、しっかり寝ることの方が有効であったり、「夢」に惑わされるよりも、起きている間に不安を解決したり、「自信」に置き換えたりすることの方が、「良い眠り」には良いのかもしれません。
「自分を信じろ・・・」というフレーズがありますが、睡眠中に行っている自分自身の脳の働きを信じ、早く寝ることで意外に多くの事が解決するという発想も試してみてはいかがでしょうか。
Posted by toyohiko at 10:57│Comments(0)
│身体のしくみ